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ループス腎炎 漢方 (腎病漢方治療191報)(周仲瑛氏医案 中医雑誌2002年第11期より)

2013-10-12 00:15:00 | ループス腎炎 漢方

2002年の中医雑誌の医案ですが、既に1990年代からループス腎炎として診断治療を受けていた症例です。

風毒痺阻 下焦湿熱 肝腎虚損案

患者:李某 32歳女性

病歴と初診時所見

狼瘡性腎炎の病歴7年、嘗てシクロフォスファミドの静脈内投与で脱毛が加重したことがある。

初診時、プレドニゾン15mgを維持量としていた。抗核抗体(+)、抗二重鎖DNA抗体(+)尿蛋白定性(4+)。眩暈、空腹時胃部不快感、腰酸、尿は泡立ち白い沈殿がある、大便は通常、満月様顔貌、最近帯状疱疹を再発、苔薄黄、脈細。

中医弁証証は風毒痺阻、下焦湿熱、肝腎虚損に属する

薬用

生地黄12g 淫羊藿10g(別名 仙霊脾 いかり草:温腎助陽 袪風除湿) 土茯苓20g(別名 山帰来:清熱解毒) 苦参10g(清熱燥湿 袪風止痒殺虫 利尿) 

地膚子15g(清熱利湿 止痒 蒼耳子10g(袪風湿、通鼻、解表袪風止痛) 黄精12g 黄蓍15g 青風藤15g(袪風湿 通経活絡 散瘀消腫 利小便) 炒蒼朮10g 黄柏10g 鬼箭羽15g(涼血活血化瘀) 7剤 プレドニゾン15mg/d

二診

眩暈、空腹時胃痛は既に消失、労累に耐えず、腰酸、尿には混濁沈殿あり、食欲は正常、大便正常、苔淡黄、脈細、再度補益肝腎、祛風化湿、清熱解毒の方薬を与える。原方に山茱萸10g 丹参12gを加え、14剤。プレドニゾン10mg/d

三診

尿混濁減軽、近来左側歯肉が痛み、顔面、額に波及。面部潮紅、腰酸は著しくなく、外陰部に潰瘍あり、白帯下が時に下りる、苔黄膩、舌質黄、脈細。尿検査再検で蛋白(+)、WBC(2+)。

証は腎虚、湿熱下注に属する。

薬用

粉萆薢15(清利湿濁 袪風湿 膏淋の用薬) 土茯苓20g 苦参12g 黄柏10g ?尾草15g(清熱利湿 涼血解毒 解毒止痢) 生地黄15 玄参10g 炙烏賊骨15(収斂止血 固精止帯 制酸止痛 収温斂瘡) 鬼箭羽15g 白薇15(清熱涼血、利尿解毒通淋、退虚熱) 知母10g 法半夏10g 陳皮6g ?10g。14剤。

補記:

墓?回

別名は臭脚跟で、敗醤科敗醤属の多年生草木。秋季に根を採取し、婦人科系の抗癌生薬として用いられているようです。日本での流通はありません。苦 微酸、渋 涼で脚が汗臭い匂いがすることで、臭脚跟、脚汗草の別名があります。

清熱燥湿、止血、抑癌の効能があります。

中成薬で治帯片? 蒼朮 知母 苦参 金桜子からなる錠剤)があります。

治帯片の帯は帯下の意味であり、婦人科の帯下病に対する中成薬です。

四診

歯肉痛は寛解、面部潮紅は不著、尿黄泡立たず。経血少色淡、苔黄膩、脈細。尿WBC(+)。原方から炙烏賊骨、墓?回を除き、地膚子15g 車前草12gを加味する。プレドニゾンは5mg/dに減量。

経過

上方服用半年、病情安定、尿検査(-)、ステロイドは既に中止、なお中薬を継続し治療効果を固めた。

評析

狼瘡性腎炎はSLEに合併する免疫複合体性の腎炎であり、SLEの主要な合併症であると共に、主要な死亡原因でもある。中医はそのメカニズムを研究するに、肝腎虚損と熱毒亢盛以外に無いとする。周氏は本病を肝腎虚損、陰血耗損を本として、風毒痺阻、絡熱血瘀を標とすると認識し、治療には培補肝腎の品を多用し、血分の熱証にも留意し、肝腎の陰を保護する。風毒、瘀熱も重要な病因として、故に、袪風解毒、清熱化瘀の品を選択することは無論のことである。雷公藤、鬼箭羽、青蒿、蜂峰房、烏梢蛇のような品である。標本兼顧を堅持する用薬が特徴であり、中薬と西洋薬(ステロイド)ホルモンを併用配合することを重視する。

