緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

透析患者さんの鎮痛薬

2006年12月19日 | 医療

runmaruさんから、コメントにこんな質問を頂きました。
「透析されている方で骨メタがあるのですが
オピオイドや他の痛み止めの使い方など
先生のご意見をお聞かせください。
NSAIDSはやはり使いにくいですよね?」

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私、実は透析認定医をかつてもっておりました。

シスプラチンなどで急性腎不全で透析導入となったけれど
いずれ離脱を目標にしている場合と
慢性腎不全から維持透析(離脱は困難)となっている場合で
分けて考えます。

急性腎不全の場合は腎機能が回復をすべく調整していきますので、
NSAIDsは、使用してはいけません。
アセトアミノフェンまたはステロイドで代替可能か検討を。
維持透析の場合は、NSAIDsは使用します。

オピオイドは、フェンタニルは透析で抜けません。
オキシコドンは分かりません。
(数例の経験では抜けないのではないかと思います)
モルヒネは、抜けます。
また、透析から次の透析の間、モルヒネは
M6Gとなり蓄積するため眠気やせん妄が出やすくなります。
今、速放性オピオイドはモルヒネだけです。
来年の2月以降、
速放性オキシコドンのオキノーム散が発売になります。
そうすれば、透析患者さんのレスキュードーズが
副作用が少なく投与できるようになります。

ビスフォスフォネート製剤のゾレンドロネート(ゾメタ)は
代謝は腎で、蛋白結合率は60%くらい。
抜ける可能性もですが、
透析膜に蛋白とともにトラップされる可能性があります。
透析直前の投与では
骨に吸収される前に抜けてしまうかもしれないということで、
非透析日に投与したほうがよいと思うのですが、
投与量などについても
実際の安全性については不明です。

ステロイドは通常投与でよいと思います。
オピオイド副作用対策としては、センナやラキソは通常通り
マグネシウムは上がりやすいので用いないほうが無難。
どうしても必要な場合は透析液のマグネシウムを低め設定してもらうことも検討を。
制吐剤は最少量で。
健胃薬はアルミニウムが含有されていないもののみ投与可です。

もし、企業の方やデーターをご存知の方
いらっしゃいましたら補足お願いいたします。

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今日も、お付き合いくださりありがとう。明日も、来て下さいね。
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6 コメント

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腎機能 (オレンジ)
2006-12-24 22:25:10
また、一つ大切なことを教えていただきありがとうございます!!
返信する
Unknown (aruga)
2006-12-23 22:37:03
ロピオンは半減期が5時間位のターゲット剤です。腎への影響はは血管内皮のPG抑制による腎血流量減少や尿細管作用(ナトリウム貯留)などがあります。腎障害は血中濃度を上げない、暴露時間を短くするなどで調整します。一方、患者さんにとって投与する意味(鎮痛)も、ある程度満足できる状態にしてあげる必要があります。30分で投与すると急峻な血中濃度上昇と急激な低下をみます。慢性痛の患者さんですと、2時間もすると痛いと言われることもあります。結果的に腎機能が良くないにもかかわらず、3A位使ってしまうこともあります。除痛が可能な最小限の血中濃度でじんわりと効き続けてくれると腎機能障害を最小限にとどめ、効果を持続することができる場合をよく経験します。腎機能がとても悪いが、NSAIDsが必要な場合、1日1Aをゆっくり投与することもあります。①については、腎代謝がかなり低下していれば、半減期は伸びますので、そういうこともあるかもしれませんが、腎へかける負担は予想できません(高いかも)②については、除痛の持続との兼ね合いだと思います。短いにこしたことはありませんが、それで除痛がどの位維持できるかです。したがって、患者さんの疼痛の程度と腎機能の程度によって微調整していくことが大切だと思います。
返信する
透析はしていないけど・・ (オレンジ)
2006-12-23 16:37:21
腎機能が悪い方へのロピオン注の使い方を教えてください。腎機能が悪いと、点滴を4~5時間くらいかけてゆっくり投与しても効果が持続し、腎臓への影響が少ないかと思っていました。 ですが、①30分で点滴しても同じ位、効果が持続するのでは?②長時間点滴するより腎臓への影響が少ないのでは? と質問され納得してもらえる返事ができませんでした。 先生のお考えを教えていただけないでしょうか?
   
返信する
こんばんは (runmaru)
2006-12-23 00:48:20
そう!のタイトルにとても心強さを感じました。
具体的なところ自分でリサーチしてみたいと思います。

ほんとありがとうございます
返信する
そう! (aruga)
2006-12-22 22:10:33
維持透析の方はNSAIDsを使用し十分な除痛を目指します。ただ、血中濃度が上がりやすいので、量の設定は透析での抜け、蛋白結合率、代謝経路などで少な目の設定や透析日と非透析日の処方調整などが必要になります。
返信する
ありがとうございます (runmaru)
2006-12-22 01:10:19
12月19日の先生のブログに書いていただきありがとうございました。お返事遅くなり失礼いたしました。
とてもためになりました。透析の方へ・・・と一言で言っても、急性と慢性で考え方が異なるとは、知りませんでした。医療者としてお恥ずかしい限りですが、離脱のできる透析とそうでないそれがあること知ることができました。透析というひとつの言葉でひっくるめて考えていました。
離脱できない透析(維持透析)の方へは、NSAIDS使用することがあるという解釈でよいでしょうか?

ありがとうございました。
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