リンパ浮腫に続発する悪性腫瘍があることをご存知でしょうか。
脈管肉腫(Lymphangiosarcoma)で、
1948年に初めて報告された
Stewart-Treves Syndrome (STS)
乳がん、婦人科がんの術後のリンパ浮腫に続発して
発生するリスクがある肉腫病名です。
高タンパクなリンパ液が滞留すると
免疫環境が変化しはじめ、
その局所で脈管新生が促進され、
側副路を作ろうと体は反応します。
その結果、免疫的に脆弱な環境を作ってしまうこととなり
悪性腫瘍の発生につながると記されています。
また、多因子によって惹起されるため、
かならずしも、この機序に留まりません。
他文献によると1年未満で発症した報告もあるようですが、
多くは5~10年という経過の後に発症し、
脈管肉腫の中でも血管肉腫の5%がSTSであると報告されています。
海外論文では90%くらいが上肢発生(つまり乳がん治療後の続発性)で
乳がん広範囲な切除術後10年以上経過後の0.03%に発生するとされています。
国内の症例報告を見ると下肢の報告も多く、
海外のものが国内を反映させているわけではないと思われます。
また、皮膚・軟部組織の悪性間葉系腫瘍の1%以下(石原,2001)というものもあり、
前述の5%に比較しても、国内では少ないのかもしれません。
初発症状は紫斑です。
緩和ケア領域で、リンパ浮腫マッサージに携わっている方は多いと思います。
マッサージをするときに、必ず皮膚の状態を確認していると思います。
この時、感染と紫斑の違いを理解しておくべきです。
感染などで、炎症が起こっているときの発赤は、
血管の拡張、充血ですから
圧迫で皮膚の赤味は消褪します。
紫斑は、赤血球血管外漏出による発赤ですから、
出血斑であるため、
圧迫しても皮膚の赤味は消褪しません。
つまり・・
炎症の発赤は、押せば消える赤味
紫斑の赤味は、押しても消えない赤味
リンパ浮腫の発赤を見たら、
触診、圧迫時の発赤消褪の有無を確認し、
早期診断につなげましょう。
STSの発生頻度は高くはありませんが、
日々、念頭に置きながら診療することは
大変大切なことだと思います。
治療は、化学療法、IL-2投与、放射線治療等です。
本文中に文献を記載していないものの数字は
すべて、以下の文献内のものです。
この文献の引用文献から根拠となる論文が引けます。
DR. McHaffie, et al. Stewart-Treves Syndrome of the Lower Extremity. JCO, 2010,28(21), e351-e352.