ちゃちゃ・ざ・わぁるど

日記と言うよりは”自分の中身”の記録です。
両親の闘病・介護顛末記、やめられないマンガのお話、創作小説などなど。

KAIGO.介護 巻の二十九 踏まれたり蹴られたり

2010年07月16日 15時07分09秒 | 介護な日々
2008年8月11日(月)

その日は父のSセンター通院の日。
OS病院は予約をとっていても結構待たされることが多いのですが
Sセンターはあまり待たされません。だから父はSセンターがごひいきでした。
外来診察はおなじみ熱血T先生。
・・・熱血と書いていますが、見た目は全然暑苦しくなく、
むしろ淡々と、クールな口調で話をする先生です。
でもって話が長い。念を押す。あらゆるケースを想定して逐一説明する。
気がつくと長時間経っている・・・。さすがに外来では手短にお話されますが。
この日は「腎臓内科につながりを持ってください」とのことでした。

年をとるとどうしてもあちこち老化して機能が低下していきます。
腎臓も例に漏れず、だんだん衰えていきます。
心臓に基礎疾患があり、心不全がちの人はなおさら腎不全も起こしやすいそうです。
透析については(も?)何の知識もないのですが、
いきなり行って透析を受けられるものではないのですね。
基礎的な診察はもちろん、透析を行うための何か準備?がいるそうなのです。
そのためにはちゃんと腎臓内科で処置してもらっておいて、
実際の透析は最寄の透析センターですればよいらしく・・・。
父にも透析の可能性がでてきましたが、ここSセンターには腎臓内科がないので、
紹介状を持って大きな病院へ行きなさいといわれたのでした。

他の大きな病院というと・・・まあ、ホントにたくさんあるのですが、
ここは勝手知ったるOS病院に行くべきでしょう、母がずうっとお世話になっているし、
あそこなら私も受診システムをよく知っています。
それで、OS病院の腎臓内科宛紹介状をいただいて行くことになりました。

その頃、父はよく足がむくんでいました。
むくみがあるということは腎臓の働きが悪いということですが、
基本的にむくみは痛いものではありません。が、父は足の痛みを訴えていました。
高齢だと毛細血管も弱くなり、ちょっとぶつけただけでも内出血することがよくあります。
そのせいか痛いという足にも内出血と思しき紫色のあざができていました。
そこが痛むのかと当初は考えていました。
しかし、実はそうではありませんでした。


2008年8月18日(月)

この日は父の介護認定の調査の日。
私たちは立ち会いませんでしたが、いてくださったヘルパーKさんによると
父は声がなかなか出ず、ヘルパーさんが代わっていろいろ様子を伝えてくださったとか。
ケアマネTさんの見立てでも、要介護になりそうだということでした。
とにかくこちらは結果待ちということで・・・


2008年8月19日(火)

紹介状を持って、父は介護タクシーを使ってOS病院へ行きました。
私は病院に直行して合流し、腎臓内科に向かいました。
初診受付でカルテを作ってもらい、腎臓内科受付へ、
更に初期検査で検査室へ、それから待合へ・・・ところがこの日はドクターの都合で
いつもなら3階なのに4階へ上がれといわれ・・・
2階、3階、4階とまわり、ようやく診ていただいたところが・・・

「これくらいならまだ透析にはかなり余裕がある、
透析は一度受けるともうなしでは生きられなくなるので、自力でいけるところまで行った方がよい、
この程度ならSセンターのT医師(多少ご存知らしい)なら十分診られるはず。」
と、差し戻されてしまいました。

腎臓内科のドクターによりますと、
「本当は入院してしばらく治療したほうが早く改善される状態にあるし、
一昔前ならすぐ入院するよう勧めたけれど、
いかんせんここも医師不足で、もっと重度の人を優先させざるを得ない。
あんたはまだそこまで行ってないので、今まで通りT先生に診てもらいなさい。」
・・・ということでした。だから通院の必要もないし、薬も出さない、と・・・。
しかもなぜか怒ったようにおっしゃるのです。
「これくらいで来るな、T医師はなんで寄越したんだ?」
とでもいいたそうな感じでした・・・なんやねん、いったい・・・。

