Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

病棟の人工呼吸の安全

2018年10月07日 | 呼吸
Kamio T, Masamune K.
Mechanical Ventilation-Related Safety Incidents in General Care Wards and ICU Settings.
Respir Care. 2018 Oct;63(10):1246-1252. PMID: 29844212.


おっ、楽しそうなタイトルだ。
と思ったら、日本からの研究だった。ほお。

残念ながら、こういう研究は分母(病棟とICUでどれくらい人工呼吸が行われているか)がないので、アブストラクトを読む限りはあまり面白い話にはなっていない、とまず思った。

別の意味で残念ながら、Respiratory Careは僕の環境ではアブストラクトしか読めない(しばらく待てば読めるけど)。なので詳細はわからないのだけど、日本医療機能評価機構のデータを使った研究のようで、そんなことできるんだー、と次に思った。

Backgroundに、"a considerable number are ventilated in general medical care wards all over the world"と書いてあって、それは本当なのかもしれないけど根拠ってあるのだろうか、本文読んだら載っているのだろうか、とその次に思った。
僕の知っている限りだと、イスラエルの文献がすごく昔にCCMに出ていたなー、くらいだ。

そういえば先日のDatathonでこの話題が出て、病棟で人工呼吸してるなんて嘘だろってオーストラリア人が言うから、日本じゃ普通だよと答えたら、すごく驚いていた。
果たして、どっちの感覚が普通なんだろう?

・人工呼吸器が高価でなかなか買えない国では、そもそも機械の数が少ないので、自然とICUに集約される。
・集中治療が認知されている国では、急性期の人工呼吸は危険が伴うのでICUに集約するという常識がある。
・なので、お金はあるけど常識はない一部の国でのみ、急性期の人工呼吸患者を一般病棟で診療している、と推察される。

こう考えると、オーストラリア人の方が常識的ではないか、という気もするのだが。

それなりに正確な答えを出すには、ESICMとかが大きなサーベイでもしてくれないと無理だろーなー。
かれこれ20年くらいずっと知りたいと思っているのだけど。

ここまで書いて、こんなこと全てこの文献で議論し尽くされているかもしれないことに気がつき、消そうかと思ったけど、とりあえず残しておきます。
コメント
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