今日は3月3日。何の日でしょう、と聞けば、100人中100人が「ひな祭りの日」とお答えになるでしょう。とはいえ、お雛様を出してきて華やかに飾っているお家はどのくらいあるのでしょうか。女の子がいない、孫はこれない、飾るほどのスペースはない、もう昔のお雛様は全部処分した、などの理由で少なくなっているのではないかと想像しています。
お雛様を飾るようになったのは室町時代といわれていますが、当時の貴族たちは自分たちの栄華を誇るように雛を並べて白酒を飲み、さぞ優雅に短冊に歌の一句を詠んで楽しんでいたことでしょう。そういう長閑な情景はどこかに平和の香りを漂わせているようにも思います。
家々にお雛様を飾るようになると、心待ちしていた初春の訪れです。梅にとまる鶯が美しい声で鳴くと人の心に穏やかで優しさを一層まし加え、楚々とした立ち居い振る舞いによって日本の美しい伝統を生み出してきたのかもしれません。
穏やかなこの時代から現在に飛び越えて見ると、なんと殺伐とした時代なのか、といささか嘆きたくなるような気さえします。一つずつよき伝統が消え、人の心から愛でる心がなくなり、何か大切なものを次々と落としながら歩んでいるような感がします。
せめてこの日くらいは幼い日の事を思い出し、ひな祭りに因んだ童謡でも口ずさんで見るのもまたよし、と思いませんか。
やさしいタイガー