話は米から逸れるが、トリスは不味い。
トリスをストレートで口に含めば、舌にびりびりと突き刺さる感覚がある。
喉を通過させることはとうてい不可能である。
水:トリスを9:1の水割りにしてようやく口に含むことはできる。
学生の頃は、トリスはコーラで割ってコークハイとして飲むウィスキーだった。
コーラ:トリスを7:3にすると、コーラの甘さと炭酸で刺激性が隠蔽された。
友人のSは、トリスの不味さは熟成年数が短いせいだと考えた。
仕送りがあった日、トリスを10本買ってきて、「おれはこれを10年間熟成させて、まろやかにしてから飲むのだ。10年後にはこれがオールドパーに変わっておるのだ。1本780円が10000円に化けるのだ」とほくそ笑んでいた。
樽でなく、瓶のまま10年おいて、はたしてまろやかになったのか?
その結果は不明だ。
なぜならSは10年おくどころか、1カ月でその10本を飲みほしてしまったからだ。
考えてみれば、酒飲みが酒を目の前において、10年も我慢していられるはずがない。
日本は酒造法がなく、酒税法で製造方法が決められているのだが、ウィスキーに関しては熟成年数が決められていない。
スコッチはイギリスの酒税法で、最低3年以上熟成させないと出荷できないと決められている。
オールドが年間1億本以上売れた年があった。
2年熟成するとして2億本分の原酒を貯蔵する設備があるのか疑問に思ったが、熟成年数が決められていなければこれは可能である。
蒸留するそばから瓶詰めして発送すればいいのである。
日本消費者連盟がウィスキーの熟成期間についてメーカーに公開質問した際、ニッカとキリンは最低でも2年と回答したのに対し、サントリーは企業秘密として回答しなかった。
ウイスキーは安いから必ず不味いわけではない。
キリンの「富士山麓」は980円でも美味い部類に入る。