元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

認知症等による高齢者の消費者被害と成年後見人制度の利用について

2014-07-06 18:43:04 | 後見人制度
 認知症等による高齢者の消費者被害には、成年後見人制度の利用による「契約の取り消し」が有効!!

 国民生活センターの報告によると、2013年度に全国の消費生活センターに寄せられた相談のうち、認知症や知的障害のある高齢者が被害に遭ったケースは、約1万600件で、10年前に比べほぼ倍増したという。全体の相談件数は、この間に4割近く減少する中で、判断力が不十分な高齢者が集中的に狙われている実態が浮かんだということである。健康食品の送り付け商法や投資詐欺商法、悪質リフォーム業者による不要な工事など、被害金額は1千万円程のものがざらであり、非常に深刻であるにもかかわらず、被害の回復は難しく、国民生活センターとしては、「地域の見守りや成年後見制度の利用で未然に防いでほしい」と呼びかけている。

 消費者被害に対処するためには、契約取り消しを伝えるだけで無条件の解約ができる「クーリングオフ制度」が用意されているのだが、これは、契約書等の書類を渡されてから、その日を含めて一般的な訪問販売の場合には8日を経過すれば、できなくなる。一人暮らしの場合には、被害の発見が遅くなり、気が付いてからでは手遅れになっている例が多い。

 また、消費者契約法による契約の取り消しの時効は、だまされたとかに気が付いたときから6か月ですので、取り消し期間は長い。しかし、この場合には「これからこの金融商品は値があがるばかり」と言われたので買ってしまったとか「帰ってほしいといいったのに帰らない」とかの勧誘の方法により問題があり、誤認して(見誤って)あるいは困惑(どうしていいかわからず自由な判断ができない状態)して契約してしたことを、消費者が主張して、はじめて契約取り消しができるのですが、判断能力の衰えた高齢者の場合には、どうやって契約書の印鑑を押してしまったのかさえ、説明できないことが多い。

 そこで、国民生活センターの呼びかけに戻るのだが、成年後見制度の利用である。昔、禁治産者とか準禁治産者とか呼ばれていたもので、この頃は契約の世界から、契約を行う能力はないので排除するとのイメージが強くあまり利用されなかったものであるが、成年後見制度は、このイメージを改め、判断能力の不十分な者を保護するために、自己決定の尊重、現有の能力の活用、ノーマライゼーション等の新しい理念の下、柔軟かつ弾力的な利用しやすい制度としてリフォーム化されたものといえます。従来の禁治産・準禁治産の2類型ではなく、後見、保佐、補助と3類型になり、能力の程度に応じて、それに応じた制度が用意されて使い勝手の良いものとなっています。配偶者・4親等内の親族等の申し立てにより、裁判所が最終的には審判を行い、この制度の利用の決定を行いますが、それにより、裁判所から選任された後見人等の保護者が、契約についての同意権や取消権を持って、本人を保護していくことになるのです。

 禁治産等と呼ばれていた時代には、戸籍に記載され、人権が無視されたかのようなところがありましたが、別途、成年後見等の登記制度により、契約等に必要な場合は、関係者だけに登記事項の証明を行い、その人が相手方にその登記事項証明書をもって、契約の当事者たる資格があるのか、ないのかの証明をすることになるわけです。

 3類型の後見は、ザックリいえば、精神上の障害により判断能力が一番なくなった状態で、一人で買い物もままならない状態、保佐は、一人で買い物はできるが、不動産や自動車などの売買、金銭の貸し借りなどの重要な財産行為はできない状態、補助は一人で生活するのは問題はないが重要な財産行為はだれかが代わってやったほうが良いという状態である。

 したがって、裁判所より後見の開始がなされた場合は、たとえその高齢者が契約書に本人の印鑑をおしていたとしても、保護者(=後見人といいます)が取り消しの意思表示を行うだけで契約は無効になってしまいます。保佐の場合は、一定の契約等については、保護者(=保佐人といいます)の同意を得なければ、あとから取り消しができるとされ、日常生活を超えた高額な消費者被害の場合にはこの同意を得なければならない場合に含まれますので、保佐人は知らなかった(同意していない)として、取り消しが可能です。補助の場合はどうかというと、個別に、例えば「訪問販売による取引」を、同意を得なければならないものとしてあらかじめ決めていなければなりませんが、それが行われていれば、保護者(=補助人といいます)の同意を得なかったとして契約の取り消しが可能です。

 このように、成年後見制度を利用することにより、認知症等による消費者被害を防ぎ、さらに契約の取り消しも容易で、被害の回復にも寄与することができます。この制度の利用については、地域包括センターとか市町村の高齢者担当課等にお問い合わせになってください。

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