がんの痛みに医療用麻薬(オピオイド)の投与は、
開始時にもエネルギーを使いますが、
治療が奏功し、減量するときもエネルギーを要することがあります。
一般的に、麻薬を減らしましょうと言われるとほっとする人が多いと思われるでしょう。
一方で、強い痛みを経験した患者さんは、いざ、減量をすると言われるとあの痛みが再び出現してこないかと、不安になる方もいらっしゃいます。
ですから、がん疼痛は、痛みが大変不快な記憶になってしまう前に、柔軟に脳が対応できるくらいの速さで治療は行っていった方がよいものです。
PexelsによるPixabayからの画像
疼痛治療が上手くいっていない、気持ちも辛そうということで癌治療医から
症状緩和・がん患者支援外来という緩和ケアの外来に紹介がありました。
40代半ば位の方でした。
良い表現をすれば、甘え上手。
厳しい表現では、幼く依存的でした。
回りのサポートを上手に受けていらっしゃいましたが、
自分に抱えるものをわかりやすく言葉で表現することが苦手でした。
痛みに弱いとご本人。
多彩な表現でしたが、
CT画像とその痛みを照らし合わせても一致しません。
過去に、がんの縮小があったから、医療用麻薬を減量したところ、
過去に、がんの縮小があったから、医療用麻薬を減量したところ、
歩けなくなり、車椅子で運んでもらったことがあると
話してくれました。
痛みが良くなっているのに
オピオイドを減量できず、眠気を生じていました。
その外来で実施したことは・・・
オピオイドの無理な減量はせず、
痛み日記を渡し、2週間記録してもらうことでした。
2週間後
「痛み、良くなったんです!! なんでだろう・・」
自分が自分をコントロールできると感じられることを
自己効力感
セルフエフィカシーの向上と言います。
痛み日記をつけることで、
自分の痛みを客観的に見つめ、
薬剤の効果を感じ、
自分で自分にこれで大丈夫と
太鼓判を押すことができたこと
それが、痛みが緩和された理由でした。
痛みの治療は薬剤だけではありません。
自分自身を変える・・
変えるというより、
自分に気づくと言った方が適切でしょう。
原因は無くなったけれど続いていた痛みは
痛み日記をつけたことで急速に改善しました。
その後・・
それからの治療の方針、どこで治療していくかといったことも
家族と共に選択していくことができました。
自分の意思を伝えていくことも少しずつできるようになっていきました。
自分の足で自分の人生を歩んでいる・・
そんな印象に変わっていきました。
そして・・・
緩和ケア外来は卒業となりました。
緩和ケア外来は卒業となりました。
癌やそれに伴う痛みとは違いますが、私も何年か前から自分の体調について毎日(たまにさぼりますが)記録しています。
体調が悪くなると過去の記録を見て、ああ、こんなことは前にもあって、そのうちよくなったんだ、と安心することも。
私はメンタルから来るものも多いので。
先生のブログを読ませていただいて、よいお医者様に巡り合えることの大切さを再認識しています。
もうどこも悪くないんだから、そんなこというのはおかしいよと、訴えに取り合ってくださらないお医者様もいます。
病気を見て患者を見ない、という言葉もあります。
病気こそ違いますが、先生にはいつも希望をいただいています。
ありがとうございます。長くなりすいません。
いずれも早期発見で、事なきを得て日々を過ごしてしております。
この年齢になったから思うのかもしれませんが、疼痛は治癒すると思うと頑張れるのですが、希望が見えないと痛みに耐えるのは容易ではないと思います。
これから疾病を抱えたときは治癒と疼痛をどう考えるか、もしかしたら天秤にかけるかもと思っています。
先生の緩和ケアは大変参考にさせていただいています。
これからの人生を考えると痛みと治癒には哲学的な思想のようなものを感じています。
コメントするか迷ったのですが、年齢を重ねた人間の気持ちのひとつとして表現してみました。
日記をつける、ブログを定期的に書くって、省察といって自分の内面と向き合う時間なのだそうです。
北欧の人々が幸福度が高いのは、自分と向き合う時間を持つ人が多いことも知られています。
ですので、いつもとても謙虚にお書きになられているのですが、pinkymermaidさんは私の推測も届かない位、とても幸福に満ちた方なのだろうと頂くコメントに思いを馳せています。
こちらこそ、ありがとうございます!
aruga
素敵なコメント、ありがとうございます。
長い人生の道のりは、いつまでも人を成長させてくれると言いますが、本当にそれを感じさせていただきました!
aruga
本当に痛みの治療は行動科学的アプローチが必要ですね。
チュンさんは、医療者さんで、経験も豊富な方ですね!!
行間から凄く伝わってきます!
aruga