先週は、久しぶりにダウンロードした文献の数が少ないので、ルンルン。
ま、自分で選んでるんですけどね。
Saczynski JS, Marcantonio ER, Quach L, et al.
Cognitive trajectories after postoperative delirium.
N Engl J Med. 2012 Jul 5;367(1):30-9. PubMed PMID: 22762316.
60歳以上の心臓外科術後患者225例を対象。術前および術後(2日、1ヶ月、6ヶ月、12ヶ月)の認知機能をMMSEを用いて評価し、それとCAMで診断されたせん妄の発生との関連を調べた。術後にせん妄が起こると、長期の認知機能に悪影響が出る。
ジャーナルクラブ候補。
Mees SM, Algra A, Vandertop WP, et al.
Magnesium for aneurysmal subarachnoid haemorrhage (MASH-2): a randomised placebo-controlled trial.
Lancet. 2012 May 25. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 22633825.
SAH患者のスパズム予防にマグネシウムは有効か、について検討したRCT。さらに、これまでのRCTの結果を合わせたメタアナリシスも施行。結果は、どちらも無効。今回の症例数が1204例、過去7研究を合わせた症例数が2047例なので、いかにこの研究が大きいかが分かる。
ダウンロードした文献は少ないけど、その中に気になった研究があったので、それを紹介。
Annals of Surgeryから。
Schwarze ML, Redmann AJ, Brasel KJ, et al.
The role of surgeon error in withdrawal of postoperative life support.
Ann Surg. 2012 Jul;256(1):10-5. PubMed PMID: 22584696.
リスクの高い手術をするアメリカの外科医(心臓外科、血管外科、脳外科)を対象にしたアンケート調査。術後に脳梗塞が起った架空の症例を提示し、患者が治療の中止を希望したときの外科医の対応について検討。手術が予定か緊急か、脳梗塞が術中の人為的ミスかどうか、で2x2=4通りのアンケートを作成。
その結果、
・63%は患者の希望を承諾しないと回答
・治療の中止を承諾する頻度は、
・予定よりも緊急
・人為的ミスでない
・予後は良いと考えている
・心臓外科医よりも血管外科医
・若い外科医
の場合に、多い。
・予定手術の人為的ミスに比べ、緊急手術でミスが無かった場合は、患者の希望を承諾するオッズが倍になる。
さて。
まず、提示された架空の症例は、(少なくとも日本人から見ると)ちょっと不思議。術後(上行置換、胸腹部大動脈瘤、もしくは脳動脈瘤のクリップ)に目が覚めたら右半身の動きが弱かった、だけ。
まあ、それは置いておいて、もっと重篤な合併症が起こって、患者本人ではなく家族が治療中止を希望したとして考えてみる。きっと結果はそれほど変わらないだろうと想像/仮定する。
差のついた項目を見ると、納得の結果。まあ、そうだろうな、という感じ(心臓外科と血管外科の違いはよく分からないけど)。でも、だからこれで良い、ということにはならないと思う。予定手術中の自分のミスで患者さんに予定外の合併症が発生した時に、治療の中止を決断するのが難しいというのは感情的にはとても理解できるけど、患者さんや家族にとっては結果がすべてであり、医者の感情で治療方法が決定されても良いのだろうか。
具体的には書けないけど、自分の経験でも、外科医の判断に驚かされたことは少なからずある。
別の視点から見てみる。
こういう状況で、外科医に多大なストレスがかかるというのはとても理解できるし、同情する。外科医の人為的ミスは内科系の医師(集中治療医含む)のミスよりも明白だったりするので、ストレスもより大きいに違いない。
今はチーム医療の時代。外科医個人がそのストレスを抱え込まないで、他の医療者と分け合うことは出来ないだろうか。集中治療医はその役を担えないだろうか。十分な信頼関係があればできるのかな。自分の力不足か。
他の人達はできているのかな。例えば、完全なclosed ICUの国であるオーストラリアではどうなんだろう。うーん、覚えていない。
この文献の最初に書いてあった言葉。
外科医は大変だ。
When the patient of an internist dies, his colleagues ask, “What happened?”
When the patient of a surgeon dies, his colleagues ask, “What did you do?”
