徒然なるままに…なんてね。

思いつくまま、気の向くままの備忘録。
ほとんど…小説…だったりも…します。

図書館の木苺

2007-02-28 20:03:00 | ひとりごと
 白い箱に詰められた幾種類もの可愛らしいケーキ…。
蓋を開けた途端…子供たちが思わず歓声を上げた。

妹が持たせてくれた子供たちへの心遣いだ。

 以前はケーキにのっている果物といえば苺くらいなものだったが…昨今では様々な種類の果物によって美しく飾られている…。
小さなバラまで添えている店もある…。

 箱の中にコロンとひとつ…ケーキから落ちているブラックベリー…。
これも…ついこの間までは見かけない果物だった。


木苺か…。
そういえば…昔…図書館の近くで見たっけなぁ…。
こんな黒いのじゃなくて…ダイダイっぽい色してたけど…。


 doveがまだ小学生の時…オカンに連れられて図書館へ行った。
図書館は家から随分遠い…。
バスに乗って少し離れた町まで行かなくてはならない…。

2キロほど離れた公園の近くにも図書館はあったのだが…オカンは何故か遠い方の図書館へ連れて行った…。

 近くても交通機関のないところなので子連れで2キロ歩くのが大変だったのか…そこに図書館があることを知らなかったのか…理由は分からない…。
方向感覚のないオカンのことだから…知らなかったという方があたっているかもしれない…。

 あまりにも古い話で…何を読んだか…どんなところだったか…などという細かいことはほとんど覚えていない…。
少し小高いところにある鉄筋の建物で…子供用のところから本をとって読んだ…くらいだろうか…。

 どのくらいそこで過ごしたのかは分からないが…本を読むのが好きだったから…退屈したという記憶はない…。

 帰りのバス停は図書館の敷地のすぐ下辺り…にあるはずだったが図書館からは藪に阻まれて見えなかった…。
真下よりは少し先にあったせいかもしれない…。

 バスを待つ間…行ってきたばかりの図書館の建物が見えないかと上を見上げてみたが…よく分からなかった…。
図書館の一部であろうと思われる建物の裾部分が…斜め上ぐらいに見えてはいたけれど…。

あれ…木苺…だわ…。

ふいに…オカンが言った…。

 丁度…図書館を見上げるあたりの…自然生えのものか植えてあるのか分からないほどに雑多で規則性のない植え方をしてある木々の中に…赤っぽい黄色の粒々の実が見えた。

食べられるんだよ…これ…。

 オカンは手を伸ばしてひとつ採るとdoveに渡した…。
口に入れるとそれまで食べたことのない味がした…。
薄甘い…酸味のある…プチプチした食感の実だった…。

へぇ~…こんな苺があるんだ~…。

 苺といえば、お店やさんで売っている紅い苺の他は、蛇苺しか知らなかったから、木に生る苺なんて初めてだった…。
蛇苺も食べられるが、それよりはずっと美味しかった…。

 バスが来たのでそれっきり…。
その後は…同じ季節に図書館を訪れることもなかった…。

 その記憶がずっと残っていて…以来…それらしい木を見かけるともう一度摘んで食べてみたい…と思うが…未だ望みは叶っていない…。

 ケーキの上のラズベリーやブラックベリーを食べながら…こんな味だったかなぁ…ちょっと違うような気がするけど…などと首を傾げている…。

 図書館は…といえば…この町に来て利用したのは一度だけ…。
図書館ならあるだろうと…専門書を探しに出向いたのだが…期待はあっさり裏切られた…。

 この町の小さな図書館には一般向けの書物が多く置いてあるが…専門書はそれほど置いてないようだ…。
高い専門書を買わずに済まそうと考えていたのだが…当てが外れた。

 大きな図書館…子供の頃の家から2キロ離れた…オカンが行かなかったあの図書館なら相当な蔵書があるらしいが…其処まで行っては交通費の方が高くつく…。

やれやれ…仕方ないね…。
本屋へ行ってもこのあたりの本屋じゃ…すぐに…手に入るかなぁ…。

 そう思って溜息ついたのも…もう…かなり昔の話になった…。
今は…専門書も要らない生活をしているから…どんな図書館だろうとかまったこっちゃないんだけど…。
 なんだか…行く気がしない…。
駐車場狭くて…いつも満員だし…親子連れが多くて…落ち着かないし…。

 そうか…あの時のオカンとdoveたちも…そんなふうに思われてたかもしれないなぁ…。
静かに本を読んでいただけなんだけれど…。
本当に勉強したい人たちからは…居るだけで煩わしい存在だったかも…。


 木苺…植えてみようかなぁ…。
植物は苦手だけど…大丈夫かなぁ…。

 園芸ショップへ行くたびに…そう思うのだが…。
何度…考えてみても…どうしても…決心がつかない…。