ちゃちゃ・ざ・わぁるど

日記と言うよりは”自分の中身”の記録です。
両親の闘病・介護顛末記、やめられないマンガのお話、創作小説などなど。

創作小説 SUNSET ORANGE CHAPTER2 PART.11

2014年06月30日 06時38分05秒 | 創作小品
「あの・・・実は、アタシ・・・つい三日前に会ったんです・・・ユウさん・・・ユウジさん、いえ・・・祐一朗さんに・・・。」
「えっ?!」
おばさんは明らかに驚いたみたいだ。ちょっと黙ってしまったけど、それだけでアタシの言おうとしたことはわかってくれたみたいだ・・・。
「そう!・・・そうなんだ・・・。じゃあ・・・。」
「はい・・・。聞きました・・・おばさんのこと、総くんのこと・・・浅野祐総さん・・・ユウさんと総くんのおお父さんのこと・・・。」
「・・・そう・・・。」
 おばさんはゆっくり答えて、しばらく考えていたみたいだけど、やがてため息交じりに、でも笑って続けた。
「そう。・・・ひどいわね、まったく・・・。困った子だなあ、涼香さんに重荷背負わせるなんてさ・・・。」
アタシはハッとしてようやく目をおばさんに向けた。今の“子”というのは総くんのことじゃない。明らかにユウさんのことだ・・・。
「おばさん・・・。」
「でも、あの子は涼香さんを信じたんだ・・・。信じて話したのね。」
「・・・託したいって言われました。何もできない自分の代わりにおばさんと総くんを見守って欲しいって・・・。そのために自分の思いを知って欲しいって・・・。おばさんも、やっぱりずっとユウさんのことわかってらしたんですね。ユウさんが自分の息子さんだって・・・。」
「ええ・・・。あの子がデビューしてすぐにわかった。不思議なつながりでもあるのかしらね、ホントにたまたまCDショップでポスターを見かけたのよ。ああ、最近人気の新人てこの人ねって思って見た、それがあの子だったの。・・・びっくりしちゃった。もちろん初めはまさかと思ったわよ、名前は芸名だし。でも・・・そっくりだったのよ、雰囲気が・・・若い頃の浅野先生に。涼香さんは浅野先生の若かりし頃なんて知らないでしょ。でも、私はずっと近くにいたからわかったんだ、直感的に。だからその場でCD買って帰って、聞いてみて確信したの、祐一朗だって。もう・・・すっごく嬉しくてね・・・何度も何度も聞いた。・・・私の産んだ子がこんなに立派に育って、しっかり自分を見つめて、こんなに素敵な歌を作って歌ってるなんて・・・ホントに感無量だったわ。」
「・・・寂しく・・・辛くなかったですか? 大事な息子さんを奪われたのに・・・。」
「そうね・・・。初めから納得ずくで産んだはずなんだけど・・・正直言ってもちろん後悔したわ、すっごくね。だから総司の時は思いきり逆らっちゃった。ここは私の祖母、つまり母の実家のあった土地なの。だから勝手はわかってるし、浅野先生もここまでは知らないから丁度いいかなって考えて逃げちゃったんだ。」
そう言うとおばさんは愉快そうに笑った。けど、実際はきっと笑い事じゃなかったよね、きっと・・・。
「浅野さんは捜そうとしたそうです。でも、百合恵さんが猛反対して断念されたとかって・・・ユウさんが言ってました。物凄い勢いで浅野さんと戦ったらしいって。」
「そう、百合恵さんが・・・。あの方、私の大学の先輩なの。素晴らしい方なのよ、私は尊敬しているの、今でも。そうなんだ・・・私を思って戦ってくださったのね。そして祐一朗をしっかり育ててくださったのね。」
「・・・おばさん・・・辛くないんですか? おばさんが本当のお母さんなのに、育てたかったのに・・・ユリエさんに託さなきゃならなかったなんて、あんまりです・・・。」
「でも、今それを言っても仕方がないでしょ。」
「恨んでないんですか? 浅野さんを・・・。」
「さあねえ・・・恨むべきなのかしらね。祐一朗は何か言ってた? お父様を恨むようなこと。」
「・・・一時は猛反発したらしいです。何でも・・・高校に入った直後くらいにユリエさんに本当のことを聞いて、その時はキレて大暴れしたようなこと言ってました。・・・。でも今はお父さんを認めて、理解しようとしてるって感じでした・・・。」
「そう、本当にいい子に育ったのね、良かった。百合恵さんのおかげよね。あの子が恨んでないなら、私も恨むわけにはいかないかな。一番翻弄されたのはあの子だもの。大人は勝手よねえ・・・。でも、浅野先生も・・・ただ酷い人じゃないのよ、苦渋の決断だった・・・少なくとも私はそう思ってる。百合恵さんもね・・・。誰一人、辛い思いをしなかった人はいなかったの。でも、それは結局その時の大人の事情、大人の身勝手。だからそれをすべて許容しようとしてる祐一朗が一番凄いかもね。」
「そうですね。アタシもそう思います。ユウさんて凄い人だって・・・。なんか、ノリは軽いんですけど・・・。」
「ふふ、私の産んだ子はエライでしょ?」
「はい・・・!」
