札の辻刑罰場跡:元和キリシタン遺跡
(今も当時の面影が残る小高い丘)
住所:東京都港区三田3-6-8
(今も当時の面影が残る小高い丘)
住所:東京都港区三田3-6-8
都営浅草線の三田駅で降りる。地上に出て、第一京浜沿いに札の辻(ふだのつじ)刑罰場跡を目指した。高輪教会の記事で触れたが、ここは江戸最大のキリシタン殉教地である。かつて不浄の地とされた処刑場跡は、2006年に再開発された三田ツインビル西館が聳えている。その裏に広々とした庭園があり、北西の小高い丘の上に大殉教の記念碑が置かれている。今から約400年前、この地で残酷を極めた火あぶり刑があったとは、とても想像できない。
1623年12月4日、「奉行所の役人は虜として連れて来た一人の転びの男を見せしめながら一同に転宗を迫った。だが誰一人として応じる者はなく寧ろ見物人の中からキリシタンの男女二人が感激の余り一緒に処刑を申し出た程であった。そして用意された五〇本の柱に四七人だけが縛られ順次火をつけられていった」(「東京周辺キリシタン遺跡巡り」)。本当にここで凄惨な出来事があったのだろうか。のどかな庭園に立つ記念碑を前に、私は小さな祈りを捧げた。
札の辻から北へ7分ほど歩くと、慶應義塾大学の三田キャンパスがある。私は久しぶりに自分の母校を訪れた。狭隘な敷地に新旧の校舎が密集している。ここに比べると、日吉キャンパスは広く、自然も豊かだった。4月になると、私は失意のうちに迎えた入学式の記憶が甦る。 第一志望ではなかった上、入学後の講義内容にも幻滅した。得るものは少なく、私はつまずきを抱えたまま卒業した。鬱々と三田に通っていた頃、札の辻の大殉教さえも知らなかった。
慶應義塾大学旧図書館
(1912年竣工。国指定重要文化財)
住所:東京都港区三田2-15-45
◆主な参考文献など:
「東京周辺キリシタン遺跡巡り」 高木一雄著(聖母の騎士社・1997年)。1623年(元和9年)12月4日の大殉教では、火あぶりにされた47人とともに、2名の外国人司祭と原主水(はら・もんど)も処刑された。