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“生命の暗号―あなたの遺伝子が目覚めるとき”を読んで

株価が暴落している。どうやらクロダ・バズーカの内実はクロダ・アホーカだったのではないか。マイナス金利で一般消費者は預金を引き出してしまうだろうが、そうなると経済はデフレになる。一方その銀行は融資先のないまま遊び金を日銀に預けていた預金は負の資産となるので収益は減少する。それを金融業界の悪化と見た市場は、従来の経済不安に新たに加わった不安材料として株は売られた。こうした不安心理は円高へ向かわせたが、購買力平価から言えば過剰な円安だったので未だ適正水準ではないはず。“過剰な円安”で仮の収益を得て上昇した株価は円高ですっかり剥げ落ちた、というのが真相であろう。これで別称アホノミクスのアベノミクスは、クロダ・アホーカと合わせてアホの相乗効果となった。安倍政権は経済危機に加えて、北朝鮮問題、足下の閣僚、議員の不祥事、舌禍もあって、いよいよ揺らぎが始まった形ではないか。

本題に戻ろう。今回は読書感想。“生命(いのち)の暗号”とは、いかにもオカルト的標題だが、これはれっきとした真面目な生化学者の本だ。どうしてこの本を読む気になったか。それはテレビ東京の“モーニングサテライト”の“リーダーの栞”で、先週紹介されたからだ。日野自動車・市橋保彦社長の紹介による“生命(いのち)の暗号”という筑波大学名誉教授・村上和雄氏が書いた本だった。
紹介されたこの本、今回は妙に読んでみたくなった。こういう心境になるのは珍しい。読んでみたくても“いずれ読もう”と思うのが普通なのだが、何故か直ぐにも手に入れて読んでみたくなったのだ。著者流の表現で言うと“私の遺伝子がONになった”のであろうか。

さて、日野自動車・市橋社長はこの本を読んでどうビジネスに活かしたか。
テレビでは、この本のキィ・ワードの紹介から始めていた。それは、“人間の遺伝子で現在はたらいているといわれるのは5%から、せいぜい10%で。あとはまったく眠ったままの状態”であり、その上その“遺伝子のはたらきは環境や刺激で変化する”。たとえば“「火事場の馬鹿力」という言葉があるがあれは火事という環境の中で、遺伝子のスイッチがONになり大きな重い荷物を運べる力が出る”のだ。さらに“プラス発想すれば遺伝子が目覚める”し、それを加速するには“笑いや感動で人の(良い)遺伝子のスイッチをONにして人間の行動が(良い方向に)変わる”のを使うべきだ。
市橋社長は“こういうことがうまく使えると会社のみんなが生き生きと働いて仕事もうまくいくのではないか”と考えたという。企業組織にトータルで責任を持つ社長らしい発想だ。人は良い方向に追い詰められれば、“前向きな姿勢が遺伝子をONにして”難関を突破して前進することができたという経験があったという。著者の村上氏は、“くすぶっていた研究助手から教授に上り詰めた”し、市橋社長も車両開発でブレーク・スルーできたという。
また社長は、“みんなの気持ちが一つの課題を解決しようとするベクトルにビシッと合ったことがあった。(遺伝子をONにするために)一番大切なのは目的がはっきりしていることだろう。”これが、“遺伝子をONにする重要なポイントだと気付いた。”そこで、“15年度のスローガンに社員の眠った遺伝子をONにするためのキィワード”として“世界中のお客様のために 私がやります~よりよい商品・よりよいトータルサポートを目指して~”つまり、“一人一人がオーナーシップを持ち、自分の立場で世界中の顧客のために仕事をする”ことを意図している。
具体的には、従業員証の裏にカードを書かせ、客観的使命・役割の下に、それぞれの立場での“私の「やります!」宣言”をその下には“安全宣言”さらに所属と氏名の署名をさせて、“「自分がやる」という強い意志が遺伝子をONにする、と思っている。とても大きな要素で、やらされていても面白くないハズ”だと言っていた。つまりは、“プラス思考で前向きになって仕事をする!”が大切と締め括っていた。