「・・・もう一人の方も見習ってくれたらいいのだけど。あら、こっちは私が育てたんだった、つまり私がよくないってことかしら・・・?」
おばさんはちょっぴりおちゃめにそう言った。アタシはぶんぶん首を横に振った。
「そんなことないです!! 総くんもいい人だと思います! ただ、事故のせいでショック受けちゃってるだけで・・・。」
「でも、あの子は音楽やめちゃった。祐一朗と違って。」
「え?」
「私も話したのよ・・・総司に、半分だけ。父親と何があって、どうして一緒に暮らしていないのかってこと。あの子の就職が決まって、もう話してもいい頃かなって思ったものだから。」
「そ・・・そうなんですか?!」
「でも実は祐一朗のことはまだ話していないの。あなたにはお兄さんがいて、それが他でもないユウジだってこと・・・もちろんいつか話そうとは思うのだけど、一度にすべて話して混乱させるのもよくないと思って話してないの、まだ・・・。ていうか、父親のことを話した時点であの子もやっぱりキレちゃってね・・・。ある有名な音楽家で、その奥さんが子どもを産めないからだだったので・・・と、そこまででもうお終い。これ以上聞きたくないと耳をふさがれちゃったから、その父親が具体的に誰なのかとか、ましてや祐一朗のことまではとても話せなかったのよ。そして、それで音楽やめちゃったのね。もし自分に音楽の才能が多少あるとしても、少なくともその半分は許せない父親から受け継いだのならもう嫌だって言ってね・・・。気持ちが落ち着いてから、私のことは犠牲になっただけだからって言って許してくれたんだけど、父親の身勝手さは絶対許さないって・・・。」
「それでアタシが楽譜持ってった時にあんなに怒ったんだ・・・。」
アタシはやっと得心がいった。お父さんに反抗してやめて・・・きっと総くんはまだ許せていないんだな・・・。
「ええ・・・総司はいまだに父親を許してはいないわ。どんな人か実物を知らなくて自分のイメージだけで考えているから余計そうなるのでしょうけど・・・。いつかわかってくれるのかなあ・・・。でも今はダメね、事故のショックもまだ大きいから・・・。」
「・・・・・・。」
「とにかく・・・二人の息子があなたにとんだ負担を強いたみたいね。ごめんなさいね、涼香さん。」
おばさんは困り顔で少し頭を下げた。アタシは・・・なんて返していいかわからない。
「特に祐一朗は・・・。」
「・・・あの・・・何か、アタシ・・・ユウさんには変に信用されちゃったみたいですけど、本来アタシはここまで知るべきじゃなかったですよね。・・・おばさんが本当のお母さんだって話を聞いた時、初めユウさんはそれ以上のことは言わなかったんです。それで、アタシがお父さんのこと尋ねたら『無理に背負うことはない、聞きたければ話すけど、いいの?』って言われて・・・。本来アタシはそれ以上首を突っ込むべきじゃなかったのに、聞きたいって言っちゃいました。だから話してくれたんです。アタシは自分で背負い込んだんです、本当は聞くべきじゃなかったのに・・・。だからユウさんのせいじゃないです。そもそもアタシ・・・まだ総くんたちと知り合って長くないのに、それなのに・・・姫島くんも路美ちゃんも知らないんでしょう、このこと。幼馴染の二人が知らないのに、後から友達になったアタシが先に知っちゃうなんて、いけませんでしたよね。・・・ごめんなさい。」
「そんなことないわよ? 幼馴染だとか付き合いが短いとか、そういうのは多分関係ない。だって祐一朗はそんなこと何も知らない筈だもの。きっとあなただから、涼香さんだから話したのよ。本当にあなたが信頼できると思ったから・・・信用じゃなくて信頼よ。それに光汰くんと路美ちゃんの二人は確かにずっと総司の親友だけど、だから話さなきゃならないとは限らない。二人を信じないとかそういうのじゃないけど、そうね・・・何て言っていいかしら、二人は知らなくていいことだから・・・。もちろん知ってもいいのだけれど、わざわざ言うこともないってことかしら。実はそれは涼香さんも同じなの。どちらでもいいの。でも、たまたまあなたは知った。それは、私じゃなく祐一朗が知って欲しいと思ったからよ。ただそれだけのこと。あなたが知るべきじゃなかったとは思わない。でも、その結果重荷を背負わせてしまったことはごめんなさい。そしてそれを覚悟した上で知ってくれたのなら、私はお礼を言います、どうもありがとう。その上で言うわね・・・どうか息子たちをよろしく。・・・あら、これじゃ花嫁の父親みたいね、・・・って、だいぶ違うか?」
あれ・・・。アタシは思わず笑ってしまった。だって・・・
「おばさん・・・ユウさんと同じこと言った。ユウさんもおばさんと総くんの二人をよろしくって言った後で『オレは花嫁の父親か?』って自分で突っ込んでましたもの。ついでに『だいぶ違うかな』って。」
「あらまあ・・・! おんなじ?! ふふふ・・・変なところで親子なのねえ、私たち。」
そう言っておばさんは本当に楽しそうに笑った。おかげで、アタシも少しは肩の荷が軽くなった気がした。
だけど・・・。



