穴が塞ぐ

　独身の40代のお客さんが彼女が欲しいと言いだした。

　お客「マスター、誰か彼女紹介してや」
　私　「なにを急に言いだして」
　お客「最近、溜まってんねん。夢精するねん」
　私　「夢精するて？よっぽど溜まってんねんなあ。一体、何年してないの？」
　お客「俺、童貞歴10年や」
　私　「俺とこセックスレス10年や。同じやん、辛抱しぃ」
　お客「マスターは歳やから、もよおしてけーへんやろけど、俺はまだ現役バリバリやで」
　私　「原液でバリバリかいな、パンツが…」
　お客「そうや夢精が乾いてパンツが…、何を言わすねん！」
　私　「それはそうと、ピアスはせーへんかったら、(耳の)穴が塞がるんやろ？」
　お客「そうそう、俺、20代の頃やってたけど、今してないからこの通り塞がってるやろ」
　私　「ホンマやなあ、ほんだら、俺とこの嫁はんの穴、絶対に塞がってるわ」
　お客「なんで？」
　私　「10年も使(ツコ)うてないから…。あれ以来、夫婦の間に穴があいたままや」
　お客「こっちは、あいた口が塞がらんわ」

　一句：セックスレス　夫婦の穴は　埋められず
　謎かけ：穴が塞ぐとかけて、身内の寄り合いと解く。どちらも(視界・司会)が無い

朝シャン

　ロン毛でポニーテールの男性客A君と、いつも帽子を被っているお客のBさんが洗髪の話をしだした。

　私 「髪の毛が長いから洗髪の後が大変やろな」
　客A「そうやね、洗髪の後は軽くタオルで拭いてからドライヤーで乾かすねん」
　私 「時間、かかるやろね。俺なんか1秒もかかれへんわ」
　客B「頭を洗(アロ)た後、頭をひと振りしたら水滴が滑り落ちてそれで終わりやろ」
　客A「マスターは楽でエエなあ。僕は乾かすのに10分以上はかかるわ」
　客B「俺は風呂からあがったらドライヤー当てへん。タオルで軽く拭いたら帽子を被るわ」
　私 「へえ、帽子を被ってん寝るんか？」
　客B「何で帽子を被ってん寝るねん、朝シャンや。寝る前は風呂に入れへんねん」
　客A「へえ、朝シャンかいな。オシャレな人は違うなあ」
　私 「いや、オシャレと違う！」
　客A「なんでやのん？」
　私 「ただ単に毎晩、遅うまで飲んでるから寝る前にお風呂に入られへんだけやろ」
　客B「その通り！」

　一句：朝シャンで　酔い醒め気分も シャンとして
　謎かけ：朝シャンとかけて、野球チームのエースと解く。どちらも(洗髪・先発)や。

ねずっち

　最近、ねずっちの影響を受けたお客さんがコトあるごとに「ととのいました！」と言う。別にととのっていないのに、である。そして、謎かけのお題を出してくる。
　昨日も「ジンジャエールとかけまして」とS君がお題を出し、そして「出来の悪い子と解く、どちらもショウガない」と自分で答えご満悦。
　「それは違うで。ジンジャエールは生姜あるやん」と私が言うと「シロウトやから、まけといたりや」とママがフォロー。
　別の客が「スピーカーとかけてマスターの頭と解く、どちらもボウズである」と言った。
　「確かに俺とこのスピーカーはBoseやけど、自分でお題を出して自分で答えたらアカンわ。第三者がお題を出さんな…。俺の出る幕が無いやん」
　「ほんだら私が出すわ」とママが割って入って「ヒグマ」のお題を出した。
　私は最近、謎かけに凝っているだけに皆より回答が早い。「ヒグマとかけて、キッチンドリンカーと解く。どちらも(鮭・酒)を好みます」
　「ボケ防止」「ボケ防止とかけて宝石の値段を聞かれたと解く。どちらも(体操・大層)します」
　「カラオケ」「カラオケとかけてマラソンの練習に付き合うと解く。どちらも(伴奏・伴走)します」
　謎かけに関しては一日の長がある私に軍配が上がり、悔し紛れにお客さんがお題を矢継ぎ早に出してきたが、私もプロではないので答えられないのもあった。
　今日、床の中でその事を思い返していたら次々と謎かけがわいてきた。とりあえず店にあるものをお題にした。

