2015年1月13日 あんぽん

2015年01月13日 | 風の旅人日乗


連休中は、
身体と心が
仕事をひどく拒絶したので、
自分に甘いワタクシは
それを許してしまい、
読書三昧を楽しんだ。

中でも、
『あんぽん 孫正義伝』
(佐野眞一著 小学館刊)
が面白かった。




ぼくが少年時代を過ごした
福岡県遠賀郡や
北九州市小倉には、
在日の人たちがたくさん住んでいたし、
一緒に遊んだ,
仲良しの友だちもいた。
父方の祖父母は
筑豊の、ある炭坑町に住んでいた。

あの時代の、
北九州地方の空気が
まざまざと甦ってきて、
それで
物語に引き込まれていったのも
事実だけれど、

それよりも、
インタビューを重ねて
人の記憶を無数の言葉に変換して、
それらを検証することで
ひとつの事実をあぶりだそうとする
手法を取るノンフィクションの、
限界のようなものが見えて、
そのことのほうが
とても興味深かった。

現実に起きた一つのできごとが、
それぞれの人間の目と耳と心を通過すると、
それぞれがまったく異なる、
それぞれの「事実」になることが、
とても興味深かった。

唯一のものであるはずの
ある特定の出来事や、
唯一のものであるはずの
個々の人物像は、
ほとんど、
それを見た人や
それを知っている人の
数と同じだけ
まるで別個の出来事や人物像として
この世に存在しているようなのだ。

人の心で濾過されると、
善人は悪人でもあり、
悪人は善人でもある、
らしいのである。

確かに、
思い当たること、
あるなぁ。