ちゃちゃ・ざ・わぁるど

日記と言うよりは”自分の中身”の記録です。
両親の闘病・介護顛末記、やめられないマンガのお話、創作小説などなど。

創作小説 SUNSET ORANGE EXTRA CHAPTER PART.5

2014年10月27日 06時29分52秒 | 創作小品
みゆ希姉は顔を上げて、オレから少し離れて続けた。
「今日は確かにホントに辛かったんだよ・・・でも、それはもういいの・・・。ただね・・・ただ・・・こんな時ユウくんならそばにいてくれるかな、あたしのこと好きだって思ってくれてるんだから、いてもらっちゃえばいいんだよねって・・・勝手に思って・・・ユウくんの気持ちを利用しようって思ったんだ。ちょっと自作自演? そして思った通りになっちゃった。要するにユウくんを・・・彼の代わりにしたの。それにさ・・・ユウくんてばすごく紳士的じゃない・・・。いい子だね、ホントに、ユウくんは・・・。それが嬉しくて・・・でもなんか申し訳なくて・・・。」
「イヤ、いいんだよ。オレでもみゆ希姉の役に立ったら良かったし。」
「・・・ごめんね・・・。」
「いいってば。まあ、何とか大丈夫そうだね。大丈夫ならオレ、帰るわ。」
「・・・帰るの?」
「だって一人暮らしの女性の部屋にオレみたいな怪しい男がいたらまずいでしょ。」
「ユウくんは怪しくなんかないよ。っていうか・・・いてよ・・このまま。」
て・・・ナニ言い出すの、だよね。当然オレはビックリした。
「え? イヤ、やっぱまずいでしょ、それ。」
「・・・だから言ったでしょ。・・・いてもらっちゃおうと思ったんだって。彼の代わりなんて言ったけど・・・違うん
だよ・・・ホントは・・・。あたし、あたしもユウくんのこと好きだよ。」
「・・・!!」
「いつの間にか・・・あたしも惚れちゃってたんだよ。ユウくんのこと愛してるよ、本気で・・・。」
「・・・本気?」
「本気。」
「マジで?」
「大マジ!!」
「・・・あの人のことは・・・いいのかよ・・・。」
「帰って来ない男のことなんか待つことないって言ったの、誰よ?」
「・・・イヤ、オレですけど・・・。」
「あの時はムキになっていろいろ言い返したけど・・・でもね、そんな風に真剣にあたしに意見してくれるユウくんのこと考えてたらさ・・・ユウくんの言葉を考えてたらさ・・・もっともだって思うようになっちゃって。それまで面と向かってそんな風に言う人いなかったの。たいていはあたりさわりなく、考えもせず支持してくれる人が多かった。ああ、マドカは違うよ、彼女は真剣に考えて、結果あたしの考えに同調してくれてるの。でも、ユウくんみたいに真っ向から違う意見を言ってくれると、考え直すきっかけにもなったんだ。だから・・・。だからそばにいて。」
「みゆ希姉・・・。」

 そんな風にみゆ希姉に切なげに言われて、こんなオレが断れたと思う? 簡単に乗せられちゃたよ・・・。今度はオレの方からみゆ希姉を抱きしめて・・・で、気がついたら・・・気が・・・ついたら・・・。

 だああ――――――っ!! イヤイヤイヤ! やっぱ言わなきゃダメ?!・・・つか・・・ナニよその顔・・・。
ああ~!!!!!! だから言いたくなかったんだってば!! えー、そうですよ!! オレはみゆ希姉に手を出しましたあ!! 懺悔します!! でも、頼むからみゆ希姉のあの人――旦那さんには黙っといてね・・・。言えるわけないでしょって? そりゃそうだよねえ!!・・・でもね、その時はそういう状況だったんだからフリンだなんて言わないでね。オレはともかくみゆ希姉にフリンした女なんて烙印は押さないであげて!! やっぱ酔った勢いもあったと思うし、仕方なかったんだよ・・・。その時は・・・あの人はどこにいるかわかんなかったんだし、もとより結婚してたわけでもなかったんだし・・・みゆ希姉に聞いたところじゃ恋人だったわけでもないそうだし・・・。わかってますよ、今更手なんか出しませんよ。それは絶対、神かけて誓いますとも。二度と手は出しませんって。
 でも・・・その頃はね・・・。オレもバカだったよね・・・。すみません、一度の過ち――過ちですか?これ・・・真面目だったんだよ、オレもみゆ希姉も。ホントに真剣だったの・・・。そして一度じゃないです。・・・しばらくそういう関係でした。ああ・・・どこまで暴露? どんだけぶっちゃけだよ・・・。もう、この際喋っちゃうけどさ・・・。でも、本当に真面目に真面目なつきあいでした、気持ちは真剣だったのよ・・・本当に・・・。もちろんこれこそ秘密の関係だったよ。マドカさんは・・・わかんないな、あの人は気づいてたかもね。指摘はされなかったけどね・・・。だって、オレ達の関係が長続きするとはマドカさん、思ってなかっただろうから・・・実際その通りだったし。すぐ切れるってわかってたからわざわざ意見しなかったんじゃないかな。そう、半年くらいだよ、そういうつきあいしてたのは。半年ほどズルズルと・・・ね。

