
カトリック高輪教会(教会堂名:殉教者の元后)
創立:1959年 ◇ 住所:東京都港区高輪4-7-1
創立:1959年 ◇ 住所:東京都港区高輪4-7-1
JR山手線の品川駅で降りる。柘榴坂という名の緩やかな勾配を上る。 坂の右側一帯は、高輪プリンスなどの高級ホテル街となっている。その一角にある高輪教会は、結婚式場として未信者カップルにも利用されていることだろう。しかし、華やかなイメージだけで捉えるのではなく、この教会がキリシタン弾圧の悲劇を語り継いでいる点に注目しなければならない。1623年の「江戸の大殉教」があった札ノ辻(ふだのつじ)刑罰場跡は、ここから徒歩圏内にある。
浅草教会の記事で触れたが、江戸幕府を開いた徳川家康は「耶蘇は夷狄の邪法」と言明し、江戸市中でもキリシタン狩りが始まるようになった。浅草鳥越山の斬首刑から10年後、三代将軍の徳川家光は徹底的なキリシタン弾圧を命じる。 札ノ辻刑罰場では、火あぶりの刑という残酷な方法で、50人のキリシタンを殺戮した。その数週間後には、24人の女性と子どもたちが処刑された。 さらに、現在の旧海岸通が走っている辺りでは、水責めの刑が行われたという。
今日でも、「武士道の精神」「サムライの品格」に憧れる日本人が少なくない。だが、札ノ辻の殉教地に立つと、それらが残忍性と表裏一体であることに気づくはずだ。「忠臣蔵」で有名な泉岳寺を訪れたら、高輪教会にも足を延ばしたい。ここには、「江戸の大殉教」に関する地下資料室があり、当時の高札や古文書などが展示されている。高輪教会の聖堂はモダンな造りだが、その下には痛ましい歴史が秘められている。札ノ辻については、後に別記事で触れたい。

現聖堂献堂:1989年
(教会の敷地内には、江戸の殉教者顕彰碑がある)
◆主な参考文献など:
「東京周辺キリシタン遺跡巡り」 高木一雄著(聖母の騎士社・1997年)