要するに、眠っている良い遺伝子を如何にONにするかが鍵、と読み取れるという理解で落ち着く。そこで一歩進めてその“良い遺伝子を如何にONするか”が知りたくて、本を買ってよんだのだが、実際の本の内容はそういう方向には書かれていなかったのだ。
先ず“まえがき”では“それぞれの遺伝子は、見事な調和のもとではたらいている。・・・この見事な調和を可能にしているものの存在を、私は「サムシング・グレート(偉大なる何者か)」と呼んでいます。”と書いていて少々違和感を持ったのだった。読後改めて、この本のカバーの上に英語で“The Divine Code of Life”とあるのに気付いた。どうやらこれがこの本の主題なのだ。

村上氏は自らの人生を振り返りながら、運が良かったことを幸いに思いつつも、それはいずれも追い詰められて“良い遺伝子”のスイッチがONになって不思議に成功を収めたと言う。世界初の酵素・ヒト・レニン研究は村上氏のライフ・ワークとなっていた。その遺伝子解読競争で、世界超一流のパスツール研究所、ハーバード大学、ハイデルベルク大学を相手に僅かな期間で逆転勝利を収めた。しかも、着手しようとしていた時 既にパスツール研究所は80%まで解読済みだったという。それを励まして協力支援したのが京大の中西重忠教授だった。中西教授の“まだ8割程度でしょう。だったら未だわからんでしょ。”と言われて、村上教授も“99%の負け戦を「勝った!」と思った”と言う。これぞ追い詰められて“遺伝子ONの世界が火事場のバカ力のように出て来た例”だというのだ。

こうした業績は個人の遺伝子がONしただけではコトは進まない。このように遺伝子は孤立しているようだが、実はどこかで連携しているのではないかとも思わせる表現ぶりだ。良き遺伝子の調和と共鳴。事実、そのようなことに研究途上で幾度も遭遇したのであろう。iPS細胞の山中教授もテレビで不思議な経験をすることがあると語っていたのは、このようなことであろうか。そうした現象の背景にある種の意思を感じ取ってしまうのであろう。
生命の元の元、先祖をたどると“サムシング・グレート”に行き当たるというのだろうか。“地球上に存在するあらゆる生き物―カビなどの微生物から植物、動物、人間まで含めると、少なく見積もっても2百万種、多く見積もると2千万種といわれている―これらすべてが同じ遺伝子暗号によって生かされている。”この遺伝子を設計したのが、その“偉大なる何者か”なのであろうか。

しかし、そうした“良き遺伝子の調和と共鳴”を背景である種の意思が統制しているというのならば、人類の無秩序な膨張と尽きることのない傲慢はどういうことと解釈するべきであろうか。大半の人間の良くない遺伝子のONが機能しているからなのだが、そこには“神は無力”なのか。

個人的なことであるが、実は私はISOの世界でも品質でやって行きたいと思っていた。そしてこのブログも品質を話題中心にしてきていたが、実際には思いもよらず私の志向に反して、環境に傾いて来てしまっている。あたかもある種の意思に導かれたかのようだ。しかし、“環境”は私の手に余るテーマであり、今の人類にはその文明論に迫る大テーマだ。“サムシング・グレート”は、この浅学菲才の私にそれに従事させるような無駄なことを企ててどうしようというのだろうか。これは 自己中、いかにも誇大妄想か。

それに“サムシング・グレートの存在”を言う限り、予定調和的印象を与える。それはある種の“運命論”に繋がってしまうが どうだろうか。それに未だ、“遺伝子”について著者には申し訳ないが十分に理解できたと言うレベルにはない。初歩的な所で釈然としていない部分があるのは事実だ。科学者を魅了する“遺伝子”とは何ものか。とにもかくにも これを機会に、もう少し村上和雄氏の著作を読んでみたいと思っている。

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