 でもその半年ほどたった頃にね、オレ、ちょっと体調崩して・・・っていうか、病状が一時的に悪化して倒れちゃったの。何年かに一度はやっちゃうのよ――オレってちょっと調子いいとすぐ油断しちゃうからさ・・・ていうか・・・その頃は逆に無理してたのかもね・・・。いろいろ思うところがあってさ・・・。
 病院に放り込まれて、マドカさんから聞いてみゆ希姉が見舞ってくれたんだけど・・・。
 あ、この時は百合恵さんじゃなくマネジャーが手配したから病室も普通の個室だったよ。百合恵さんに任せると特別室になっちゃうんだよね~。参るよ、あれは。・・・
 みゆ希姉はオレの病気のことも知ってはいたけど、実際悪くなったところ見せちゃったのはその時が初めてだった。すっごく心配してくれたんだけどね・・・ああ、君も気持ちわかるよね、みゆ希姉の心配な気持ち・・・。それに・・・ああ・・・そうだよ、オレ、同じようなこと言ったの・・・病室のベッドの上で・・・ね。
「みゆ希姉、ごめんね・・・。オレ、あなたに甘え過ぎちゃった。」
って・・・。

 「なに? 甘え過ぎちゃったって・・・そんなことないよ?」
「あるよ。・・・わかってたのにね、オレ・・・このからだだから誰とも一緒になんないって決めてるのに、つい・・・みゆ希姉に悪いことしちゃったね。」
「悪くなんかないよ、あたしは本当に」
「みゆ希姉がオレを思ってくれてるのはよくわかってる、けど、やっぱ二番目でしょ?」
「・・・ユウくん・・・。」
「オレ、わかってたんだよ、やっぱりオレはみゆ希姉にとって二番目なんだなってこと。だって・・・じゃなけりゃそんな切ない目はしないよね? オレに抱かれてても・・・イヤじゃないのはわかってたけど、幸せってわけでもなかったでしょ?」
「そ・・・そんなこと・・・」
「なくはなかったよね。オレも、ホント言うと気づいてたの。でも、気づかないフリしてた。何故って、オレがみゆ希姉にすがっていたかったから・・・わかっていても・・・誰とも一緒になんないって決めてても、みゆ希姉の心はいつもあの人に向いてるってわかってても!! それでも・・・すがっていたかったんだ・・・。いっときでいい、今しばらくの間だけでいいって・・・そう思いながらね。」
「ユウくん・・・。」
「もしかしたらみゆ希姉もあの人のこと、振り切ってみようとしたんじゃないの? それで思い切ってオレに向いてみたんじゃないの? 試しに、とまでは言わないけど。それに、もしかしたら・・・今の自分が幸せだよって思ってもらえる方があの人も喜んでくれるんじゃないか・・・とかも・・・考えちゃったんじゃないの? でも、やっぱり振り切れやしないんだよね。」
「・・・・・・。」
「・・・図星かな・・・。」
みゆ希姉はしばらくうつむいてじっと黙り込んでいたけど、やがてポツリと答えたよ。
「・・・・・・ごめん・・・。」
「謝らないでよ。別に咎めてなんかいないよ。」
「だって・・・あたし・・・結局はユウくんの思いを裏切ってたんだもの。バカだね・・・同時に彼のことも裏切っちゃって」
「裏切ってなんかいないでしょ! みゆ希姉もマジメだねえ~。気持ちは一途にあの人の方向いてたんだからさ、裏切ってなんかいないって。」
「でも、それじゃ余計ユウくんを裏切ったことになるよ・・・。」
「それもないって。オレの思いにも応えてくれようとしたじゃないのさ。心や思いはイチ方向にしか向けられないもんじゃないとオレは思うよ。八方美人て言葉があるでしょ。何人いてもその人数分だけ愛せるなんて実に愛情深いことじゃないの。だからって不倫や浮気をどんどんしなさいなんて言うつもりもないけどね。そこは節度と規律は守んなきゃ、だけど。とにかくみゆ希姉、自分を責めるのだけはやめてね。悪いとしたらオレも同罪だよ・・・。ていうか、あの人に会えないみゆ希姉の寂しさに付け込んだオレが悪かったよね、一緒になる気もないくせにさ。・・・ごめんね、みゆ希姉。オレが一番バカでした。」
「何言ってんのよ・・・。・・・ううん・・・そだね、ユウくんが一番バカだよ・・・なんで全部被るのよ・・・。だから余計切ないんじゃないの・・・。」
 みゆ希姉はそうつぶやいて目を拭った。でも、その指先から涙が伝い落ちるのをオレは見ちゃった。あ~あ・・・とうとうオレがみゆ希姉を泣かせちゃったよ・・・。もう、サイテーだよね・・・。



