本をすべてえり分けて、それぞれ箱に詰め、宅配業者に大学宛届けてくれるよう手配をしたら、いつの間にやら昼はかなりまわってしまっていた。俺たちは遅い昼食をとり、やれやれと一息ついたところへ、ヒマをしていたのかテツが涼香に車に乗っけて貰ってやってきた。
も、遅いっての! もっと早く来りゃ手伝わせたのに!
「そーかあ、そりゃお役にたてませんで残念。」
と、しゃあしゃあとしてやがる…。ホント、コイツには腹立つ。
でもまあ、せっかく来たんだから、定休日だなんて野暮は言わず、コーヒーくらいは入れてやることにして、皆適当に席についた。そして今日送った本や空の上のマスターの話(決して悪口じゃないよ)をしたり、世間話をしたりしていたところで……。
何の前触れもなく予告もなく、ソイツはやって来た。誰か表に人影が現れたかと思うと、定休日の今日『CLOSED』の札をスルーして、彼は――どこからか走ってでも来たのか、肩で息をして思い切りドアをあけて文字通り飛び込んできた。
「あのっ、…すいません!! …えと…」
言いたいことはあるのだろうが、あまりにテンションが高くなっているのかうまく喋れないようだ。でも、その顔をみれば彼の目的は――驚くべき目的であろうにも拘らずひと目でわかった。それくらい特徴があった――
「え?!」
「うそ…」
「なに?!」
「キミは…!!」
これを4人同時に言うとどうなるか? 答えは聞き取れない、だ。でも、そんなことはどうでもいい。彼は――めちゃくちゃ似ていた。清司に瓜二つだったのだ!!
「あのォ…」
言いかけて彼はすでに清司に気づいたようだ。あまりに驚きの展開に清司自身立ち上がって彼の方をこれ以上ないくらい驚いた顔で凝視している。
「ああ、キミがそうですね? そうだ! ホントにいたんだ! やっと会えた…!!よかったあ~!!」
そう言って彼は突然脱力してへなへなとそこへ座り込んでしまった…。
誰???
世の中には自分に似た人はそりゃいるかもしれないし、ていうか、いるだろう。他人の空似とはその事実があるからできた言葉だ。でも、これはいくらなんでも似すぎている。ここまで似ていると他人とは思えない。でも、僕にはなんの心当たりもない。でも、そっくりだ。でも…。ええっ誰??
彼はへなへなと座り込んで大きく息をついている。よほど興奮しているようで、顔も上気している。井上さんがその彼の腕を取って支えた。
「まあ、とりあえず席に座んなさいよ。なんとなく状況はわかるけど、その顔見れば。ともかく落ち着いて。深呼吸でもして。」
と、声を掛けながら彼をテーブル席に座らせた。
「ああ…すみません。つい…なんか頭の中ぐしゃぐしゃで…。あああ~。」
彼はなかなか落ち着かなかった。
でもそれは僕も同じこと。まさにドッペルゲンガーだ。こんなに自分に似た人がいるなんて。すごく変な気分だ。いったい何なんだろう? 今これから何が起こるのか、不安や期待が渦巻いてくる。
井上さんがテツさんに振り返って
「テツ、コーヒー入れてやれ。まだ少しあるはずだから。」
という間に、テツさんは心得ていたようですでに立ってカウンターの中へ向かっている。やって来た彼は大きく一深呼吸してやっと続けた。
「すみません…ちょっとまだパニクってて…。何から話したものか…シュミレーションしてたのに全部飛んじゃって…。」
「まず、キミの名前からだな。」
井上さんが誘導した。
「そ、そうですね…。オレ…いや僕はミカミセイジ、三の上に清いと司会の司、えと司るって字で三上清司です。」
「年齢、どこから来た? 何の…ていうか誰に用?」
「19歳、東京都中野区西…」
「イヤ現住所まで言わなくていいよ。」
「あ…そうですね。で、あの…。」
三上という人はやっぱりというか当然というか、僕を見て言った…。
「その、キミが松田清司…君だよね?」
「はい…そうですけど…。あの…あなたは…。」
「キミの双子の兄弟!…だと思う、いや思うんじゃなくて兄弟なんだよ!」
「………。」
誰も何のリアクションも起こさなかった。何故なら…みんなそうだろうなと思ったから、納得できたからだ。だってすごく似ているんだもの。誰も疑うはずがないくらい。
でも…。そう、でも
「でも僕は…顔を見たらすごく納得できる気はするけど、僕には双子の兄弟なんて…。」
「……知らない?」
「はい…。」
三上さんはいそいで持っていた鞄の中を開けて何かを取り出した。そしてその書類らしきものを僕に見せた。それは…
「戸籍謄本だよ。見たことない? 直江津まで取りに行ったんだけど。」
「え…?」
戸籍謄本…。自分のものだけなら見たことがあるかもしれないけど、実は家族全員のものは見たことがなかった。ていうか、今は僕一人しかいない。でも、こういう公文書なんてまったく疎いので…ていうか必要がないから見たことなかった。彼が示したところに
『長男 清司』途中飛ばして『養子縁組により除籍』
と書かれている…!