ところがこれではすみませんでした。
「腎臓はいいけど、この足はちょっとまずい。」
「・・・むくみではないんですか?」
「あのねえ、腎臓が悪くてむくむのは左右両足なるの。左だけでしょ?
これはむくんでるんやないよ、他の病気や。皮膚科へは行ったの?
SセンターのT先生はなんて言いはったの?」
「あの・・・この前の診察の時はこんなにひどくなかったので・・・。」
「最近? こんなになってからT先生に診て貰った?」
「いいえ・・・むくみやったらこちらに来ることになってたので、こちらで聞こうと・・・。」
「・・・主治医は誰? T先生やろ? そしたらなにかあったらまず主治医に聞きなさい!
ふだんは心臓で診てもろてても、主治医は全体の様子診てるんやから!
ここでは心臓のことまでわからへんのでね、心臓診ながら他のところも診て、
専門医に回したほうがいいと思ったらまわすんやから、まずT先生に診てもらわなダメよ?!
こんなん、腎臓と関係ない、ここへ来てもしゃあないやないの。
これは皮膚のことやから皮膚科行きなさい。今ココの皮膚科聞いてみるから。
いまから診て貰えるか聞くからね!! ちゃんと診察受けてきなさい!
その後、T先生へ返事書くからね・・・まずあっち行って診てもらいなさい!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・

むっちゃ叱られました。患者の心配をしてくださっているのはわかるけど・・

そんな言い方、そんな怒り方せんでええやないの!
こっちはずぶの素人やで? 足の腫れがむくみか他の病気か、
わからへんから病院来とるんやないかーーー!!
T先生に言われたからきたんやないかあーーー!!!
皮膚科のことは聞いてへんわあ! なんじゃその何しに来たって態度はあ!
それでなくともいろいろ心配やのに、患者や家族の気持ちがわからんのかあ!
こんの、××医者があああーーーー!!!
めっちゃムカツキーーーー!!!!!!!!

・・・とは、とてもいえませんで恐縮してハイとスミマセンを繰り返しました。

そして、院内紹介状をもらって皮膚科へ行きましたが、そこでまた叱られました。

「なんでこんななるまでほっといたの?!
これは蜂窩織炎(ほうかしきえん)てゆうて、足のちょっとした傷から
ばい菌がはいって皮膚の下の深いところで炎症を起こしてるんですわ。
それもこんな、色変ってるでしょ? そら痛いわ。我慢したって良くならんでしょ。
年よりは抵抗力落ちてるからなりやすいし、治りも悪いんや。
こんなん安静にして抗生剤の点滴とかせんとあかん。
うちは? あんた娘さん? 同居してるの? 誰もいてないの?
ほな、入院しなさい。うちで安静にできるんやったらええけど
看る人がおらんのやったら静かに寝てられへんのでしょ? ほな入院せなあかん。
・・・・・・・・入院したくない?(と、父は言った・・・)
そんなことしてたら敗血症起こしますよ? からだじゅうに毒が回って敗血症起こしたら
命にかかわりますよ? いいんですか?! 責任持ちませんよ?
近所に皮膚科がある? そこで診てもらうんやね? 絶対行きなさいよ!
責任はそこがもってくれるんですね?!いいですか、私は入院を勧めましたからね!
決めるのは患者さんやけど、私は勧めましたよ。

私が言いたいのは誰が責任を持てるのかと言うことです。」

・・・・・
正論です。まったくもっておっしゃるとおり・・・。

なのに、こんなに追い詰められたキモチになるのはなんでなん?
なんでこんなにボロカスに叱咤されなならんのやろう?
うちらそんなに無責任な看護してるんやろか?
病気治しに、あるいは症状を少しでも和らげるために
専門家に診てもらいながら、現実の生活との折り合いも考えながら
それでも出来ることをがんばってやっていこうとしてるつもりやのに

なんっでこないクソミソに怒られるんや?!