・・・TO BE CONTINUED.
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今更ですが「何回見てもラピュタはいい」のは何故か?

2014年10月26日 15時44分26秒 | コミック・アニメ
「何回見てもラピュタはいい」というのは
とある回の「銀魂」のサブタイで土方さんのセリフですが・・・


「天空の城 ラピュタ」が公開されたのは1986年。
もはや30年近くも前になろうと言うのに、
内容的にも技術的にも全く色あせず・・・CGなんて全くない時代ですよ、
彩色なんて人が手で一枚一枚塗っていた時代ですよ。

スタジオジブリの制作作品としては記念すべき第一作にして
宮崎駿監督モノとしても初の原作のない完全オリジナルストーリー。


ファンの間では有名な話ですが
TVアニメ版「ルパン三世」セカンドシリーズに本作品のプロトタイプ的なお話があります。
同シリーズはファーストルパンと違って宮崎監督は表面的にはノータッチですが
第145話「死の翼アルバトロス」と
最終話(155話)「さらば愛しきルパンよ」でこっそり?脚本・演出されています。
その時の名義は「照樹務」。これは「テレコム」と読みまして
時のアニメ制作会社「テレコムアニメーションフィルム」からとったもの。
ちなみに今テレコムは
「トムス・エンタテインメント(≒旧東京ムービー新社)」社の子会社です。

その最終話に出てくるロボット・ラムダ。




ほぼ同じデザインですね~。

ラピュタに出てくる兵隊ロボットと。

宮崎監督作品にはこういうちょっとしたスピンオフがちょくちょくあって面白い。


さて、ラピュタは何で何回見てもいいのでしょう?
ルパン三世のようなコンゲーム(手っ取り早く言えば義賊もの)の要素も若干含めつつ
しかしルパンのようなスーパーヒーローもヒロインも出てこない。
相手は国家の軍隊という巨大組織であるにも関わらず
主人公たちは普通の少年少女です。
主人公のパズーは活発で根性もあるけれど普通に普通の少年で
ヒロイン・シータには特殊能力があるといえばあるけれど、
本人はごく普通に育った普通の女の子。攻撃力はほぼありません。

でも、このフッツーの少年少女が一生懸命今やれる精一杯のことをして
実は世界的な危機だったかもしれない状況を打ち崩す。
海賊ドーラ一家も、初めこそ適役みたいに登場しますが
この憎めない海賊たちも中盤から頼もしい大活躍を見せてくれる。

また、初めて見た時は完全に敵役であるムスカは
本当に憎そいやっちゃなあ~!!と真剣にムカつきました(笑)

カリオストロ伯爵よりよほどヒデエ奴ですよ。
でも、つまりはどのキャラも芯があって逞しいってことでしょうか。

ていうか、イマドキの言い方をすれば、みんなオトコマエですわ。

特にさすが主人公、パズーは少年だけど実にオトコマエです。
初めからシータを守ろうと当たり前のように決心して体を張ります。
ちょっとブレたこともありますが
その時はドーラに張り倒されて目を覚ます。
このドーラがまたオトコマエですね。おばはんやけど。
そして息子どもはマザコンですが。

パズーにさりげなく、あるいは無意識に人生を説いていたり
シータとの会話をこっそり聞いた時はまるで慈母のごとく。
一度信じたらパズーのことも決して子ども扱いしない。
いやあ、オトコマエずぎるっしょ。

こういう不朽の名作になるものってストーリーももちろんいいのですが
何と言ってもキャラが立ってて、非常に魅力的です。
メインキャラはもちろん、ヒール、ワキ、すべてが。