ドクター康仁の印象

周仲瑛氏の医案は以前紹介しました。

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130312

一般人には初めて目にする生薬名も多いでしょうが、上記の記事にはほぼ似たような配合が見られますので、御一見下さい。

周氏略歴は、1928生 前南京中医薬大学学長 国家級文化遺産伝統薬項目代表性という長い肩書きが付いています。

それにしても、「風毒」とは非常に観念的な病因用語ですね。氏が初診した時に帯状疱疹が残存していたのでしょうか?ヘルペスウイルスによる帯状疱疹の発生メカニズムは西洋医学的に明らかになりつつありますが、「風毒痺阻」とは難解過ぎますね。

氏が初診するまでにステロイド剤は既に7年間投与されていたということになります。思考実験になりますが、7年前に氏が初診したら、ステロイド、免疫抑制剤は、どのような投与方法になったのか?あるいは使用しなかったのか?評析には「氏は中薬と西洋薬(ステロイド)ホルモンを併用配合することを重視する。」と有りますが、直接的な証拠は無いようですね。

初診時の抗核抗体(+)、抗二重鎖DNA抗体(+)の記載ですが、通常は血清の希釈倍数などの半定量的な記載をすべきです。ただ陽性だっただけでは不十分だからです。氏の治療後に抗核抗体のパターンの変化があったのか?加えて、それぞれの抗体価は低下したのか、変化しなかったのか?貴重なデータなのですが、言及がありませんね。中医案の特徴がまた現れています。

専門的になりますが、SLEという自己免疫疾患の活動性はどのように変化したのかという問題なのです。中医学は定量性を欠くとよく言われますが反論できないのです。尿検査(-)という記載の仕方も、尿検査で異常なしの意味でしょうが、尿検査無しとも読める訳で、不正確ですね。

20131011日(金) 記


ループス腎炎 漢方 (腎病漢方治療190報)(時振声氏医案 中医雑誌1990年第4期より)

2013-10-10 00:15:00 | ループス腎炎 漢方

90年代の症例(医案)に入ります。1988年にループス腎炎と診断されて治療を受け、残存蛋白尿、血尿の治療に対して時振声氏が中医治療を行った内容です。

気陰両虚案

患者:薫某 28歳 女性

初診年月日1990年7月

病歴

1988年3月、蛋白尿、血尿、浮腫で某病院に入院、腎生検にて“狼瘡性腎炎(ループス腎炎 瀰漫性増殖型)と診断され、ステロイド、細胞毒類薬物治療後に浮腫は消退したものの、蛋白尿、血尿が消えなかった。

初診時所見

腰膝酸痛、倦怠乏力、畏寒と共に手足心熱あり、口干あるも飲水を欲せず、食欲不振、大便は偏干、小便黄赤、舌質暗紅瘀点あり、脈弦細。尿蛋白定量3.7g/24時間、尿沈渣RBC8~10/毎視野、WBC0~3/毎視野。

弁証と治則

証は気陰両虚に属し、湿熱、瘀血を挟む。益気養陰、活血清利を治則とする。益気滋腎化瘀清利湯加減を方用とする。

薬用

太子参15g 生黄耆15g 牡丹皮10g 茯苓15g 澤瀉15g 山薬10g 

焦山楂30g 生側柏葉30g 石葦15g 白花蛇舌草30g 益母草15g 

白茅根12g 毎日1剤 水煎服用。

経過

上方服用1月後に再診、自覚症状減軽、24時間蛋白尿は2.1g、尿RBC0~2/毎視野。上方加減治療半年、尿蛋白定量0.20.5/24時間、尿RBC消失。この後、改用滋腎止血片、一回5錠、1日2~3回服用。1年半随訪、病情穏定。