CHAPTER.2 END
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悲しさには慣れないものなのだな

2014年06月28日 13時58分12秒 | ジャンガリアン
もう・・・何度目のことだろうか。




ジャンガリアン・ハムスターの菊ちゃん。
あんなに元気に走り回って滑車も回して
「ぷきゅぷきゅ」通信も続けて


昨夜、エサをやろうとしてふと見ると菊ちゃんは滑車の下で コテン、と横倒しになっていました・・・。


菊ちゃん、1歳10か月にしての大往生でした。


庭に埋めて、お線香をたててやって
おちょこにひまわりの種をお供えして合掌。



子どもたちと・・・・。



うちで死んだヘケたちは30匹以上に上ります。
病死も事故も、天寿を全うしたであろうものもいましたが

こんなちっちゃなヘケでも、全部ちがって
全部個性があって・・・全部かわいくて!!

短命でも長命でも死ぬと悲しい。これは慣れない。

菊ちゃん、安らかに・・・・。


「なんですの?!」
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創作小説 SUNSET ORANGE CHAPTER2 PART.10

2014年06月26日 06時54分49秒 | 創作小品
 「そんなこと言われても、あたし空我兄さんのことはほとんど覚えてないもん・・・。」
「だから余計引きずってんじゃねーの? どんなだったかわかんないからさ。」
路美は力なくうなだれて総司のベッドの傍らに腰を下ろしています。総司はベッドに座って、その路美を見守るような目で見ています。光汰も向こう側の窓際のソファに陣取りました。
「お前、考えてみりゃずっとオレ達の後ついてきたよな。高校だって普通科行くか機械科にするか結構マジで考えてたろ。オレは母子家庭だから早く就職して母さん楽にしてやりたかったから機械科行ったんだけど、お前は機械科へ行く理由なんてなかったじゃん、別にメカ好きでもねえしさ、迷う必要なかったのに。大学だって、あんま考えずに光汰の後追っかけたんじゃね? ついてくるなとは言わねーよ、来たけりゃ来ればいい。でも、オレ達ちょっと一緒に固まりすぎて周りに壁みたいなもん作っちまってんじゃねえかな・・・。」
「ああ、確かに内輪で固まって排他的になってるかもね。」
光汰がうんうん頷いて言いました。
「近寄りがたい雰囲醸し出てたかもしれないなあ・・・。」
「仲良しなのはいいんだけどな。でもほら、例えば・・・光汰んちって4人きょうだいじゃん。でも葵姉ちゃんは近くだけど結婚して家出てってるし、皐姉ちゃんは東京で働いてるだろ。楓太は高1だっけ?」
「ああ、山瀬高校だよ、僕らとは違うとこへ行ってる。」
「・・・な。本当のきょうだいでもそんな風にバラバラになるもんだろ。ましてや幼馴染、いつまでも一緒にはいないし、いられないんじゃね? けど、何かあったら駆けつけるし、悩みごとがあれば相談に乗るさ。もしこの先遠く離れてもきっとまた会えば遊びにも行くし飲みにも行くじゃん。一生つきあえるよ。離れたくない気持ちはオレにもわかるってか・・・そんな気持ち、オレにもなくはないけど、だからって涼香に文句言うのは筋違いだろ。涼香、何も悪いことしてねーじゃんか。それよか、むしろオレは彼女が仲間になって良かったって思ってんだよな。」
「ほいほい、総司はやっぱり菊川が好きなんだよね。」
光汰がにんまりして言うので、総司はあわてて手を振りました。
「そ・・・そーいうことじゃなくて!! そうじゃなくて、さっき言ったろ、内輪で固まりすぎて排他的になってるとこへ彼女が入ってきてくれて、だからもっと外を向けるようになったってことでさ!」
 と、路美が立ち上がると何も言わずにバッグを取って、くるりを背を向けるとドアを開けて出て行ってしまいました。
「おい、路美! 話まだ終わってないぞ! ・・・て・・・行っちまった・・・。」
追いたい総司ですが、どうしても動けません。諦めて大きく息を吐くとベッドにもたれかかりました。
「・・・あ~、やれやれ、女って結構メンドくさいんだなあ・・・。」
「あはは、そーだね。」
と、光汰も苦笑いします。
「まったく、僕らだったら、仲間が増えて、いろいろ今までにない話題とか振ってくれて、新鮮で面白いなあって思うだけなのにね。菊川って人なつっこくて気安くていい人なのにさ・・・。路美は身内意識強いんだな、意外と。ていうか、総司ちょっと言い過ぎ。」
「だ・・・だってよ・・・。」
「しゃあないか、菊川がもう来なくなったら失恋だもんね。」
「だからそんなんじゃねえってば!! お前だって嫌だろ、こんなつまんないことで涼香が来なくなったら。」
「そりゃあね。でも路美にとってはつまんなくないんだな~、そこが厄介じゃん。」
「・・・ああ、やっぱメンドくさい・・・。なんとかなんねーかな・・・。」
「多分、今路美にこれ以上言っても余計意固地になるだけだよ。しばらく様子見るしかないな。」
「つーか、お前もややこしくしたぞ! オレが涼香が好きだなんてお前が言うから、路美、余計むくれたんじゃんか!」
「はっはっは! モテる男は辛いねえ!」
「シバくぞ!!」
「はっはっは~!・・・まあ、お前もそうやって元気出せよ! もうすぐ退院だろ?」
「あ?・・・ああ・・・。まあ・・・当分は通院だけどな・・・。」
総司はため息混じりに足をさすりました。