今・・・ていうか実はずっとかもしれませんが
世界情勢は揺らぎっぱなしです。
すべてが大きな力を求めているように思えます。
どんな小さな社会でも、世界全体を見渡しても。
力がすべて、みたいな考えは今に始まったことではなく
おそらく有史以来、いや、それ以前からもずっとあったのでしょう。
生物は生きながらえるには強くあらねばならない。
サガでありカルマでもあるから仕方がないのかもしれません。
でも、強すぎる力、大きすぎる力は自らを滅ぼすことも自明の理。
その普遍的なテーマは古今東西変わらず存在しているモノなのでしょう。
古くて新しい、いつも考えなければならないテーマだけど
そこにかかわる人類、否、生きとし生けるものの大半は
特殊能力もスゴイ技もない「普通」の生物です。

普通の、どこにでもいる少年が、ふとしたことで関わる世界。
とてつもない夢を叶えようとしたわけではなく、
ただ出会った少女を助け、父が間違っていなかったことを確かめたい。
そのために一生懸命頑張っただけの、非日常的にみえて実は日常的なその行動は
まさに普遍のもの、ごく普通の行動ではないでしょうか。

だから、何回見ても納得してしまう。
同じ目線で見れる。


どこかで読んだ記事に、人気のカギはここにあるという話がありました。
曰くに
「少年たちはいつも、ある日自分のところに、
少女が空から舞い降りてくるのを待っているものだ。」と。
これも意味深な言葉ですね~。

うん。何回見てもラピュタはいい。


それにしても、
宮崎監督はよほど空を飛ぶお姫様が好きなんだなあ~、と
当時は思ったことでしたwww

空飛ぶお姫様代表???ナウシカ
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創作小説 SUNSET ORANGE EXTRA CHAPTER PART.4

2014年10月20日 06時14分24秒 | 創作小品
「ユウ!!」
「マドカさんはちょっと黙っててよ。だってそれじゃあんまりじゃないの、みゆ希姉のこと大事に思ってるなら何年もほっとくなんてオレには考えられない。みゆ希姉も何で何年も我慢してんのよ。」
「我慢じゃないよ・・・何年だろうと思いに時間は関係ないし、あたしが納得していればいい問題だから。」
「・・・そんなことしててみゆ希姉、幸せなの? もし待ちぼうけだけくわされて終わったんじゃ不幸じゃないのさ。」
「だとしても・・・ずっと待ち続けて幸せをつかむか不幸になるかを決めるのはあたしであってユウくんじゃないんだよ。」
「・・・・・・! でも・・・。」
「ユウ、もうやめろ。私はみゆ希は偉いと思うぞ・・・。そんなに一人の人を思い続けられるなんて凄い。私はこらえ性がないから尊敬するよ、皮肉じゃないぞ、本気でそう思うよ。それがみゆ希の選んだ幸せと言うわけさ。それに、思い続ければきっといつか届く。私は本気でそう信じてるぞ。ユウも・・・複雑かも知れんが、みゆ希が好きなら応援してやってくれると、私も親友として嬉しいんだがな・・・。」
「・・・やれやれ・・・。わかんないけどわかった、もういいよ・・・。てか、それでみゆ希姉責めるの確かにちょっとおかしいよね・・・ワリかった、ごめん。でもマドカさんてば・・・ライバルとの仲を応援しろなんて難易度超タケーよ~。それって相当無茶振りだよ。」
「ごめんね・・・ユウくん・・・。」
「謝んないでってばよ。世の中思い通りになんないことだらけです。」

 オレは悟ったようなセリフを一応返したけど、ホント、内心は超フクザツだったよ。酔いもいっぺんに醒めちゃったし。てか、全然納得したわけじゃなかった。バカだと思うよねってみゆ希姉言ってたけど、まったくそうだよ。みゆ希姉にそれだけ思われてんのにほったらかしてた男もバカだし、そんな男にベタボレのみゆ希姉もバカだし、そんなみゆ希姉大好きなオレも大バカじゃん? こんなんじゃ世界はバカで過飽和状態になっちゃうよ。もどかしくてしょうがなかったよ。オレの思いが通じないからとかそんなんじゃなく、みゆ希姉がそれで幸せだなんて絶対嘘だと思ったもん。

 え? メイキングオブの話? まだもちょっと先だよ、順を追って、ね。
 てか、やっぱやめない~?!・・・ここまで喋っといてそれはないって? イヤ・・・ここからがいよいよ激ヤバイんだけどさ・・・。うわあ・・・マジヤバいって、オニ恥ずい・・・。うう・・・マジしゃーねーなあ、もう・・・。

