ときどき日ごろどうしておられるかな、と思い出す人が幾人かいます。思いがけなく芦屋に住む神戸時代からの大先輩が本を贈ってくださったのです。このSさんも忘れがたい方でもう80に手が届くのではとお見受けしているが、お会いしなくなってもう20年以上にもなるでしょうか。
謹呈本は「植民地・戦争・天皇制 ~あるキリスト者の歩んできた道」という本です。やや肩の凝る本かもしれませんが、「若者に受けついでほしいこと」と帯にはあり、台湾で生まれ、育ち、植民地として自らも加害者の立場を忘れずに自らの半生を「オーラル・ヒストリー」の形で学生たちの研究グループが纏めた力作です。
いつまでも前に向かって歩むこのS先輩はあえて若い頃に労働の場を捨て、研究の道へと転換されたのです。必ずしも恵まれた生活ではなかったと想像しますが、辛苦を乗り越えて何冊目かの著書として出版されたのです。
ぼくはまだ若い頃、このSさんと他の学者の方の仲間に加えていただき、戦争や平和、更に天皇制などについて数年にわたり研究して来た事を思い出します。だからぼくのようなものにも送ってくださったのだろうと嬉しく思っています。
そしてSさんがご壮健でお過ごしであることを知り得たこと、依然として矍鑠(かくしゃく)として活躍しておられる事を知ったこと、もうそれだけで古老の青年との絆が充分繋がっていることに感謝があふれます。同時におおいに刺激を受け、人生の思いのこもった一冊に心からの感謝を添えてゆっくりと読ませていただきます。
嬉しい大きなプレゼントでした。
やさしいタイガー