街に出かける用事があり地下鉄に乗った。ところどころに空席はあるが吊革に掴まり立っている人もけっこういる。
向かい側の4人がけが可能な座席に3人がかけていた。そのうち二人が老夫婦である。
おばあちゃんが吊革に掴まり立っている人を見やりながらひそひそとおじいちゃんに話しかけている。おじいちゃんは頷きながらおばちゃんの方に身を寄せて一人分の空席をつくった。
断片的に聞こえてきた会話と二人の動作ら、「こっちに寄って。一人座れるから」というものだった。
胸の温まる光景である。
先日、かばん、帽子、手袋など座席に並べて仲間の座席を確保していたという老人たちの話を聞いた。どこかの電車での話である。
今日、目の前にした老夫婦とはあまりにも違いすぎる。
結局、この老夫婦の作った空席に座る人はいなかった。
だが、そのことを気にすることなく静かに会話を続ける二人の表情が穏やかで好ましかった。
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