評析

本案はステロイド、細胞毒類薬物を長期に用いたが、治療効果が良くなく、時翁が、慢性病、かつステロイド薬物の長期連用では気陰が耗損するという根拠から、気陰両虚、同時に湿熱、瘀血を挟むと弁証し、故に扶正と祛邪目的で、益気養陰、清血清利を以って、証に薬剤が合ったが故に、いち早く治療効果が得られた。

ドクター康仁の印象

19883月から西洋医学の治療を受けて時氏が初診するまで、1年以上が経過しています。例によって、中医案の特徴として、ステロイド、免疫抑制剤の投与量と経過は記載されていません。時氏が初診した時ですら、或いはステロイドが維持量として投与されていたかも知れませんが、その辺の治療状況については、一切記載がありません。

瀰漫性増殖型ループス腎炎であった時点での尿蛋白量、血尿の程度、腎機能検査の結果なども記載されていません。高度な顕微鏡学血尿である尿沈渣のRBC多数あるいは無数/毎視野などはよく見かける所見なのです。

つまり、比較対象データを記載していないので、「治療効果が不良」とする根拠が見当たりません。少なくとも、浮腫は消退したのですから、「その意味で歴然とした効果があった」と言えるでしょう。

ネフローゼ症候群を呈していたのか?一時的な腎機能の低下があったのか?想像するしかないところが、「記載無し、あるいはデータ隠し」のもたらす非学術性というのか閉鎖性というべきか、ともかく中医学の暗部であると指摘されても反論できないところでしょう。

初めてこの類の医案をご覧になった一般の方々は目新しい生薬名ですから、時氏がループス腎炎に合わせて処方したと勘違いされるかも知れません。しかし、それは大きな間違いです。

以前に時氏の医案を紹介しました。

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121226

時氏は上気道感染後の急性発症型IgA腎炎、32歳女性の顕微鏡学的血尿が遷延し、(例によって急性期の治療内容は不記載です)蛋白尿の無い症例に対しても、気陰不足、陰虚内熱、血熱妄行と弁証し、益気滋腎化瘀清利湯加味として、太子参15g女貞子旱蓮草各10g生側柏馬鞭草益母草各30g、白茅根20g、小薊各6gを用いています。

太子参は益気健脾、補記生津に、女貞子旱蓮草は滋腎養肝に、生側柏は涼血散瘀、袪風利湿、馬鞭草は活血散瘀、利水消腫に、大小薊は涼血止血、散瘀利尿、益母草は活血利水に作用します。“行血は不傷新血(出血させることにはならなく)、養血は瘀血を滞らせることもない”更に、中空で節のある白茅根は、郁熱を透じ、小便の渋りや排尿痛によく効く、また涼血止血に作用すると記載し、益気滋腎、活血化瘀、清利湿熱、涼血止血の功能は、“血尿腎炎”の有効良方であるとしています。

本案では、蛋白尿に対しての黄耆、免疫調整の目的で白花蛇舌草を加味したのでしょう。馬鞭草でも牡丹皮でも涼血活血化瘀作用は共通です。

弁証論治は西洋医学的な疾病の発生メカニズムに迫るものではないのです。中医学の因果律は西洋医学の因果律とは別ものです。統一理論は夢のまた夢です。

2013109日(木) 記


ループス腎炎 漢方 (腎病漢方治療189報)(何世英小児科医案より)

2013-10-07 19:17:27 | ループス腎炎 漢方

何世英氏医案:湿熱壅盛案

患児:李某 13歳男児

病歴

患児は虚弱で痩せており、食欲不振、顔面部の皮疹が1ヶ月続き、1973612日入院。入院後に顔面に蝶形紅斑が常時出現、肝脾腫大、血圧140/100mmHg

630日LE細胞陽性と判明、SLEと確定診断した。同時に腎機能障害が発現し、尿量が減少した。尿蛋白(1~3+)ASLO1800。大量のステロイドと中薬治療を行った。入院2ヶ月で精神全身状況好転、197389日退院、外来治療となった。退院後は休息に留意し、通常の治療を続けた。春節前の両日、自転車で遊んだ後に、全身無力、気短、突発性の干咳、腹張、食欲不振、食後悪心、胃内容物の嘔吐、下腿の水腫、尿量減少(毎日12回)尿色黄、大便は黒くなり、10日前発熱一回、2日で解熱したが、症状が加重し、1974215日再入院となった。

