顎の下、頚部のリンパ節腫大もソノ都度計測し、小さくなっていた。孫と一緒に、急な坂道を、上の梅林公園まで歩いて上れるようになったと喜んでいた。体力が回復して、顔色も良くなった。ところが、入院後1週間もしないうちに、亡くなったと家人から連絡があった。
わたしは学会で得意げな顔をして発表している若造の医者を見ると、無性に腹が立ってくる。「~を経験した~病の1例」の類の症例報告である。患者を抗がん剤治療で、殺してしまっては医者とは言えない。まるで「キチガイに刃物」の世界である。
背筋が凍てつくと同時に怒りがこみ上げてくる。「何人もの患者を扱った、その結果、何人も殺してしまった」これが医者の評価といえようか?患者数が多ければ大家ということにはならない。それが評価基準になってはいけないのだ。
「何人しか見てこなかったが、長生きをさせることが出来た、現在も生きている、病はもっていても、五年以上生存して、元気でいる」これが、評価基準にならなくてはならない。
診療情報提供書 平成1●年9月●日
兵庫医科大学付属病院
血液内科 ●口●先生 御待史
●●康仁クリニック
院長 ●●康仁
TEL 07●-●-50●●
患者氏名 ●林●智●様 80歳
神戸市●●区●吉●●番●●号
診断名
悪性リンパ腫(胸腔縦膈内再発 胸水貯留)
記:お世話になっています。
●月7日再診されました。現在
漢方抗腫瘍治療として全身の免疫力のアップ、NK活性上昇を目的に
人参6黄耆6茯苓6猪苓6刺五加6霊芝6白朮4.5
養血活血を目的に紅景天6 丹参粒
悪液質の防止目的に田七人参 鎮咳祛痰薬として貝母6
抗腫瘍生薬として栝楼根 玄参 拳参 山豆根 山帰来 白花蛇舌草 半枝蓮 各6~10gを煎じ薬として服用しております。
また、強心利尿目的に紅参末 五苓散を追加しております。
また清熱解毒薬として、
蒲公英根 連翹 を加味しております。
Chemotherapyの予定とならざるを得ない状態だとご指摘を受け。今後はChemotherapyのSide-effectの防止、免疫力の維持を中心にする補気薬を中心とした処方に変更し、抗腫瘍生薬は現状維持あるいは骨髄抑制の度合いを見ながら減量していきます。また、Apotosis誘導型の生薬の烏薬やリンパ腫にある程度有効な夏枯草などを加えて行きたいと思います。
敬具
何の返事も無いままに、患者さんは入院後1週間で亡くなった。亡くなったという、事実報告もなかった。
癌メール相談ではなく、実際に当院に受診され、漢方抗がん治療を受け、3年来、元気を回復した症例であった。
元気で生きるのか、或いは入院して死ぬのかを判断させる貴重な症例であった。
ドクター康仁 記