Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

抜管困難な症例に対するNPPV

2011年09月19日 | 呼吸
まず、最初から言い訳で。
現在、夏休みで旅行中のため、下調べがとっても不十分です。
考察の甘さなど、突っ込みは禁止です。

さて、今週はNPPV(非侵襲的陽圧換気)について。
自分が理解していることをざっと並べると、
・急性呼吸不全に有効、特に挿管を回避できる
・COPDの急性増悪などでは予後の改善効果もある
・抜管困難な症例では、早期に抜管してNPPVを予防的に使用すると再挿管が避けられる
・でも、抜管後に呼吸不全を起こしたときはNPPVを使うと再挿管の判断が遅れ、死亡率が上がる
Esteban A, Frutos-Vivar F, Ferguson ND, et al.
Noninvasive positive-pressure ventilation for respiratory failure after extubation.
N Engl J Med. 2004 Jun 10;350(24):2452-60. PMID: 15190137.

で、今月のブルージャーナル(AJRCCM)。

Girault C, Bubenheim M, Abroug F, et al.; for the VENISE Trial Group.
Non-invasive Ventilation and Weaning in Chronic Hypercapnic Respiratory Failure Patients: A Randomized Multicenter Trial.
Am J Respir Crit Care Med. 2011 Jun 16. [Epub ahead of print] PMID: 21680944.

フランスとチュニジアの13のICU。基礎疾患に慢性呼吸不全(70%はCOPD)があり、急性呼吸不全で48時間以上挿管され、状態が落ち着いたのでSBTをしたけど失敗した、208例が対象。三群にランダマイズ。
・SBTを毎日やって、成功したら抜管(MV群)
・抜管して酸素投与(O2群)
・抜管して予防的にNPPV(NPPV群)
ただし、MV群とO2群では抜管後に呼吸不全が発生したら、NPPVを行ってもよい。
その結果、
Primary outcomeである、一週間以内の再挿管率は、30% vs. 37% vs. 32%(P=0.65)。
抜管後の急性呼吸不全(もしくは死亡)の発生率は、46% vs. 59% vs. 9%(P<0.001)。
でも、28日生存率は、87% vs. 87% vs. 77%(P=0.154)。
まあ。

”へー”がいっぱい。
まず、慢性呼吸不全の患者さんが挿管されて、SBTに失敗して、無理矢理抜管しても、再挿管になる人って3人に1人だけなのね。
で、NPPVを予防的に使っても、再挿管率を減らせない。死亡率なんかちょっと増えたくらい。
さらに、抜管後の急性呼吸不全にNPPVしても、悪いことがなかった感じ。

いろいろ考察されています。
急性呼吸不全になったらNPPVを使ったから三群に差がなかったとか、
NPPVの使用に慣れていたから、それによる死亡率の増加は見られなかったとか。

NPPVは、抜管してすぐに予防的に使うと有益、呼吸不全が起こってから治療として使うと有害、というのはどうも安直すぎる理解のようで。基礎疾患によって、抜管後の呼吸不全の原因も違うし、NPPVの有効性も違うし。

ちょっと混乱してきた。
家に帰ったら読み直そうかな。
それにしても、この研究にしても上記のNEJMの研究にしても、Nが200しかない。
そこも混乱の原因の一つかも?
コメント
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