父は母をほおって置けなくて、自宅近くの医療機関で治療しながら
スローライフ目指してるだけやのに。

それぞれで紹介状をもらって、釈然としないキモチで
てか、めっちゃムカツキ疲れただけの診療でOS病院を後にしました。

・・・「何しに来た?」?

・・・・何しに行ったんか聞きたいのはこっちのほうじゃあああ~!!


以降、ケッキョク父のことではOS病院にはまったく行きませんでした。
とんだ"災難”でしたわ・・・
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創作小説 SUNSET CHAPTER 4  PART.1

2010年07月16日 11時10分22秒 | 創作小品
 とある定休日。
俺は数年来ほったらかしにしてあった本棚の整理をすることにした。二階の三つの部屋のうち、やや広い一部屋は俺が使っている。ほかの二部屋のうち一つは清司に使わせ、もう一つは書斎のようになっている。その書斎のような部屋にある大きな本棚にはあらゆるジャンルの本がぎっしり詰まっている。もちろん…俺が買ったものではない。すべて先代のマスターが遺したものだ。
 マスターは本が好きだった。天涯孤独の身の上だったから、その寂しさを読書で紛らわせていたらしい。が、論語読みの論語知らずという言葉があるが、マスターはおおよそ読書が趣味の元文学青年風では全然なく、多くの書物から得られたであろう叡智がどこにあるのか良くわからない人だった。癇癪持ちで寂しがり屋で頑固で優しい…一言で言えば不器用なひとだった。俺も黙っていない方だったから、良く喧嘩したっけ。本気で怒鳴りあったけど、それだけ本気で本音でぶつかれたといえなくもない。ともかく俺がここへ来る前はずっと本と過ごしていたようだ。
 でも、残念ながら俺は本はあまり読まない。読んだ方がいいんだろうな…とは思うのだけれど、これは趣味の問題だから致し方ない。特にマスターの蔵書は本人の人柄とイマイチマッチしない小難しい本が多いのだ。
 でも、ハードカバーの全集なども含むそれらの本を、読まないからと言って捨ててしまうのも気が引ける。かといって、古本屋は売れ筋でないとなかなか引き取ってはくれない。それでついいつまでもそのままになっていたのだけれど…。第一一人でこれを片すのは面倒くさい。大変だ。
 けれども今は手伝わせる人間がいる! 使わない手はない。というわけで一気に片付けることにしたのだ。そしてふと思いついてテツに聞いてもらったら、大学の図書館で引き取ってくれることがわかった。公立の図書館は寄贈するのも何かと面倒くさいようだが、大学はそこまでこだわらず、ましてやテツが間に入っているので手続きも特にややこしくなくもらってくれることになった。ほとんど読まれることもなくここで宝の持ち腐れになるよりは余程いい。だったら思い立った時にやってしまおう。…まあ、正直イマドキの大学生がどこまでこういうハード本を読んでくれるのかちょっと疑問ではあるけれど、それでもここにあるよりはマシだろう。
 というわけで清司に手伝わせて種類ごとに箱に詰めたり、どうしても処分せざるを得ないものは紐でくくったりしていたのだが…。
 そこで清司が何かを見つけて俺を呼んだ。
「井上さん、これ…、そのマスターさん一家ですか? 写真が挟まってたんですけど…。」
「どれ…?」
のぞいてみると家族写真らしいものだ。夫婦と思しき二人と、その子どもと思しき15歳くらいの少年とが神妙な顔で写っている。
「へえ、そんな写真があったのか。そうだな…。随分昔のみたいだけど、このオッサンは確かにマスターだよ。ハハッ、まだ髪がフッサフサじゃん。」
そう、俺の知ってるマスターは禿まで行かないがだいぶ危うかったもんなあ。
「へえ…。じゃあ、この人が奥さんで、これは息子さん?」
「たぶんね。俺は会ったことないけど、そうなんだろう。」
その背景はこの店の表のようだ。店を開いた時にでも撮ったのだろうか…。
