プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

中国製ギョーザ中毒   空白の1ヶ月 対応の遅れはなぜ

2008-02-02 21:09:48 | 社会問題
中国製冷凍ギョーザによる食中毒の被害が広がっている。最初に事件が発生したのは、昨年12月28日千葉市においてであった。千葉市内の家庭で中国製冷凍ギョーザを食べた女性と幼児が中毒症状で病院で治療を受けた。1月5日、今度は兵庫県高砂市の家族3人が中毒症状で病院に運びこまれた。兵庫、千葉両県警が殺虫剤メタミドホスを検出して報告を受けた警察庁が事態を公表したのは、1月30日。事件発生から約1ヶ月が経っていた。被害申告によれば、この間、同種の被害が全国各地に広がった。なぜ対応が遅れたのか。新自由主義が跋扈する日本社会で、官も民も自己の職務に対するディスプリン(discipline)をなくしてしまったのではないか

昨年12月28日午後6時ごろ、千葉市で中国製冷凍ギョーザを食べた女性は、30分後に、嘔吐、下痢、めまいに襲われ、千葉市のA病院で夜間救急診療を受けた。幼児も具合が悪くなったが、軽症だった。A病院では、内科の担当医が「意識が朦朧としている」ことから「重症」と判断。B病院へ搬送した。B病院は、女性の症状から「急性胃腸炎」「食中毒の疑い」をもち経過観察するが、女性は翌29日午前中に退院する。B病院は「女性がギョーザを食べたことを知っていたが原因とは思わなかった」という。そのため血液検査も通常の検査で、「毒物」検出のための検査はしなかった。食品衛生法では、「食中毒の疑い」がある場合、保健所への届出を求めている。しかし、B病院は届け出なかった。食中毒と特定できなかったからということだ(「しんぶん赤旗」2008年2月2日)。

被害女性が12月29日、ギョーザを購入した「コープ花見川店」に苦情を言うと、同店は同日中に千葉市に電話する。しかし、年末年始の休みで電話が通じず、電子メールで連絡した。メールは1月4日まで、6日間開かれることがなかった。同4日、市がコープと連絡をとっていたところに被害女性が保健所に来庁。保健所が聞き取り調査したところ、女性は「非常に大変だった」と訴えた。生協側は、訴えにもとづきギョーザの検査をするが、細菌検査だけで農薬を検出できなかった。1月22日千葉・市川市の家族五人が同市の生協店舗で購入した冷凍ギョーザで被害に遭い、千葉県警の解析ではじめて食中毒が判明した(「しんぶん赤旗」同上)。

1月5日、兵庫県高砂市の医療機関から、加古川健康福祉事務所に食中毒を疑う患者を診察したという連絡が入る。家族3人が5日夕食後に、嘔吐、下痢、めまいなどの症状を訴え入院。救急搬送先の病院は、早い段階で薬物中毒と見抜き、初期治療に当たった。事件性もあるとの判断から県警と連携して調査することにした。兵庫県は7日、輸入元のジェイティフーズが東京の会社なので、東京都に連絡する。しかし、兵庫県からも東京都からも厚生労働省への連絡はなかった(「しんぶん赤旗」同上)。

問題の冷凍ギョーザは、日本たばこ産業(JT)の子会社「ジェイティフーズ」が企画し、総合商社「双日」の子会社「双日食料」と中国河北省の「天洋食品」の三社が共同で試作・生産したものだコスト引き下げのために、日本企業の企画・指示で海外の工場に生産させる典型的な「開発輸入」である。農薬検査の実施について輸入元である「ジェイティフーズ」と販売業者の生協は、事件発覚後「相手が行っているものと思っていた」と発言している。まったくの無責任体制である。頼りにすべき、国の検査体制は、輸入食品の1割程度。しかも、政府の輸入食品のモニタリング検査は検査結果が出る前の流通を認めているため、食品汚染を発見しても国民の口に入った後という状態である。9・11後、アメリカ向輸出品の検査に人員を振り向け、食品衛生監視員は現在334人だけである(「しんぶん赤旗」同上)。

 私は、新自由主義的資本主義が横行するなかで、日本社会はさまざまな分野で人びとの人心が荒廃し、自己の職務に対するディスプリン(discipline)を失っているのではないかと危惧する。新自由主義は働く人間を人間として大事にしない。現場の人びとが、自分の仕事に対する職責を真剣に果たそうとしなくなったら、社会は崩壊する。
最初の事件が発生してから公表、輸入・販売中止の措置に至るまで結局一カ月も経過した。被害者を診察した病院、食品を提供した生協、市民から直接訴えを聞いた市や保健所、警察、そしてなによりも食品輸入に関わった企業の対応と責任を徹底的に検証しなければならない。

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