 イヤね・・・それから数か月たった時だか・・・いつ頃だろ、ハッキリは覚えてないけど・・・冬だったのは確か。
みゆ希姉って実はあんまり酒癖いい方じゃないの。今はそうでもないかな・・・でもその頃はきっと寂しかったんだと思うんだよ、そりゃそうだよね、やっぱり我慢してたと思うよ。だから酔って多少本音が出ても仕方ないよね。イヤ、たまには酔った勢いではっちゃけるべきだったんだよ。え? はっちゃけたのかって? そうなんだよ・・・だから名誉にかかわるって言ったの。本人が喋って良いって言ったのなら・・・オレも喋っちゃうけどさ・・・。
 ああそっか、だから自分からは言いにくかったんだよな。てか、オレなら恥ずかしげもなく喋ると思ったの?!あの人・・・。もう・・・オレの恥とか考えてくれてないんだろーか・・・。イヤ・・・もういいけどさ・・・。だから絶対君一人のとこで止めといてよ、オレはともかく、やっぱみゆ希姉の秘密的ところも多いんだからさ。

 その、数か月後の冬の夜、オレはマドカさんから電話貰ってある呑み屋に駆け付けたんだ――女子会の後でマドカさんとみゆ希姉の二人で呑んでたらしいんだけど、その日は仕事でいろいろあってみゆ希姉大変だったんだって。相当へこんでたみたいだわ・・・。ほら、そんな時ってさあ・・・一番慰めてくれそうなのってカレシとかカノジョじゃね? 完全フリーの人ならともかく、やっぱ思い人のいる人ならその人にウソでもいいから慰めて欲しいよね。けど、みゆ希姉は・・・みゆ希姉のあの人はその時そばにいなかったからさ・・・。
 余計なことになるけど、今はその時の分も合わせて存分に取り返してるみたいだよね・・・。まあ、それくらいしてくれてないとオレも立つ瀬ないんだけど。てか、今更みゆ希姉泣かしたらオレがあの人ブチ殺します。・・・あれ、君も同じこと言ったんだ、あの人本人に?! あっはっは、そりゃいいや! そん時は二人でブチ殺しに行こーぜ!!
 それはともかく、その夜の話ね、みゆ希姉ってば、らしくないことにほとんど酔いつぶれちゃっててさ・・・帰ろうと言うマドカさんに逆らって、揚句オレが迎えに来るなら、連れて帰って貰うなんて言い出したんだって。マドカさんはその日休み取ってその女子会に行ってたんだけど、オレはマジメにスタジオ籠もってたの。それで呼び出されてシゴト切り上げて店に行ったら、みゆ希姉はホントにテーブルに伏せて寝ちゃってたのよ、なんか信じられなかったけど。だからマドカさんにウチ聞いて――その時は横浜のワンルームマンションで一人暮らししてたんだよね、みゆ希姉は。初めはマドカさんが送ってくって言ったけど、みゆ希姉はオレじゃなきゃ嫌だって言い張ったんだと。・・・嬉しいけどちょっとフクザツ? でも本人がそう言うもんだから、オレはマドカさんと別れてみゆ希姉負ぶってタクシーに乗せて・・・マンションまで連れ帰ったワケ。でも、みゆ希姉は起きてくれなくてね・・・仕方ないから・・・鍵探して部屋まで入っちゃったよ・・・。
 イヤ・・・ホントに何もする気はなかったのよ、だって・・・オレは自主的に行ったんじゃなく呼ばれただけだし・・・おいしいシチュエーションだけどそんな期に乗じるなんてイヤじゃない。イヤイヤイヤ、オレはマジメだよ~? その少し前なら遊ぼうとしたかもしれな・・・ウソウソ!! 女遊びもしたけどお~・・・その頃もそんな状況の女の子に手を出したりはしなかったよ!! イヤホントだってば! いくら何でもそれは卑劣でしょ!! イヤ、その頃の話はもういいの! とにかくみゆ希姉をベッドに下ろして、潔く帰ろうとしたのよ・・・ホントに。でも・・・。
 オレはみゆ希姉を寝かせて一応布団も掛けて・・・部屋はオートロックだから、わかるようにテーブルに鍵を置いてまずは帰ろうとしたの。みゆ希姉の顔色は悪くはないし・・・。でも、酔いつぶれてるのほっといて大丈夫かなと思い直したのよ。だってそのままにしといてさ・・・酔った人が吐いたもの喉に詰まらせたりしたら危ないとか言うじゃない、そういうの保護責任遺棄って言うんだよね。でも、独り身の女性の部屋に男が朝までいるのも良くないよなーとか思ってさ・・・。マドカさんに同行してもらえば良かったよね、よく考えればそうだったんだけど。だから超葛藤したのよ、でも最終的には万一を考えた。すぐそばにいるのもなんだから、玄関口に座り込んで、目を覚まして大丈夫なのを確認したら早々に退散するつもりだったの。