再入院時所見

神志清、精神弱、慢性病の顔つきで、貧血顔貌、下肢に浮腫。両肺聴診正常、心拍数120/分、心尖部に収縮期雑音あり。腹水あり、肝脾ははっきりとは触れず、神経系統異常なし。体温36.8℃、血圧150/100mmHg。尿検査:RBC710/毎視野、蛋白(3+)。

既往歴に特殊な伝染病歴なく、父母は健康、兄は1972年「紅斑性狼瘡」で死亡。

入院後治療経過

ステロイド、シクロフォスファミド、苯丙散??Nandrolone Phenylpropionate蛋白同化ステロイド)及び利尿薬、輸血2回、入院9日後から中薬治療を加えた。

処方:車前草18g(利水滲湿) 萹蓄15g(利水滲湿) 金銀花9g(清熱解毒) 蒲公英9g(清熱解毒) 雲南茯苓15g(健脾利水)、中西薬結合治療で好転が見られず、病情は日増しに加重した。3月中旬尿量は極めて少なく、腹水は顕著になり、陰嚢に著しく、腹囲は入院時66cmが悪化し89cmとなり、血圧150/110mmHgNPN80mg%、精神疲弊、顔面の蝶形紅斑は以前のままであり、蟾酥(せんそ)散経験方に改めた。

314日より蟾酥散経験方を開始した。318日尿量は開始し始め、前日の380mlから急速に増加し1051mlになり、328日には断続的に増加し1720mlとなり、水腫は顕著に減軽し、腹囲は330日に減少し75cm、精神好転、以後中西医結合治療を継続した。1974814日退院時、患児精神、食欲良好、自覚症状無く、顕著な水腫無く、四肢関節痛無く、顔面の蝶形紅斑は明らかではなく、両肺聴診異常なく、心尖部に軽度収縮期雑音あり、心音有力、肝脾触れず、血圧128/90mmHg、尿RBC2~6/毎視野、尿蛋白(+)NPN27mg%

評析

本案の証は邪盛を主として、治療は祛邪を主とする。方中蟾酥は性味辛涼微毒、故に解毒し辟?(汚物毒素を除くの意味)する。巴豆(はず)は性味辛熱有毒、善く水飲を駆逐し、蟾酥と配合すると、気機の痞塞を疏通し、三焦の壅滞を通し利水消腫の効果に達する。現代薬理学の研究では蟾酥は強心昇圧とステロイド様の抗炎症作用があるとの報告があるものの、本例の証での作用機序はなお明確ではなく、更なる研究が必要である。

蟾酥散の組成:蟾酥2匹、巴豆14粒。 制法:蟾酥2匹の口の中に7粒ずつ巴豆を押し込み、焙った後に乾燥させ、平たく延ばしてから細く刃物で切る。

ドクター康仁の印象

症例報告という医学レポートではなく、「物語」のレベルです。SLEの診断にまで疑問を挟んだら、酷評ということになってしまいますので、診断はそのまま認めましょう。

最初の入院時に肝脾腫があり、入院後に尿量まで減少し急性腎不全のごとき様相を呈していた小児に大量のステロイドを投与したと記載が有りますが、数量と期間が未記載です。初回の退院後には通常治療を続けたとありますが、どのような通常治療なのでしょうか?これも記載がありません。

「自転車で遊んだ後に」浮腫、嘔吐、尿量減少、発熱、大便が黒くなったとあります。胃の内容物の嘔吐に血液があったのかどうかが、大便が黒くなる(タール便?)と合わせて、消化管出血の有無を推定することに必要なことですが、記載が無く、便の潜血反応、血小板数、ヘモグロビン値などの記載も有りません。

「自転車で遊んだ」ことの意味づけ、関連性は何処にあるのでしょうか。全く理解できません。

再入院時所見中の貧血顔貌、下肢に浮腫、心拍数120/分、腹水あり、肝脾ははっきりとは触れず、体温36.8℃、血圧150/100mmHg尿検査:RBC710/毎視野、蛋白(3+)。十分な記載ではありませんね。腎炎は確かに存在するようですが、ネフローゼによる腹水なのか?腎不全による腹水なのか?(肝脾腫を起こすSLE以外の疾患による腹水なのか?)貧血による頻脈なのか?血清アルブミン値までとは要求しませんが、せめて血清総蛋白値、ヘモグロビン値ぐらいは記載すべきでしょう。