「ええっ?!」
ここでようやく僕は驚きの声を上げた。傍にいた涼香さんも大きな目をさらに大きく開いて驚いた顔で僕たち二人を交互に見た。
「へええ? そんなことってあるんだ!! 清司君知らなかったのね?! なんかすごい!」
「そ…それじゃ…あなたは本当に僕の?」
信じられない!! いや、真実なのだろう、いやいや真実なんだけど、そんなの急に信じられないよ!! 本当なの?!
三上さん…いや、多分僕の兄と思しき人は続けて言った。
「そっか、知らなかったのか…。間違いない、オレたちは兄弟なんだ…。うわあ~、オレもびっくりした…ホント、そっくりだよな~。当たり前なんだけどこの目で確かめるまでは半信半疑でさ。ああでもホントだったんだ! やっと会えた~!! 長かったぜえ、この1年、ずーっと探してたんだぞ、ああマジよかったあ…。」
そう言って彼はまた脱力したようにテーブルにぐったり伏せた。
涼香さんは、テツさんの入れたコーヒーを持ってきて、テーブルに置きながら感心したようにしみじみつぶやいた。
「清司君に確かにそっくりだけど…キャラはなんだか違うみたいね…。」
それは僕もちょっと思った…。
・・・TO BE CONNTINUED.
も、遅いっての! もっと早く来りゃ手伝わせたのに!
「そーかあ、そりゃお役にたてませんで残念。」
と、しゃあしゃあとしてやがる…。ホント、コイツには腹立つ。
でもまあ、せっかく来たんだから、定休日だなんて野暮は言わず、コーヒーくらいは入れてやることにして、皆適当に席についた。そして今日送った本や空の上のマスターの話(決して悪口じゃないよ)をしたり、世間話をしたりしていたところで……。
何の前触れもなく予告もなく、ソイツはやって来た。誰か表に人影が現れたかと思うと、定休日の今日『CLOSED』の札をスルーして、彼は――どこからか走ってでも来たのか、肩で息をして思い切りドアをあけて文字通り飛び込んできた。
「あのっ、…すいません!! …えと…」
言いたいことはあるのだろうが、あまりにテンションが高くなっているのかうまく喋れないようだ。でも、その顔をみれば彼の目的は――驚くべき目的であろうにも拘らずひと目でわかった。それくらい特徴があった――
「え?!」
「うそ…」
「なに?!」
「キミは…!!」
これを4人同時に言うとどうなるか? 答えは聞き取れない、だ。でも、そんなことはどうでもいい。彼は――めちゃくちゃ似ていた。清司に瓜二つだったのだ!!
「あのォ…」
言いかけて彼はすでに清司に気づいたようだ。あまりに驚きの展開に清司自身立ち上がって彼の方をこれ以上ないくらい驚いた顔で凝視している。
「ああ、キミがそうですね? そうだ! ホントにいたんだ! やっと会えた…!!よかったあ~!!」
そう言って彼は突然脱力してへなへなとそこへ座り込んでしまった…。
誰???
世の中には自分に似た人はそりゃいるかもしれないし、ていうか、いるだろう。他人の空似とはその事実があるからできた言葉だ。でも、これはいくらなんでも似すぎている。ここまで似ていると他人とは思えない。でも、僕にはなんの心当たりもない。でも、そっくりだ。でも…。ええっ誰??