 で、聞こえてるか聞こえてないかわかんないけど
「オレ、玄関のところにいるから、もし気分悪いとかなったら呼んでよ。」
って声だけかけて、玄関に向かおうとしたら・・・。
 みゆ希姉はオレの腕を掴んでたよ。
「ごめんね、ユウくん・・・。」
って薄目を開けて詫びながら・・・。
「みゆ希姉・・・目が覚めたんだ。大丈夫? 気分悪くない?」
「ごめんね・・・。ホントに・・・ごめん・・・。」
「え?」
 みゆ希姉、泣いてた・・・。そんな顔見ちゃったらオレもあっち行けないじゃない・・・。そのままそばに座り込んだよ。
「マドカさんにちょっと聞いたけど、今日はいろいろ大変だったんだってね。何か知らないけど辛かったんだね。」
「うん・・・。」
 それからがびっくりだったよ。みゆ希姉、いきなり起き上ったかと思うとオレに抱きついてわあって泣き出すんだもの・・・。もちろん酔ってるせいもあったんだけど、いつも凛としてるみゆ希姉がさ・・・。ていうか、ああ、みゆ希姉も女の子なんだなあ~なんて思っちゃった。オレって失礼なヤツだよね~、年上の女性に対してさ。でも・・・いいのかなあとか思いつつも頼ってくれたのは素直に嬉しかった。
 しばらくそのままでいて、ちょっと落ち着いたのを見計らってオレは
「大丈夫?」
って聞いた。
「ごめんね、ユウくん・・・。」
「オレに謝ることないよ。」
「ううん・・・。あたしホントは眠ってたんじゃないの。酔ってはいるけど・・・つぶれちゃうほどじゃない。酔いつぶれたフリをしたらユウくんどうするかなって・・・試しちゃったの・・・。」
「え・・・?」


・・・TO BE CONTINUED.
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創作小説 SUNSET ORANGE EXTRA CHAPTER PART.3

2014年10月13日 06時06分09秒 | 創作小品
 その後もみゆ希姉ってば、誰かと付き合ってる気配が全然なかったんだよね。そういうの、隠しても仕方ないことだし、隠せるもんでもないでしょ。それにみゆ希姉の性格からして・・・プラスオレの願望も含めて、相手は妻子ある人とかじゃないよなって思ったし・・・。て言っても“叶わぬ思い”の一番はそれでしょ、やっぱり。あるいは身分違いの恋なんてのもあるかもだけど。まあ、オレも未だにみゆ希姉を相変わらず好きでいるけど、それは妻子ならぬ夫と子どものいる人と知ってのことではあるよね・・・。自分はいいのにみゆ希姉にはそうであって欲しくないなんて、勝手っちゃあ勝手なんだけどさ、でも、決まった人がいる人を好きになるって、ホント切ないんだよねえ。だからそれはナシの方向で考えたかったのよ、みゆ希姉がそんなおバカな恋してるなんて考えたくないって言うかさ・・・。オレ自身はどーなのよ、てツッコミは置いといてよ。
 だからさ・・・ある時思い切って聞いてみたの、みゆ希姉の思い人ってどんな人なのって・・・。ああ、もちろん酒の席で軽く、スルーされてもいいってくらいの軽さでね。深刻になりたくなかったしさ。そしたらね・・・。