 そうかあ・・・。路美ちゃん、総くんも事故にあったから余計心配なんだな・・・。空我くんみたいに大事な人を同じような状況で亡くしたら・・・。そう思うと心配で仕方なかったんだ。それなのに、アタシは彼女の役割を奪っていたのかも知れない・・・。それに・・・それに・・・。
 「涼香さん、あなたは何も悪くないよ。たとえ路美ちゃんが少しばかりあなたに冷たい態度をとっても、あなたはこれまで通り普通にして、総司に会いに来てやって。・・・もっとももうすぐ退院するのだけど。」
「そうだ、アタシそれを姫島くんに聞いて・・・。」
うっかり路美ちゃんのことで忘れてた。
「いつなんですか?」
「来週の週明けの予定。でも、しばらくは通院してリハビリね。・・・あの子、どうにもリハビリはもうひとつ乗り気じゃないんだけど・・・。確かに実際大変なんだけど、訓練次第で頑張ればなんとか歩けるようにはなるとは言われたのよ、でもどうもね・・・。完全に元へは戻らないとわかっているから、もうこのままでもいいって思ってるのかしら、どこか投げやりで。随分元気にはなって来たけど、今一つ乗り気じゃあないみたい・・・。」
そう言っておばさんはため息をついた。アタシもなんとか叱咤激励したいところだけど、正直そんな立場にはない。余計なことしちゃうくらいだもんね・・・。総くんの辛さをわかったような顔をして、でも実際は単に「わかったようなこと」を言ったにすぎない。ユウさんのコンサートで少し元気が出たみたいだけど、もうひと押し何とかなんないのかなあ・・・。
 ・・・などと思っているところで今度のこの路美ちゃんの件だ。もう・・・アタシ更に気が重いよ・・・。
 「涼香さん? 何だかそれ以外にも気になることがありそうじゃない?」
「エ? いえ・・・。」
と、アタシはあわてて否定しようと思ったけど・・・もちろんアタシが気になっているのはユウさんに聞いた話のあれこれだ。ことがおばさんに関係あるだけに、どうしても目をそらしてしまう。やばいよ・・・そういやさっきからアタシずっとうつむいたりよそを見たり・・・せっかく話を聞いてくださっているのにマトモに目を合わせていない。無意識に合わせずに話していたよ・・・。さすがにおばさんはごまかせなかったんだ。ていうか、ごまかすことすら忘れてた・・・。
「よかったら話してみない? ホント私でよかったら、だけど・・・。何でも聞くわよ、もちろん誰にも内緒で。」
えー・・・うーん・・・どうしよう・・・。
 でも、考えてみればアタシがこの話をしていい相手は多分おばさんだけだ。みゆ希さんにすら話せない。ユウさんはみゆ希さんにも言ってないって言ってたもん・・・。そうなれば当事者としか話はできない。ああ、でも。でも~~~~~~~~~!!!
 完全に下を向いてしまったアタシをおばさんはじっと待ってくれている。アタシはもはや限界、少しだけ顔を上げて、でも視線は落としたままポツリとつぶやくように打ち明けた・・・。