再入院後治療のステロイド、シクロフォスファミド、苯丙散??Nandrolone Phenylpropionate蛋白同化ステロイド)及び利尿薬、輸血2回で疑問に思うのは、何故蛋白同化ステロイドを使用したのかです。そもそも貧血の原因についての記載が有りませんので、原因を問わず、貧血が強いので輸血した(これとて新鮮血であれば、血小板補給の意味合いもあるのです)のは、まだしも、再生不良性貧血等を疑って蛋白同化ステロイドを投与したのかも知れません。慢性腎不全では使用されることはあります。ともかくデータが完全に欠落しています。溶血性貧血についての言及もありません。

3月中旬からの乏尿、腹水の悪化、血圧上昇、NPN80mg%についての印象は、先ずmg%という単位の曖昧さです。mgは数値、%は割合ですから、併記することは理論的ではありません。仮にmg%をmg/dlとすれば、BUN換算で約40mg/dlとなり、さほどの高窒素血症ではありません。しかし、文脈からすれば急性腎不全あるいは慢性腎不全の急性悪化が考えられますので、NPN80mg%が「そぐわない」のです。全体の流れを見れば、尿量は回復し、腹水も減少し、腎炎の尿所見も改善してハッピーエンド?の物語となっていますね。

中医案の特徴は使用西洋薬剤の使用数量、使用期間について故意に記載しないことでしょう。本案にしてもステロイド剤、免疫抑制剤についての数量、期間について一切の記載が有りません。そして救世主の如き蟾酥散が登場して「ものがたり」が終わるのです。私は医師ですから幼子(おさなご)のように「坊や、よかったね~」で素直に納得して夢路に入ることは出来ません。

蟾酥と巴豆について少し補記します。

蟾酥鎮痛膏(せんそうちんつうこう) 

以前、中国で購入して使用したことがあります。末期がんの患者さんの肩甲骨がん転移の痛みに対して外用で使用しましたが、期待する効果は得られませんでした。製造元は吉林省通化振国薬業有限公司で、天仙液で知られる会社です。効能と適応症状:腫れ止め、痛み止め。各種腫瘍(癌)の痛み、筋肉損傷、骨刺、関節炎による痛み。胃部に貼ると、放射療法や化学療法による吐き気をやわらげ、心臓の痛みにも効果があるとされています。使用方法:11回。患部に貼り、12時間後に取る。注意事項:妊婦は使用しないで下さいとあります。
1
枚が7×10cmの貼り薬です。

蟾酥(せんそ)の基原は、シナヒキガエル Bufo bufogargarizans CANTOR 、ヘリグロヒキガエル B. melanostictus SCHNEIDER などの耳後腺および皮膚腺から分泌される白色漿液を乾燥したものです。本案では性味辛涼微毒と評析に記載されていますが、甘辛温有毒とする清書もあります。六神丸(ろくしんがん)にも配合されています。

六神丸(ろくしん丸)の宣伝文をご紹介します。

信じるか信じないかは読者次第です。
六神丸は強心剤としての薬効だけではなく、古来より全身の病をいやし、各器官の機能を総合的に高める働きがあるといわれています。古からの歴史によって培われた伝統薬です。
製造元:上海雷允上
成分:麝香 牛黄 熊胆 蟾酥 沈香 人参
効用:鎮痛 強心 解毒などに効きめがあります。

適応症:急な心臓不調の救急薬として効果がありますので、携帯すると安心です。しかも、副作用や「経年変化」が少ないので、長期間にわたって服用できます。さらに、強心剤としての薬効だけではなく、古来より全身の病をいやし、各器官の機能を総合的に高める働きがあるといわれています。
用法用量:13回、ぬるま湯で服用。成人1回10粒。111粒、212粒、3134粒、48156粒、915189粒。外用する場合は、10粒以上を取り出し、水或いはお酢で溶かし、患部に塗ります。
注意:妊婦使用禁止。

巴豆(はず)

