青春タイムトラベル ~ 昭和の街角

昭和・平成 ~良き時代の「街の景色」がここにあります。

北原白秋作詞、山田耕筰作曲 ~豊中高校校歌

2022-01-04 | 青春の音盤

北原白秋作詞、山田耕筰作曲という当時の黄金コンビによる校歌は、昭和11年1月17日の校歌発表会に、山田耕筰本人が豊高を訪問し、生徒に直接指導しています。

その後終戦を経て、昭和23年、新制高校として豊中高校は発足しましたが、校歌がなかった状態が8年続きました。その間、生徒自治会が新しい校歌の制定についての議論も行いましたが、旧校歌を何とか再び生かそうという意見が多く、昭和30年9月16日に旧制中学校校歌の2番の「勤倹尚武」と3番の「協同進取」を入れ替えた上で、1番と2番が、現在の豊中高校校歌となりました。

豊中高校・校歌のレコードは、これまでに2枚作られました。その歴史についてお楽しみ下さい。

作曲者の山田耕筰は、当時、豊中中学の校歌以前にも全国各地の校歌を作曲していましたが、そうした校歌が年月を経るうちに、作曲した時の自分の気持ちとは随分かけ離れた歌い方をされるようになることが多いのを、次第に残念に思うようになりました。

多くの作品の中でも豊高の校歌は、自分としては非常に気に入った作品だと思っているので、いつまでもこの作曲した心を歌い継いでほしい。そのためには、自分の気持ちをレコードに吹き込んでおくのが1番良いということで、レコード化を行ないます。

このレコードの説明文には「我等が待望久しき校歌は、昭和10年12月31日に完成した。明けて1月17日、山田先生親しく全校生徒を指導せられ、1月29日には、更に同先生の独唱及び先生指揮の管弦楽によってレコードの吹き込みも完了した。我等は唯歓喜と感謝の念に溢れて、豊中讃歌を高尚しよう。」とあります。

この説明にあるように、レコードのA面は、指揮者として有名な上田仁のピアノ伴奏により、山田耕筰の声高らかな独唱で、B面には山田自らの指揮によるコロムビア管弦楽団の演奏が収録されています。音楽家でもあった山田耕筰ですが、肉声によるレコードは極めて数少なく、山田耕筰がいかに豊高の校歌に熱意を持たれていたかがうかがわれるエピソードです。このレコードは78回転で吹き込まれており、現在では聴くことが難しいことが残念です。

その後昭和30年、新制豊中高校の校歌が決定した時、自治会や学校側でも新しい校歌を再度レコード化しようという動きもありましたが、実現に至りませんでした。そしてようやく昭和54年になって、豊陵会の事業として新たに校歌のレコードを作成することが企画され、9月に完成したのです。

豊陵会報第29号の中で、当時の豊陵会会長・鳥井道夫は「今回、多数の同窓生諸氏の御協力によって、伝統ある校歌に恥じない立派なレコードが出来上がりました。私たちはこのレコードを手元に置くことによって、折に触れて、1人で、家族や友人と、あるいは同窓会で楽しく唱和しようではありませんか。そして夢と希望に燃えた若き日に思いを馳せ、新たな心で明日に邁進したいものであります」と校歌に寄せる思いを記しています。

この新しいレコードは、A面がボニージャックスによって歌われた校歌、B面がAMSレコーディングオーケストラによる校歌演奏で、戦前に録音されたものとはまた違う、マーチ風の軽快にアレンジされた仕上がりになっています。それが今、僕の手元にもあります。



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