Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

IVCフィルター

2013年03月25日 | 消化器・血液
やっぱり桜は良いねー。
何なんだろうねー、この感じ。綺麗なものは他にもたくさんあるのに。
クリスマスとかと同じで、世間が騒ぐから自分も騒いじゃうだけ?
なんて考えるのはつまらないから、やめ。

でも、文献は考えながら読みましょう。

Opal SM, Laterre PF, Francois B, et al.; ACCESS Study Group.
Effect of eritoran, an antagonist of MD2-TLR4, on mortality in patients with severe sepsis: the ACCESS randomized trial.
JAMA. 2013 Mar 20;309(11):1154-62. PMID: 23512062.

エンドトキシンのアンタゴニストであるEritoranを重症セプシス患者に投与した多施設RCT。197施設、1961例が対象、primary outcomeは28日死亡率。で結果は、28.1% vs. 26.9%で同じ。
そりゃそうだ、と思っちゃいけません。治療方法の模索は続けないと。ただ、エンドトキシンを相手にしても駄目だろ、という気はしますけどね。

Needham DM, Dinglas VD, Bienvenu OJ, et al.; NIH NHLBI ARDS Network.
One year outcomes in patients with acute lung injury randomised to initial trophic or full enteral feeding: prospective follow-up of EDEN randomised trial.
BMJ. 2013 Mar 19;346:f1532. PMID: 23512759

ARDSに対する経管栄養の投与量は最初の1週間は少なくてもいいよ、を示したEDEN trialの1年フォローアップ。短期予後は同じでも、長期的には筋肉量の低下など、低栄養が悪影響を示すかも、という可能性もあるし、ということで行われた追加検討。結果は、12ヶ月後の生存者の機能予後に差は無し。
ARDSで栄養の投与量が少なくてもいいなら、フルカロリー投与した方がいい病態って、何かあるのだろうか?

今日は、さっさと本題。
何故なら文献が3つもあるから。
JAMA Internal Medicineのオンライン。

ONLINE FIRST
High Variation Between Hospitals in Vena Cava Filter Use for Venous Thromboembolism.
Richard H. White, MD; Estella Marie Geraghty, MD, MS, MPH; Ann Brunson, MS; Susan Murin, MD, MSc; Ted Wun, MD; Fred Spencer, MD; Patrick S. Romano, MD, MPH
JAMA Intern Med. 2013;():1-7. doi:10.1001/jamainternmed.2013.2352.

カルフォルニアの、静脈血栓症(VTE)が年間55例以上入院する263の病院で、大静脈フィルターの挿入頻度を調査。5年間で13万人がVTEで入院、そのうち15%に大静脈フィルターが挿入された。しかし、その頻度は病院によって大きく異なり、0%から39%だった。その違いは、患者背景だけではなく病院のプラクティスの違いが大きく影響していた。

ONLINE FIRST
Indications, Complications, and Management of Inferior Vena Cava Filters. The Experience in 952 Patients at an Academic Hospital With a Level I Trauma Center.
Shayna Sarosiek, MD; Mark Crowther, MD; J. Mark Sloan, MD
JAMA Intern Med. 2013;():1-5. doi:10.1001/jamainternmed.2013.343.

Boston Medical centerで、約8年の間にIVCフィルターが952人に挿入され、そのうち679が抜去可能なテンポラリーのIVCフィルターだった。しかし、実際に抜去されたのは5.8%だけで、13例では抜去を試みたが抜けなかった。多くの例で、抗凝固剤が禁忌でることを理由にテンポラリーIVCフィルターが挿入されたが、25%の症例では、退院時に抗凝固剤が投与されていた。

なんか、”うーん”な感じでしょう?
で、その”うーん”について、viewpointが解説してくれています。

Viewpoint
LESS IS MORE, ONLINE FIRST
The Inferior Vena Cava Filter. How Could a Medical Device Be So Well Accepted Without Any Evidence of Efficacy?
Vinay Prasad, MD; Jason Rho, MD; Adam Cifu, MD
JAMA Intern Med. 2013;():1-3. doi:10.1001/jamainternmed.2013.2725.


まずタイトルがいいね。
どうして有効性についてのエビデンスが全然ないのに医療機器がそんなに受け入れられるのか?
いや、couldだから、受け入れられることが起こりえるのか、くらいか?
IVCフィルターの歴史から、説明してくれます。

・初めて報告されたのは1960年代。半数はIVCが閉塞。
・ステンレス製のIVCフィルターは1973年に報告。
・かの有名なGreenfieldさんが、1981年に156例のケースシリーズを報告。
・1988年には、長期フォローアップも含め469例を報告、そこそこ安全だよ、という内容。
・コントロールはないし、半数はフォローアップできてないにもかかわらず、IVCフィルターの根拠として使用されている。
・ACCP, AHAなど、四つのメジャーな団体がIVCフィルターについてのガイドラインを出している。
・すべてのガイドラインにおいて、VTEがあって抗凝固剤が禁忌の症例では適応とされている。
・それ以外の病態ではガイドラインによって適応が異なる。
・これまで、IVCフィルターについてのRCTは一つしか行われていない。
・PREPIC study、1998年に発表され、2005年に8年フォローアップした結果が追加発表。
・400例のDVT症例がIVCフィルターを入れるかどうかで割り付けられた。
・ただし、抗凝固剤が禁忌の症例は研究から除外されている。
・8年のフォローアップで、PEはフィルター挿入群で少なく(15.2% vs. 6.2%)、DVTは多かった(35.7% vs. 27.5%)。
・もっとも重要な死亡率には差は無し。
・エビデンスが乏しいのにIVCフィルターがFDAに承認され、さらには改良品がどんどん承認されている理由は、似たような医療機器が承認されている場合は、新しい機器の承認も容易だから。
・IVCフィルターは多くの合併症が起こる。 
・挿入時も起こるし、長期的には下大静脈の閉塞が20-30%の頻度で起こる。
・2005年から2010年の間に、IVCフィルターによる重大な合併症の報告がFDAに921例されている。
・RCTが必要なのは明白だが、メーカーにはメリットは無い。
・現状では、IVCフィルターを使用するかどうかの判断はとても難しい。

長々と要約しましたが。
IVCフィルターについては上記で十分として、他にもいろいろ考えることはあるね。
当たり前のように行われていることが、実は全然当たり前じゃなかったりすることとか、
複数のガイドラインが同じことを推奨していたって、その根拠はこの程度だったりすることとか、
日本でも医療機器の承認は同じように根拠が乏しくてもOKだったりすることとか、
医療機器についてはメーカーにちゃんとした根拠を求めても無駄だったりすることとか。

あ、今日の内容は、初めも終わりも、あれを連想させるね、あれを。
コメント (2)
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