ーCharles Bosk, Forgive and Remember
ま、自分で選んでるんですけどね。
Saczynski JS, Marcantonio ER, Quach L, et al.
Cognitive trajectories after postoperative delirium.
N Engl J Med. 2012 Jul 5;367(1):30-9. PubMed PMID: 22762316.
60歳以上の心臓外科術後患者225例を対象。術前および術後(2日、1ヶ月、6ヶ月、12ヶ月)の認知機能をMMSEを用いて評価し、それとCAMで診断されたせん妄の発生との関連を調べた。術後にせん妄が起こると、長期の認知機能に悪影響が出る。
ジャーナルクラブ候補。
Mees SM, Algra A, Vandertop WP, et al.
Magnesium for aneurysmal subarachnoid haemorrhage (MASH-2): a randomised placebo-controlled trial.
Lancet. 2012 May 25. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 22633825.
SAH患者のスパズム予防にマグネシウムは有効か、について検討したRCT。さらに、これまでのRCTの結果を合わせたメタアナリシスも施行。結果は、どちらも無効。今回の症例数が1204例、過去7研究を合わせた症例数が2047例なので、いかにこの研究が大きいかが分かる。
ダウンロードした文献は少ないけど、その中に気になった研究があったので、それを紹介。
Annals of Surgeryから。
Schwarze ML, Redmann AJ, Brasel KJ, et al.
The role of surgeon error in withdrawal of postoperative life support.
Ann Surg. 2012 Jul;256(1):10-5. PubMed PMID: 22584696.
リスクの高い手術をするアメリカの外科医(心臓外科、血管外科、脳外科)を対象にしたアンケート調査。術後に脳梗塞が起った架空の症例を提示し、患者が治療の中止を希望したときの外科医の対応について検討。手術が予定か緊急か、脳梗塞が術中の人為的ミスかどうか、で2x2=4通りのアンケートを作成。
その結果、
・63%は患者の希望を承諾しないと回答
・治療の中止を承諾する頻度は、
・予定よりも緊急
・人為的ミスでない
・予後は良いと考えている
・心臓外科医よりも血管外科医
・若い外科医
の場合に、多い。
・予定手術の人為的ミスに比べ、緊急手術でミスが無かった場合は、患者の希望を承諾するオッズが倍になる。
さて。
まず、提示された架空の症例は、(少なくとも日本人から見ると)ちょっと不思議。術後(上行置換、胸腹部大動脈瘤、もしくは脳動脈瘤のクリップ)に目が覚めたら右半身の動きが弱かった、だけ。
まあ、それは置いておいて、もっと重篤な合併症が起こって、患者本人ではなく家族が治療中止を希望したとして考えてみる。きっと結果はそれほど変わらないだろうと想像/仮定する。
差のついた項目を見ると、納得の結果。まあ、そうだろうな、という感じ(心臓外科と血管外科の違いはよく分からないけど)。でも、だからこれで良い、ということにはならないと思う。予定手術中の自分のミスで患者さんに予定外の合併症が発生した時に、治療の中止を決断するのが難しいというのは感情的にはとても理解できるけど、患者さんや家族にとっては結果がすべてであり、医者の感情で治療方法が決定されても良いのだろうか。
具体的には書けないけど、自分の経験でも、外科医の判断に驚かされたことは少なからずある。
別の視点から見てみる。
こういう状況で、外科医に多大なストレスがかかるというのはとても理解できるし、同情する。外科医の人為的ミスは内科系の医師(集中治療医含む)のミスよりも明白だったりするので、ストレスもより大きいに違いない。
今はチーム医療の時代。外科医個人がそのストレスを抱え込まないで、他の医療者と分け合うことは出来ないだろうか。集中治療医はその役を担えないだろうか。十分な信頼関係があればできるのかな。自分の力不足か。
他の人達はできているのかな。例えば、完全なclosed ICUの国であるオーストラリアではどうなんだろう。うーん、覚えていない。
この文献の最初に書いてあった言葉。
外科医は大変だ。
When the patient of an internist dies, his colleagues ask, “What happened?”
When the patient of a surgeon dies, his colleagues ask, “What did you do?”
ーCharles Bosk, Forgive and Remember