　ジンジャエールとかけてオリンピックの上位と解く。(ショウガ・賞が)あります
　コーラとかけてモーターボートのステアリングホイールと解く。(ソーダ・操舵)が効く
　タンサンとかけて徳島を出発すると解く。(泡立ち・阿波発ち)ます
　ミネラルとかけて香りの良い化粧品と解く。(鉱水・香水)である
　清涼飲料水とかけて亀の背中と解く。(コーラ・甲羅)があります
　スピーカーとかけて麻酔が切れたと解く。(拡声・覚醒)します
　グラスとかけて東京から名古屋の高速道路と解く。(透明・東名)である
　コースターとかけて３６と解く。(敷く・四×九「シク」)でしょう
　シェーカーとかけて、噴火の後の灰と解く。(振り・降り)ます
　付き出しとかけて親の懐と解く。(アテ・当て)にする
　電子レンジとかけてクイズと解く。(解凍・解答)します
　カウンターとかけて世間体と解く。(対面・体面)である
　椅子とかけて店の準備をした後と解く。(回転・開店)します
　引き出しとかけて儲けの漢字と解く。(モノ・者)が入ります
　　　　　　　　　　　　　　　　【※いずれも()の前の“どちらも”を省略しています】
あれこれ考えていたら、結局ほとんどねずっちじまいになってしまった。

　一句：ねずっちを　寝床で考え　寝ずじまい
　謎かけ：ねずっちとかけて、早朝喫茶と解く。どちらも(回転が速い・開店が早い)です

子供の遊び

　年配のお客さんと子供の頃の遊びの話をした。

　私 「べったんとかバイとかしたなあ」
　客A「ビー玉とか陣地取りもやったなあ」
　客B「それに鬼ごっことか電車ごっこにチャンバラごっこ…」
　私 「プリントごっこ！」
　客B「それは家庭用の印刷器具やんか。遊びのごっこと違う！」
　客A「いろんな、なんとかごっこをしたなあ」
　私 「お医者さんごっこ、は？」
　客A「俺はせーへんかったわ」
　私 「なんでや、女の子がいてへんかったからか？」
　客A「あれは男同士でしても面白ないもんなあ」
　私 「ちっさい頃からマセてたんやなあ。プロレスごっこは？」
　客B「俺、やったけど、しまいに本気になって喧嘩した事があったわ」
　私 「プロレスごっこやったら、四の字固めとかマンの字固め…」
　客B「マンの字固めは無いわ。四の字固めは足四の字固めと首四の字固めがあるねん」
　私 「首四の字固めて、乳首に技をかけるんか？」
　客B「乳首に足はかけられへんっちゅうねん！真剣に話してたのに…」
　客A「マスター、怒られたなあ」
　私 「すまんすまん、俺、ちくびったなあ」
　客A「それ、しくじったやろ」

　一句：懐かしい　遊び話で　時忘れ
　謎かけ：子供の遊びとかけて、シーフードのフライと解く。どちらも(凧を上げる・蛸を揚げる)のもあります。

結婚報告

　今日はY子さん母娘が来店。そして娘のS子ちゃんの結婚報告をして花婿さんの話をした。

　私　「俺も彼を知ってるけど、彼は大人しいのんと違うの」
　娘　「うん、大人しいねえ。でも彼はいつも料理を作ってくれるねん」
　私　「ひょっとしたら、S子ちゃんの料理、まずいからと違う？」
　ママ「なんでやねん！」
　娘　「そうよ、そんな事ないで。私の為に何かをするのが好きやねん」
　母親「そうそう、彼氏は娘が大変やと思う事をやってくれる子よ」
　私　「ほんだら彼が子供、産んでくれるなあ」
　母親「それは無いわ」
　娘　「彼、年は若いけど考え方が古いねん。おっさんやねん」
　私　「おっ産してくれる…」
　ママ「出来るわけないやろ！」
　私　「まあ、早(ハヨ)、ええ子、産んで幸せな家庭を築きや」
　娘　「うん、そうするわ」
　私　「子供の作り方、分からんかったら、いつでも言うといでや」
　ママ「アンタに相談して、どないなるのん」
　私　「おっちゃんが手取り足取り教えたる」
　ママ「何を変な事を言うてんねん。このエロ河童！」

　一句：結婚報告　何度聞いても　結構な
　謎かけ：結婚報告とかけて、下積みが長い芸能人と解く。どちらも(目出たい・芽でたい)なあ。

遊び人

　若手の先輩A君と後輩B君が来た。先輩は遊び人である。後輩は4歳の娘さんがいる。

　客A「こいつとこの娘、可愛いで。俺になついてくるねん」
　私 「A君は遊び人やからな。将来モノにしよう思てモノをやって手なづけてんねやろ」
　客B「先輩はストライクゾーンが広いからな。心配やわ」
　客A「ちょっと待ってや、俺は量より質やで」
　私 「いや、そんなことないやろ。年寄りから幼児までか…、俺とこの母親を見せんとこ」
　ママ「なんでやねん、お義母さん、もう死んでおらへんやん」
　私 「墓まで行って掘られるか分かれへんやん」
　客A「俺、墓の穴を掘るぐらいやったら、オカマのケツ掘るわ！」
　私 「何や、オカマもいくんかいな。量より質と違うやん。墓の穴で墓穴掘ったなあ」

