遠い地平線が消えて
ふかぶかとした夜の闇に心を休める時
はるか雲海の上を音もなく流れ去る気流は
限りない宇宙の営みを告げています
満天の星をいただくはてしない光の海を
ゆたかに流れゆく風に心を開けば
きらめく星座の物語も聞こえてくる
夜の静寂(しじま)のなんと饒舌(じょうぜつ)なことでしょうか
光と影の境に消えていった
はるかな地平線も瞼(まぶた)に浮かんでまいります
日本航空が貴方にお送りする音楽の定期便 "JET STREAM"
皆様の夜間飛行のお供をするパイロットは私、城 達也です
「フランク・プゥルセル・グランド・オーケストラ」の「ミスター・ロンリー」にのせて、城達也さんのナレーションで始まる深夜24時からのFM放送番組。僕の大好きなラジオ番組でした。僕が子供の時、海外への夢を与えてくれたのが、この番組でした。1967年にスタートした長寿番組です。現在も放送中ですが、僕にとってのジェットストリームは城達也さんだけ。それくらい思いが強いものです。
氏は1994年2月に食道癌が発覚し、治療の傍ら放送を続けましたが、もはや十分な声が出せないと自覚してこの番組のパーソナリティを降板し、2ヵ月後に死去されました。1994年12月30日、7387回目の本放送の最後の、「お送りしておりますこの音楽が、美しくあなたの夢に溶け込んでゆきますように…では皆さま、さようなら」が最後の言葉となりました。CDに収録されている、エンディング曲「夢幻飛行」は、放送では、城達也さんの降板と共に使用されていません。
海外旅行に憧れながら聴いたこの番組で、「イージーリスニング」というジャンルを知り、心地よい時間を過ごしたものです。1番記憶に残ったのは、日本航空123便墜落事故が発生した1985年8月12日の番組。放送時間中、524人の搭乗者名簿を読み上げ続けたことです。この事故以降、8月12日が放送日であった場合、日本航空は事故の反省から同番組への提供を自粛し、番組中に広告を一切入れていません。
NHK-FMの深夜に放送していた、「もうすぐ、時計の針は12時を回ろうとしています。今日と明日が出会う時―クロスオーバー11…」のナレーションで有名な「クロスオーバー11」も懐かしい。オープニング曲は「Fly over the Horizon」、エンディング曲は「October」。どちらもクロスオーバー/フュージョングループのAzymuthでした。
音楽の定期便 "JET STREAM" そろそろお別れの時が近づいてまいりました
夜間飛行のジェット機の翼に点滅するランプは
遠ざかるにつれ次第に星のまたたきと区別がつかなくなります
お送りしております、この音楽が美しく、あなたの夢に、溶け込んでいきますように
日本航空がお送りした音楽の定期便"JET STREAM"
夜間飛行のお供をいたしましたパイロットは
わたくし、城達也でした
また明日、午前0時にお会いしましょう
城達也さん最終回(1994年12月30日放送)
日本航空がお送りいたしました、"JET STREAM"
そろそろ、お別れの時間が近づいて参りました
皆さまのお相手は、わたくし、城達也でした
25年間、わたくしがご案内役を務めて参りました"JET STREAM"は
今夜でお別れでございます
長い間本当に、ありがとうございました
またいつの日か、夢も遥かな空の旅でお会いいたしましょう
そして、来年(1995年)1月2日からは、装いも新たな"JET STREAM"が旅立ちます
夜間飛行のジェット機の翼に点滅するランプは
遠ざかるにつれ次第に星の瞬きと区別がつかなくなります
お送りしておりますこの音楽が、美しくあなたの夢に溶け込んでゆきますように
では皆さま、さようなら
よいお年をお迎えください。