徒然なるままに…なんてね。

思いつくまま、気の向くままの備忘録。
ほとんど…小説…だったりも…します。

運動神経ゼロ犬…(其の二 甘えんぼ…。)

2007-02-14 16:40:00 | 運動神経ゼロ犬
 鼻黒はめちゃめちゃ甘えん坊だった…。
自分ではあまり餌を食べようとしないので、病気かと思ったオカンがペットショップのおばさんに電話したところ、呆れるような答えが返ってきた…。

 「抱っこして食べさせたって頂戴…。 いつもそうやっとったで…。 」

抱っこして…犬に…餌を…食べさせるぅ~…!
なんだそりゃぁ…?

 ペットショップでもあのおばさんにかなりべたべたに甘やかされていたらしく…超甘えっこになっていた。
そう言えば…他の子犬はあのベビーベッドみたいなケースの中で子犬同士固まっていたのに…こいつだけはおばさんが大事そうにずっと抱いていた…。

 オカンが試しに抱っこして餌を与えてみると…なるほど食べる食べる…。
面倒見が悪くて自分の子供でも抱っこして食べさせたことはないのに、ワンコ抱っこして食べさせなあかんとはねぇ…。
そう言って…オカンはケラケラ笑った…。

こいつ…生存競争には負けるな…。

 そう思った…。
鶏襲った野犬たちとは大違い…。
まさに、過保護犬だった…。

 しかし、そんな過保護犬でも、犬社会の序列は本能的に分かっているとみえて、自分は末の弟よりひとつ上の位だと勝手に決めたようだった…。
だから末の弟の前では偉そうにしていた。

 家族が寝る頃になると鼻黒は段ボールの小屋を出たがり…いつの間にか親父の蒲団で寝ることを覚え…親父と一緒に親父の枕をして寝るようになった…。
親父の枕は中国製の長めの枕で…一人前半くらいの大きさがあったから…ひとりと一匹が並んで寝るには窮屈ながらできないことではなかったが…。

犬が枕を使う…ということを目の当りにしたのは生まれて初めてだった。

ぐっすり寝ちゃってるけど…犬って…確か…夜行性じゃなかったかぁ…?
ぽんっぽんっ…くふっくふっ…妙な寝言つきで…。

 「○○ちゃん…偽柴…過保護犬…五千円…。 」

…ってなことを言いながら…親父は鼻黒をあやしては遊んでいた…。

 メロメロ状態…。
子供にはこんなデレデレした態度をとったことは一度もない…。
女子大小路の綺麗どころには…どうだったか知らんが…。

あかん…親父トロケとる…。

 そんな生活をして居れば…犬にとっていいわけがない…。
この犬種は番犬にもなる外飼いの犬であって…お座敷犬ではないのだ…。
何しろ…段ボールの小屋には毛布だけでなく電気行火まで装備…。

 しばらくすると…鼻黒の毛があちらこちら禿げだした。
腹がすっかり禿げると…犬の腹にもともと毛があるかないかで…親父オカン…。

心の声:(親父よ…オカンよ…漫画じゃないんだから…在るに決まってるだろ…。
漫画の犬や狸はわざと腹を白く描いてあるの…。)

 そのうちに…犬にへそがあるとかないとかで…。
親父は理屈屋で数学には強いが…どっか抜けているので犬が哺乳動物だってことを忘れている。
オカンも生物学的確信があって言っているわけではない…。
漫画などの犬の腹に×マークがついているからあるんじゃないかなぁと思っているだけ…だ。

心の声:(だからね…親父よ…オカンよ…見難いけどあるんだよ…犬にも…。
いや…そこのそれはおっぱい…いぼじゃねぇよ…。
オス…オスだってあるさ…人間と同じだよ…。)

 親が変人と言って憚らないdoveはまったく可愛くない小学生…。
勉強できないくせに要らんことだけは知っている…。
両親の頓珍漢な会話にひくひくと顔が引きつっていた…。

 腹の毛や臍の在り処はともかく…子犬の禿げをどうにかしないと…。
毛が抜けて象さんの子供みたいになってしまって痛々しい…。
ようよう…其処に辿り着いた親父は鼻黒を医者に連れて行った…。

蒸れて皮膚病に罹り毛が抜けた…らしく…鼻黒はしばらくの間…毎日ム○ウハ○プの硫黄風呂に入れらることになった…。

 首から上だけふさふさの毛の残った身体は珍妙…。
その格好で毎日…卵の腐ったような匂いのする犬用に準備した盥の温泉に浸かる。
シュ~シュ~と嫌そうな声…。

 硫黄臭い日々を過ごすうち…だんだんと毛はもとに戻った…。
鼻黒が全快する頃には…人間の方が匂いに慣れて風呂にム○ウハ○プを入れるようになっていた。







続く…。