ぼくの周りには、90歳を超えてなお矍鑠(かくしゃく)と活動をされている先輩がいます。いつもそういう方と会うと、ぼくはとてもこの方のような人生を送れるとは思えない、と年齢の開きと壮健さに腰が引けてしまうのです。
最近、90歳代のプロの作家が、90歳をどう生きるか、についてのエッセイや小説を発刊し、それらの本がまさに隠れたベストセラーの域にあるそうです。一度店頭を覗いてみてはいかがでしょうか。
昨年の東日本大震災の後、99歳になる町の詩人が「くじけないで」という詩集を出されました。柴田トヨさんという方です。96歳のときご子息からの勧めもあって近所の人と詩作の会を作っておられたそうですが、まさか、このような本が爆発的に大衆の手元に届くとは予想もしておられなかったのでしょう。
この「くじけないで」という詩は、実に感動的で示唆にとんだ詩ですが、地震で多くの人々が苦しんでいる姿を見て、何のお手伝いも出来ないもどかしさや自分の非力を思いつつ、ただテレビに手を合わす日々を送っていたとかかれています。柴田さんは、自分はもうこの年で何も出来ないことへの詫びる思いと、自分が彼岸の世界に行けば、そよ風を送りましょう、と優しく力づける詩を発表され、最後に「くじけないで」という励ましの言葉で終わっています。99歳のときに発表されたのですが、今は100歳になられ、詩人として名を知られるようになっています。
このような人と実際に出会ったり、時には作品を通して心に触れるということは幸せなことではないでしょうか。周りのことも少しずつ見え始めるこの時期、国全体がどこかささくれだっている今の社会への嘆きの声は大きいでしょうが、やはり自分に出来ることを探し求めるのもよい人生の送り方かもしれません。
何歳になろうともいつも聡明に生きることが大切なのでしょうね。
やさしいタイガー