スマホ。昔流にいえば携帯電話だが機能はパソコンに近い仕事ができる。そのうちの初歩的な機能に録音が容易にできることもある。
歩いている時に、目についたもので記憶した方がよいもの、あるいは思い付きがあった時気軽に録音してメモ代わりにしている。
このスマホに保存されている音声の中に、終末の癌の苦痛を必死に耐える妻の声があった。彼女の声を聴くのが耐えられなくて聞かずにいたものだ。今日もそれを聴こうとした時、悲痛な彼女の声を聴いてすぐ止めた。
彼女の苦しむ悲痛な声は削除し、記憶に残しておくことにする。
その時々の苦しむ声を記録しておいた日記がある。それが下記のコピーである。
「なんとかして」
「どうして私だけ痛くなるの?」
「痛い 痛い 痛い ‥‥」
「わたしどうしたらいいの」
「痛いなあどうしたらいいんだろう」
「外に連れて行って投げ捨てて」
「川にすべりこみたい背中押して」
「痛いの来ないといいなあ」
「神様痛いよう」
「助けてー」
「どうしたらいい?」
「もうだめだおうちに帰りたい」