 そこで清司は怪訝そうな顔で尋ねてきた。
「マスターさんは亡くなられたんですよね、もう。じゃあ、この奥さんと息子さんは今どこにいらっしゃるんですか?」
これは当然の疑問だろう。この店の前で撮った写真なのに、その主たちはここには一人もいない。主人は死んだが、なら夫人と息子はなぜここを去ったのか。そして何故赤の他人の俺が今ここに住んでいるのか…。
 俺はちょっと息をついてから答えた。
「もういない。マスターより先に、この世からいなくなったそうだ…。」
「えっ……?!」
「まあ、マスターにもいろいろあったってことさ。順序が真逆だったとよ。まず息子が死んで、次には奥さんが…。俺がここに来るより随分前だったそうだ。だからマスターは天涯孤独だったって話だ。」
「そうなんですか…。でもそれで何故井上さんが跡継ぎみたいになってるんですか?」
「まあ…紹介されてな。住み込みで働いてくれる奴がいないかってことで、俺が…結局気に入られたんだろうな。相続人がいなくて国庫にすべて没収されるくらいなら、自分がいいと思った奴に遺してやるって言ってさ…。おかげで俺は大助かりなんだが。」
俺はそう答えて笑った。これはホントウの話。まったくもって俺はラッキーだったというほかはない。
 そして当然次の追及先は俺のほうに来た。
「あの…じゃあ、井上さんの家族っていうのも…その…やっぱりもう。」
「イヤ…いるっちゃいるがな…。このトシだ、独立しててもおかしくないだろ?」
「あ、そうか…。そりゃそうですね。」
と、納得の様子。
「そうですよね…。僕、つい一人で暮らしている人はみんな家族はもういないと思い込んじゃうクセがあって…。無意識に。」
「おいおい、なにそれ。言っとくけどテツも涼香も一人暮らしだぜ。テツは独立してウチでてるし、涼香は親元はなれて通学のために下宿してるけど、実際そういう奴のほうが多いと思うよ? 年寄りの一人暮らしは別として。」
「ですよね…。」
 清司は自分の考えの偏りに気づいて恥ずかしそうに頭をかいた。しかしそれは逆に自身が一人きりだからそう思ってしまったということを表してはいないだろうか? 俺は何も聞いていないけど、聞く気も別にないけど、それはそう思える。そして、自分だけが一人だと気づいて何だか寂しくも感じているんじゃないだろうか。
 でも、俺の方は清司を追及はせずに、本の整理を続けた。清司も気を取り直して
「あ、それでこの写真どうします?」
「ああ…一応俺が持っとくわ。結局一番最後にマスターの傍にいたの俺だしな…。そういやマスターの写真ってなかったからな。アルバムも一冊も…。」
「え? 亡くなった奥さんや息子さんの思い出の写真とか他になかったんですか? 先に亡くなられたのなら絶対とっておきたいのが遺族の気持ちなのに…。写真嫌いだったんですか?」
「………。」
俺は答えなかった。今も店に来てくれる昔からの常連客に聞いたことがあった――意地っ張りのマスターは息子さんの亡くなったときも奥さんが亡くなった時も、それぞれの写真すべてお棺の中に入れてしまってたとか何とか…。普通なら大事に取っておきたいであろう物を、マスターは意地で「こんなものがなくても俺は平気だ」と言い張ってたらしい。良くわからないが、それが弱みを見せたくない頑固オヤジの意地だったのだろう。それは彼を知らない人間には多分理解できない。
 清司は俺が何も言わなかったので言葉を継いだ。
「僕なら…絶対大事にするけどな。ていうかしているけれど…。」
やっぱり…コイツも今は一人きり…なんだな。その写真を大事にしているというコイツの家族は、もういないのか。いればそこへ帰れるはずだもんな…。
 いても帰れない奴もいるけどな…俺みたいに…。

 ところがこの後とんでもないことが起きた。その家族云々にかかわることで、思いもかけない大きなことが起こったのだ。

・・・TO BE CONNTINUED.
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