Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

トシリズマブとバリシチニブの扱いが同じになっていることに気がついてませんでした。

2022年02月06日 | COVID-19
先月、またCOVID患者が増えてきたのでガイドラインを確認しようと思っていくつか見いていた時に、トシリズマブとバリシチニブの扱いが同じになっていることに気がついた。

WHO:どちらの薬剤も「severityがcriticalの症例に対してstrong recommendation in favor」
日本:どちらの薬剤も「人工呼吸器管理/集中治療を必要とする重症患者に対する投与については、現時点では推奨を提示しない」
ANZICS:どちらの薬剤も「 Consider in adults hospitalised with COVID-19 who require supplemental oxygen」

面白い。二剤は同じ扱いだけど推奨がバラバラ。その時はガイドラインを見る目的が違った(レムデシビルは重症患者には使わないことを確認)ので、あまり気にしていなかった。
でも、数日前にこれが出て、確認してみる気になった。

ARTICLES ONLINE FIRST
Efficacy and safety of baricitinib plus standard of care for the treatment of critically ill hospitalised adults with COVID-19 on invasive mechanical ventilation or extracorporeal membrane oxygenation: an exploratory, randomised, placebo-controlled trial

(ついでに気がついた、first authorがsedation関連で有名なEly先生だ。)

この研究はexploratory trialだと自分のことを呼んでいて、N=101と小さく、primary outcomeも決めず、サンプルサイズも計算されていないので、今回はサラッと流します。

で、やったこと:PubMed検索。
Search: (covid) AND (baricitinib [ti]) Filters: Randomized Controlled Trial:2(上記の研究を足すと3)
Search: (tocilizumab [ti]) AND (covid) Filters: Randomized Controlled Trial:18

だよね。研究の数が全然違う。
トシリズマブはICU患者に使う、バリシチニブは不確定、という僕の印象はこの数の違いが原因な気がする。
でも、トシリズマブは有害というデータもあるし、メタ解析を見てもRECOVERYに引っ張られて有効になっている感じに見える。

ということで、
バリシチニブ:重症患者での有効性は確定していない
トシリズマブ:研究は多いが結果が一定していない
というのが現状のまとめだろうか。
だからガイドラインの推奨もバラバラなのかな、と思いました。ちゃんちゃん。
コメント
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