峻下逐水薬に分類されます。大毒です。基原はトウダイグサ科のハズ Croton tiglium L.の成熟種子です。性味辛熱、大毒、帰経:胃、大腸、肺

効能:瀉下冷積、逐水退腫、祛痰利咽
激烈な瀉下作用によって水分を排出するのが特徴で、僅かな過量でも強烈な下痢が止まりません。急性中毒例も報告されています。
下痢が止まらない場合は、冷たいお粥を食べるとよいとされます。
虚弱体質と妊娠中の婦人には禁忌です。

10年ほど前に、メインチャイナから出稼ぎに来ていたホステスが、彼女が幼女の頃、悪さをする男の子に巴豆をこっそり食わせたとマカオのクラブで高笑いしていたのを思い出しました。危ない女です。そんな筈(巴豆)ではなかったと後悔しないようにしましょう。

2013107日(月) 記


ループス腎炎 漢方 (腎病漢方治療188報)

2013-10-04 18:05:45 | ループス腎炎 漢方

前回と同じく趙炳南氏医案 邪熱犯肝、気滞血瘀案を趙炳南臨床経験集より紹介します。70年代の症例です。

患者:肖某、29歳女性。

初診年月日:1972510

病歴:

1966年顔面に紅斑、手足の冷感が出現、肝臓は三横指腫大、某医院検査でLE細胞が陽性となり狼瘡性肝炎と診断され、4回の入院を経て、19525月に外来を受診した。

初診時所見:

主要な症状は疲倦無力、眩暈、関節痛、肝区痛、低熱、月経不調、検査所見:血沈84mm/h、WBC4600、TTT19U、トランスアミナーゼ200U。尿蛋白(2+)円柱陽性、RBC(30~40)/毎視野。

西医診断

系統性紅斑狼瘡(SLE)、狼瘡性肝炎、狼瘡性腎炎(ループス腎炎)

脈象:沈細緩、舌象:無苔、舌質正常。

中医弁証:邪熱犯肝腎、気滞血瘀。

立法:活血化瘀、肝益腎。

方薬:

秦艽15g 烏梢蛇6g 生黄耆30g 黄精15g 玉竹15g 川軍6g 党参30g 女貞子30g 漏芦9g 川連6g 白蔲仁6g 丹参15g 同時にプレドニゾン20mg/d服用。

529日上方連服7剤、再診時には肝区の痛みは好転、自汗心煩、関節痛、脈沈細緩、舌苔白膩。上方加減:烏梢蛇6g 漏芦6g 川軍6g 丹参15g 牡丹皮10g 香附子6g 元胡延胡索)9g 黄精9g 竹玉9g 沈香3g(鎮痛、鎮静、健胃整腸) 荷梗9g(祛暑薬に分類:通気寛胸の効能により暑邪挟湿の胸悶不暢に用いる) 厚朴6

再服7剤、服薬後肝区の痛みは消失、関節はまだ痛み、脈証細軟。舌象微紅、苔白膩。上方を加減:烏梢蛇9g 秦艽30g 漏芦9g 川連6g 丹参15g 徐長卿9g(祛風痛絡 止痛 解毒消腫) 劉寄奴15g(破血通経 散瘀止痛) 生黄耆30g 黄精15g 玉竹12g 元胡9g 川続断15g(補肝腎 活血 強筋骨)。

111日服薬42剤後、一般状況穏定、精神好転、食がやや進まない、再度TTT検査で9U、血沈31mm/h、秦艽丸、黄精丸、地耆丸、人参鹿茸丸等交互に服用6ヶ月半、全身状況は顕著に好転。毎日プレドニゾン5mgのみ服用。すでに、1日仕事が可能になり1月半。197314日自覚症状無く、飲食睡眠すべて良好、月経は既に正常化し、肝区無痛。TTT8U、血沈31mm/h、トランスアミナーゼ100U、尿蛋白(+)、外来で継続観察。目下なお一日仕事が可能である。