 「ねえ、みゆ希姉の思い人ってどんな人? オレよりいいオトコ・・・なんてホントにいるの~?!」
「え? あはは・・・う~ん・・・まあねえ・・・。そだね、ユウくんと・・・どっか似てなくもない・・・かな。」
 そうだ、その話した時は・・・その少し前に、なりゆきとかもあってオレの素性をみゆ希姉に話してたんだった。だからそれ以来オレのことユウジくんじゃなくユウくんて呼んでくれるようになってたんだよ。みゆ希姉の言うユウくんはユウイチロウくんの略なんだよね。――もちろん超驚かれちゃったよ。でも、それまでと何ら変わることなく接してくれた。
 それはそれとして・・・
「へえ、じゃあぜってーいいオトコには違いないな! ケッコイケメンなんだろ!」
「まあねえ~、あっはっは。でも、ユウくんみたいなバカじゃないよ~。」
「ヒドッ!!・・・まあ、オレはバカですけどさ、実際・・・。でもヒドッ!」
「てへっ! メンゴメンゴ!! でも、何ていうかな・・・優しくて・・・自分がわざと損喰っちゃうとことか、似てるんだよね・・・ちょっと。そういう意味じゃ彼もバカかもね・・・。」
「・・・みゆ希姉・・・。」
「こらユウ! 純真な乙女にセクハラするんじゃないの!」
その時マドカさんてば、テーブル越しにオレの頭を小突いてぐっと睨み付けたよ、急に・・・。
「イテッ・・・。何よ、これセクハラなの? コイバナ聞いてるだけじゃん。」
「十分セクハラだよ! そういうこと根掘り葉掘り聞くもんじゃないよ!」
「根掘り葉掘りって・・・そこまで聞いてないじゃないよ・・・。」
「ああ、マドカ、いいよ!」
と、意外にもみゆ希姉本人がマドカさんを制した・・・ちなみに雅ちゃんは急用ができて先に帰っちゃったのでその時のオレは両手に花状態だったね。
「みゆ希・・・?」
「いんだよ、なんか今日は喋りたいなって気分。あたしユウくんに聞いて欲しい気分なんだ。・・・彼はね・・・すごく重い・・・ホントに重い事情を抱えてるらしくてさ・・・あたしはよくは知らないんだけど・・・でもすごく辛い思いしてきたんだってことはわかる。それでも人には優しくてね・・・それもさりげなくて、絶対自分が前に出ることなくて、そっと影で支えてくれてた、みたいな。」
「ふーん・・・。随分奥ゆかしそうだね。」
「ああ、そだね、そういう感じかな。」
「じゃあユウとは似てないな。ユウは全然奥ゆかしくないもんな。」
「マドカさんまでヒドッ!! でもいいもん、オレはアーティストだもんね、アーティストは自己顕示欲の塊でナンボだもん!」
「あはは・・・。ユウくんはそれでいいんだよ! でも、ユウくんもホントはすごく思いやりがあると思うよ。」
「あっ! サスガみゆ希姉! よくわかってくれてんじゃん!」
「わかってるよ~! だから振られても構わないなんて言うんでしょ?」
「へ? いやあ、そんなんじゃないけど。」
「報われたいなんて思ってないんだよね、ユウくんも・・・。」
「・・・・・・イヤ、そんなんじゃないって・・・。オレのことはどうでもいいでしょ?・・・。それよりその人にみゆ希姉はコクんないの? まさかやっぱ振られた・・・とか?」
「ううん・・・。」
みゆ希姉はそこでちょっと目を伏せた。ヤバイ、オレ、地雷踏んだみたい!! って気づいても遅かった。あわてて取り繕って
「ごめん! オレ変なこと聞いちゃった、忘れて・・・」
と言いかけたけど、みゆ希姉は首を横に振った――激ヤバイよ~・・・マドカさんの目のコアイこと!! でもみゆ希姉は
「ううん、いんだって!」
と、ニッコリして顔を上げた。
「ホントに話したい気分だから。コクったって言うか・・・知ってるよ、彼は、あたしの気持ちはよく・・・。でも返事はもらってない。返事をくれないままでいなくなっちゃったの。」
「・・・え・・・。」
「だから言ったでしょ、彼はすごく重い事情を抱えててさ・・・それこそ押しつぶされそうなくらい・・・多分死んじゃいたくなるくらい・・・。」
「・・・・・・。」
「何があったのかはよくわかんないの、何を思ったのかもよくわかんない。だけど、ただ身内の人に『必ず帰るから心配しないで』っていう書置きを残して行方をくらましちゃったんだ。」
「そんな・・・。」
「それきりまだ戻ってきてないの。もう・・・五年以上・・・六年近くになる・・・かな・・・。」
 オレはショックで咄嗟には何も言えなかったわ。その人は・・・知っての通り、何を隠そう今はしっかりみゆ希姉の旦那さんだけどね・・・。その後随分経ってからだけど、再会できて、うまく行って一緒に家庭を築いて、二人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ、メデタシメデタシ、なんて状況になれたわけだけど・・・あ、子どもできたから三人なう、か・・・。でもその頃はお先真っ暗の時期でさ、みゆ希姉、随分辛かったろうなって今でも思うよ。
 でもさ、オレもその時はまだガキに毛が生えた程度だったから、そんなみゆ希姉の深い思いなんて理解しきれなかったんだよね・・・。でも、マドカさんはさすがにマブダチなんだ、
「みゆ希はその彼をずうっと待ち続けてるんだよ、一途にね・・・。」
としみじみ言ってたよ。
「・・・マジですか・・・。」
「バカだって・・・思うかな・・・。」
「そりゃ・・・。イヤ・・・何で六年も待って・・・。てか、一度も連絡ないの? そんな勝手な人・・・ちっともいい人なんかじゃないじゃないよ。」
「そう言ってやるなよ、ユウ。私も彼に会ったことはないけど、だから酷い男だって言い切れるような、そんな単純な話じゃないんだよ。」
「わっかんないな~・・・。難しく考えなくても、どのみちみゆ希姉がそれに縛られなきゃなんないことないんじゃないの? そういうの自縄自縛って言わない?」
「ユウ! それは言い過ぎだぞ!」
「いいよ、マドカ!・・・そだよ、確かにユウくんの言う通りかもね。でも、あたしは待つって決めたの。それだけ。それこそ単純だよ。」
「やっぱよくわかんねーや。ハッキリ期限を決めてくれてもいないんじゃ、いつ帰ってくるか、そもそも帰ってくるかどうかもわかんないんでしょーが。そんな男待っててもしょうがないでしょ?」



