Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

臨床で書かれた文章が予後予測能を改善

2018年07月12日 | その他
Weissman GE, Hubbard RA, Ungar LH, et al.
Inclusion of Unstructured Clinical Text Improves Early Prediction of Death or Prolonged ICU Stay.
Crit Care Med. 2018 Jul;46(7):1125-1132. PMID: 29629986.


これまたCCMのAI関連。
複数の予後予測モデルに、医者やナースやその他の職種の人が書いた文章から抽出した情報を追加したら、全てのモデルで予後予測能が改善した、と。

慈恵のナースは時系列で患者情報システムの記事欄にゴリゴリ書いていく。この記事欄がチョー情報満載で、当直中は全ての患者さんの全ての記事を読むようにしているし、過去の患者さんを振り返る時もこの欄がもっとも理解に役立つ。
なので、こういうテキスト情報が予後予測に有益というのは直感的に理解できるのだけど、ICUのナースの記録方法にはいろいろなパターン(内容、量、記載場所などなど)があって施設によって全然違ったリするから、一つの施設で有用なモデルを作っても、それは他の施設には使えないだろうな、という気がする。

ICUにAIが入ってくる形はいろいろあるだろうし、今では想像もできないようなこともたくさん起こるのだろうけど、一つ想像(期待)しているのは、状態変化に応じて連続的に予後予測が行われて、その数字(予測死亡率とか急変率とか)がいつも表示されていて、アラートが鳴ったりするんじゃないだろうか。10年もすれば、普通なことになっていたりして。
施設によって存在する情報が違うから、施設によって異なるモデルが作られて、時間が経つほど賢く正確になったりして。

ICUでの死亡例のM&Mをしていると、夜間にだんだん患者さんの状態が悪くなっていっているのに、医者もナースもそれに気がつかない、そして心停止、なんていうことが少なくない。どうしてこの段階で気がつかなかったのか、なんて思ったりする。それをAIが代わりに判断してくれるなら、それはきっと良いことだろうと思う。ちょっとワクワクする。
コメント
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