評析

本案は肝腎同病で症状は比較的複雑で病情は重い。趙氏は整体観念から着眼し、古方の秦艽丸加減を臨機応変に応用し治療を行った。活血化瘀と舒肝益腎の併用であり、祛邪と扶正を兼顧するものであり、治療方法を守るが処方自体に拘るものでなく、中医治療のこの類の難病に一路の有効治療を探し出した。秦艽丸系(医宗金鑑)方の組成は、秦艽30g 苦参30g 大黄(酒蒸)30g、黄耆60g、防風45g、漏芦45g 黄連45 烏梢肉15g(酒浸焙乾)である。細末にして、蜜丸として青桐の実大にしたもので、散風止痒、清血解毒の効用がある。

ドクター康仁の印象

「祛邪と扶正を兼顧する」のSLE治療の現代医学的解釈はまったく説明がありませんね。ステロイドなくして治療は不可能だったのではないかと思います。ループス腎炎なら腎炎の経過の基本的なデータがありません。顕微鏡学的血尿の程度はどのように変化したのでしょうか。せめてその数値ぐらいは記載して欲しいですね。ある程度の治療効果は確かにあるでしょうが、50年繰り返しても「医学の進歩」には結びつかないでしょう。2000年代の医案に到達するまで、順に紹介していくつもりですが、印象らしき印象を持ち得ません。

2013104日(金) 記


ループス腎炎 漢方 (腎病漢方治療187報)

2013-10-02 20:27:50 | ネフローゼ症候群

ループス腎炎 漢方 (腎病漢方治療187報)

6070年代の中医医案を紹介します。

趙炳南氏 医案 腎陰欠損、脾腎両虚案(趙炳南臨床経験集より)

患者:宋某、32歳女性。

病歴

19652月第一子(男児)出産。産後10日、手指の関節痛を自覚、その後全身の関節痛が出現。5月頃、下痢があり肝区の痛みを伴った。当時の肝機能検査で??(トランスアミナーゼ)200国際単位、麝香草酚???(TTT)20国際単位、肝庇護治療が無効、

1966年微熱が出現し、

1967年、顔面の蝶形紅斑が出現、ステロイド治療後に寛解。

1968年に発熱解熱せず、体温は38℃程度であった。手指末梢関節痛があり、血中LE細胞が陽性、大量のステロイド治療後に寛解。

19712月、再度の妊娠により病情加重、人工流産にて症状寛解。

19721月、腰痛、全身浮腫、腹水を併発し、全身性エリテマトーデス(SLE)、尿毒症と診断され、某病院に入院治療となった。血沈70mm/h、尿蛋白(3+)、尿沈渣赤血球2025/毎視野、二酸化炭素結合力145mmol/L、血中NPN21mmol/L、総コレステロール12.7mmol/L491.5mg/dL)。全身水腫、腹囲98cm、血圧200/150mmHg、LE細胞陽性。

診断は“全身性エリテマトーデス”“ループス腎炎”であった。大量ステロイド、消炎痛(インドメタシン)、??(シクロフォスファミド)等の薬物治療を受けた。

血中非蛋白窒素NPN値とは、血清蛋白以外の窒素成分である尿素、尿酸、クレアチニン、アミノ酸、インジカン、クレアチン、アンモニアなどの合計値であり、NPNの約50%は尿素窒素BUNです。特異性が小さいので現在では測定されていません。本案ではBUNは推定、約10.5mmol/L63mg/dL)と高値になり、腎不全が強く疑われます。二氧化碳?合力(CO2CP)の参考値(正常域2030mmol/L或いは5070 Vol%)ですので、医案の145mmol/L14.5mmol/Lの誤植だろうと思います。理由は、極端な代謝性アルカローシスより、むしろ、代謝性アシドーシスが考えられるからです。

中医弁証:脈象沈弦細やや数。舌質やや紅、苔薄白。腎陰欠損、脾腎両虚と弁証。

立法:滋陰益腎、健脾利水、解毒を補佐とする。

薬用白人参6g 茯苓12g 枸杞子12g 生薏苡仁30g 生黄耆30g 車前子(包煎)15g 白朮12g 抽葫芦10(利水滲湿) 烏梢蛇6g 秦艽10g 漏芦12(清熱解毒) 仙人?10g(利尿消腫) 防己12

920日:上方10剤後、病情に好転有り、前方を加減した。

薬用秦艽15g 烏梢蛇6g 漏芦10g 川連6g 鶏血藤30g(養血活血化瘀) 首烏藤30g(別名夜交藤養心安神) 紅人参