・・・TO BE CONTINUED.
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目薬は苦い・・・

2014年10月12日 21時22分02秒 | 徒然雑記&連絡帳
長いこと眼科と言うところに行ってませんでした。
メガネの処方はメガネ屋でやってもらってたし・・・
だってほら、眼科って結構混むじゃないッスか。

でも最近ひどい首凝りの原因が
悪い姿勢にあるのだろうと言うことは予測でき
更に姿勢の悪さは見えにくいモノを見ようとして
不自然な姿勢になることで起きる場合も多いと聞き、
確かに自分、老眼に乱視もキツイもんですから
よく見ようとして変な姿勢になってる自覚もあったもんスから
もしかしてメガネが合わなくなってんじゃないかと思って
数年ぶりに眼科へ行ってみたのですよ。


土曜日しか行く暇がないので混んでいる覚悟はしていました。
が、初めて行ったその目医者さん、ものすごく流れが良い!
確かにすんごく混んでたんですが、
看護師さんたちの手際のいいこと!!
眼科って診察前にまず眼圧検査や視力検査をしますよね、
その一連の流れがものすごくスムーズで
患者さんの状況に合わせて何本かの流れを作ってあるみたいで
あれよあれよと言ってる間に検査が進み
気がつきゃドクターに呼ばれて診察に。

表にはずらーっとチャリが並んでましたし
待合も人でいっぱいだったのに
海堂センセの小説を持って行ってたのに数ページ読んだだけ。

すごい・・・・。


で、視力検査とメガネの度数を調べてもらった結果、
この上ないほどメガネは合ってました・・・。
う~ん、つまりこの姿勢の悪さは意識して正すしかないのか。
視力矯正でどうこうなるとは思えないとのこと。
う~ん・・・・

行くか・・・整体・・・


でも、ドライアイになっているとの指摘があり、
ドライアイ治療の目薬を処方されました。
一回ずつ使い捨てのアンプルみたいな目薬。
しかも白い粉末入り。

へえ・・・こんな目薬あるんだ。

そしてその携帯ケースのカッコよさ(笑)

しゃきーん!!

ただ気になる言葉が看護師さんから・・・
「この目薬は苦いので云々・・・・」

は? 目薬、苦い・・・・??
イヤ、飲みませんけど、そんなもん・・・。


でも、点眼してわかった。

苦いわ、ホンマに・・・・。


目と鼻は繋がってますよね。
鼻と喉は繋がってますよね。
点眼してすぐは別にどうっちゅうことないんやけど
・・・イヤ、粉末が入ってるから視界が一時的に真っ白になって不可思議な光景になりますが
しばらくしてから数十分~・・・イヤ結構長いこと
数時間にも及ぶかも、
口の中がなん~となくにぐゎい・・・・・

うええ・・・・ホンマや、この目薬、苦い・・・。

それも一日4回ささなあかん。

てことはほぼ一日中苦いのね(涙)

涙もしょっぱいんじゃなく苦くなってそうです。文字通り。
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