　一句：遊び人　質より量の　千人斬り
　謎かけ：遊び人とかけて、大学の研究にかかせない資金と解く。どちらも(女性・助成)がつきもの　

自転車でコケた

　ぽっちゃりした女性客が、腕に青アザをつくっていた。

　私　「その腕のアザ、どないしたん？」
　お客「この間、夜道に酔っ払って自転車に乗ってたら、よろけてコケてん」
　私　「お～、可哀想に。大丈夫やったか？」
　お客「マスターって優しいのね、心配してくれて」
　私　「心配なのは道路や。ヒビいってなかったか？陥没してたら危ないからな」
　お客「陥没て、ひどいこと言うね。他に心配するとこあるやろ？」
　私　「あー、ゴメン、ゴメン。自転車、大丈夫やったか？」
　お客「マスターはもう、イジメンといて」

　一句：自転車で　よろけてこける　夜の道
　謎かけ：自転車とかけて、時計の長針と解く、どちらも(踏んで・分で)進むでしょう

下りもの

　今日のお客さん、子宮の病気の影響で38歳にして生理が上がったとか。

　私　「えーっ、もう上がったの？体の調子悪ないか？」
　お客「ちょっとは変やわ。でも、下りもんが無いからパンツ汚れへん」
　私　「俺、下りもんあるんかな。パンツが汚れる」
　ママ「それ、お漏らしや」
　私　「年いったらアカンわ。筋肉もチン肉もゆるんで…」

　一句：年老いて　シマリ悪なる　あちこちが
　謎かけ：下りものとかけて、ブラジャーに入れるパットと解く、どちらも(漏れる・盛れる)でしょう

嵐(ジャニーズ)

　若い女の子たちと、ジャニーズの話からアイドルグループ「嵐」の話に及んだ。

　M子「嵐の誰が好き？」
　J子「相馬君」
　私　「相馬と相馬が決まってる」
　ママ「それは相場や！私は二宮君。何回か映画とかドラマで見たけどいい演技してたわ」
　私　「二宮て、二宮金次郎か？」
　ママ「二宮金次郎は昔の偉い人や。私が言うてるのんは二宮和也君や」
　M子「J子ちゃん、大野君は？」
　J子「大野君は里田まいとか吉野公佳とか綾瀬はるかとか女性関係の噂が多すぎ」
　私　「大野はオーノーか」
　J子「M子ちゃんは櫻井君やろ」
　M子「当たり！ド・ストライクやわ。H子ちゃんは？」
　H子「私、松潤」
　私　「松潤て？」
　H子「松本潤を縮めて松潤」
　私　「ほんだら俺、伴淳。伴淳三郎が好きや」
　ママ「それは昔の俳優や。今は嵐の話をしてんねんで」
　私　「ああ、嵐やったら嵐寛や」
　M子　「嵐寛て誰？」
　私　「嵐寛寿郎」
　ママ「そんな古い人、今どきの子は知らん！盛り上ってるのにややこしい事を言いなや」
　私　「嵐の会話を荒らして、スマン！」

　一句：アイドルの　会話に乗れない　オヤジかな
　謎かけ：嵐とかけて、福笑いと解く、どちらも(華・鼻)がある

募嬢詩：七回忌

早いもので今日は瞳の七回忌
6年前に瞳が逝った日と同じ日曜日だ
あの時もお天道様が燦々と照っていた
瞳が危篤の電話があり、病院へ行きすがら
車を走らせながら、お天道様に回復を祈った
瞳が死の淵から生き還れるように何度も祈った
病室に着いてからも、瞳の手を握り奇跡を念じた
けれども願いは空しく、私の元から離れていった
看病及ばず娘を逝かせてしまった自分の力の無さに
ずっとずっと悔やんでは涙にくれる毎日だった
長い間、悲しくて寂しくて仕方がなかったが
周りの人達の励ましや温かい言葉に支えられ
時間の経過と共に、どうにか乗り越えられた
今は瞳との幸せな日々を顧みられるようになり
楽しく過ごした出来事を、あれこれ思い出しては
ちょっぴり微笑みながら、涙をポロリと落とした
あと五年生きてたら、花嫁姿もきっと見られたのに
あと十年生きていたら、孫と遊ぶことが出来たのに
儚い夢を思い描いては、フッと溜め息をついた
「去る者は日々に疎(ウト)し」という言葉があるが
瞳への深い愛情はずっと薄まることは無いだろう
仏壇の亡き瞳に向かい手を合わせながらそう思う
目を閉じれば、お坊さんと蝉のだみ声が耳にしみ
読経と焼香と鐘の弔いに、遠い面影が潤んで漂う

一句：七回忌　徐々に哀しみ　やわらいで

※娘の詩集も50作目になりました。よろしかったら過去の詩もご一読下さい。
http://www.ainet21.com/hitomi-ant1.htm