彼はへなへなと座り込んで大きく息をついている。よほど興奮しているようで、顔も上気している。井上さんがその彼の腕を取って支えた。
「まあ、とりあえず席に座んなさいよ。なんとなく状況はわかるけど、その顔見れば。ともかく落ち着いて。深呼吸でもして。」
と、声を掛けながら彼をテーブル席に座らせた。
「ああ…すみません。つい…なんか頭の中ぐしゃぐしゃで…。あああ~。」
彼はなかなか落ち着かなかった。
でもそれは僕も同じこと。まさにドッペルゲンガーだ。こんなに自分に似た人がいるなんて。すごく変な気分だ。いったい何なんだろう? 今これから何が起こるのか、不安や期待が渦巻いてくる。
井上さんがテツさんに振り返って
「テツ、コーヒー入れてやれ。まだ少しあるはずだから。」
という間に、テツさんは心得ていたようですでに立ってカウンターの中へ向かっている。やって来た彼は大きく一深呼吸してやっと続けた。
「すみません…ちょっとまだパニクってて…。何から話したものか…シュミレーションしてたのに全部飛んじゃって…。」
「まず、キミの名前からだな。」
井上さんが誘導した。
「そ、そうですね…。オレ…いや僕はミカミセイジ、三の上に清いと司会の司、えと司るって字で三上清司です。」
「年齢、どこから来た? 何の…ていうか誰に用?」
「19歳、東京都中野区西…」
「イヤ現住所まで言わなくていいよ。」
「あ…そうですね。で、あの…。」
三上という人はやっぱりというか当然というか、僕を見て言った…。
「その、キミが松田清司…君だよね?」
「はい…そうですけど…。あの…あなたは…。」
「キミの双子の兄弟!…だと思う、いや思うんじゃなくて兄弟なんだよ!」
「………。」
誰も何のリアクションも起こさなかった。何故なら…みんなそうだろうなと思ったから、納得できたからだ。だってすごく似ているんだもの。誰も疑うはずがないくらい。
でも…。そう、でも
「でも僕は…顔を見たらすごく納得できる気はするけど、僕には双子の兄弟なんて…。」
「……知らない?」
「はい…。」
三上さんはいそいで持っていた鞄の中を開けて何かを取り出した。そしてその書類らしきものを僕に見せた。それは…
「戸籍謄本だよ。見たことない? 直江津まで取りに行ったんだけど。」
「え…?」
戸籍謄本…。自分のものだけなら見たことがあるかもしれないけど、実は家族全員のものは見たことがなかった。ていうか、今は僕一人しかいない。でも、こういう公文書なんてまったく疎いので…ていうか必要がないから見たことなかった。彼が示したところに
『長男 清司』途中飛ばして『養子縁組により除籍』
と書かれている…!
「ええっ?!」
ここでようやく僕は驚きの声を上げた。傍にいた涼香さんも大きな目をさらに大きく開いて驚いた顔で僕たち二人を交互に見た。
「へええ? そんなことってあるんだ!! 清司君知らなかったのね?! なんかすごい!」
「そ…それじゃ…あなたは本当に僕の?」
信じられない!! いや、真実なのだろう、いやいや真実なんだけど、そんなの急に信じられないよ!! 本当なの?!
三上さん…いや、多分僕の兄と思しき人は続けて言った。
「そっか、知らなかったのか…。間違いない、オレたちは兄弟なんだ…。うわあ~、オレもびっくりした…ホント、そっくりだよな~。当たり前なんだけどこの目で確かめるまでは半信半疑でさ。ああでもホントだったんだ! やっと会えた~!! 長かったぜえ、この1年、ずーっと探してたんだぞ、ああマジよかったあ…。」
そう言って彼はまた脱力したようにテーブルにぐったり伏せた。
涼香さんは、テツさんの入れたコーヒーを持ってきて、テーブルに置きながら感心したようにしみじみつぶやいた。
「清司君に確かにそっくりだけど…キャラはなんだか違うみたいね…。」
それは僕もちょっと思った…。
・・・TO BE CONNTINUED.