・・・TO BE CONCLUDED.
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KAIGO.介護 りたーんず 巻の百七十六 認知症つれづれ雑考

2014年06月25日 21時41分16秒 | 介護な日々
友人の一人が介護施設の仕事をしてはります。
彼によると、結構キビシイ・・・というよりかなりエグイことが多いという。

認知症の方のご家族から、ご当人をお預かりする際、
「いうこと聞かんかったら殴ってください。」とか
「縛っても構いません。」とかマジで言われることもあるそうです。

確かに介護する側の大変さはひとことではとても言い表せません。
さまざまな矛盾もはらんで悪循環に陥っていることもしばしば。
ご家族も疲弊しきっておられるのでしょう。
キレイごとばかり言っていられないのは確かです。
だから虐待と言うものも起きてしまうのでしょう。
頭では分かっていても、介護は本当に大変です。
思わずイラついたり怒ってしまったり、
冷たい態度をとってしまったり・・・・・・。


私も母が認知症だったのもあって
いろいろ勉強させていただきました。
そこて、一番困っているのは本人なのだというのを何度も聞きました。

まだ介護の当事者になっていないし、目の当たりにしたこともない別の友人は
「はよ認知症になったもん勝ちやなあ、だって本人はすぐ忘れてまうんやろ?
忘れてもうて何もわかれへんかったら辛いこともないやん?」
と感想を述べていましたが・・・確かに一理なくもないかもしれません。
当人は別の世界に行ってしまって現世とは隔絶して
辛さも悲しさもなくなっている・・・なんて思うかもしれない。

でも、実はそれ「勝ち」ではないですよね。
現場を知らない人がそう思ってしまうのは無理ないことだけど
実際は認知症の人も時にはふと思い出し、自分の認知症たる状態を自覚して
愕然となることがあるのですよ。

それを指摘したら、その友人は
「そうなんや! うわあ~・・・それはキツイなあ・・・・。」
と、悲痛な顔になりました。
うん・・・わかってくれてありがとう。君はいい人や。


忘れると言っても、
実は忘れるのは「出来事」であって「感情」は残るのだそうです。
つまり、殴られたり縛られたりしたら
その辛い、悲しい、苦しいと言った負の感情は全部残っているのだそうです。
幼い頃受けた傷がトラウマとなり、成長を妨げるのと同じ。
何があったのかは覚えていないけれど、気持ちだけは残っていて
無意識に体が拒絶反応を示すというアレ、それと同じなんだとか。
だから「どうせ本人わかっていないから」と虐待行為をするのはもってのほか。
認知症を更に進行させ、ますます暴れたり奇行を繰り返すことになるのです。

認知症の人は常に不安なんです。
忘れてしまう、変な行動をとってしまっている自身に実は気づいていて
怖くて不安で、認めて欲しくて辛い思いをいつも持っている。
だから自分を守るために乱暴になったり酷い言葉を口にしたりする。
・・・非行に走る子どもたちとある意味一緒かも知れません。
だから受け止めて受け入れてあげることがきっと大事なんだと思います。
普通の、健常者でも人に受け入れてもらえることが一番嬉しくて落ち着くはずだから。

否定しない・・・・いったん受け入れてから訂正してさしあげよう。
イエス、バットの論法。(営業でも効果があるそうな。)



人は最期は赤ちゃんに返って死んでいく。

そういう言葉を聞いたことがありますが、ホンマそうなんやなあと思います。
幼児の反抗期みたいになって、赤ちゃんみたいになって
歩けなくなり言葉も忘れて死んでいく。

イヤイヤイヤ・・・・笑ろたらあかんねんけど。

うちの母はどっちかとゆーと「陽気で明るい認知症」でした。

変なこともよく言ったし、徘徊も多少あったけど、
でも、天然ぽかったせいか人柄のおかげか、介護現場の皆さんに好かれていました。
好かれると好循環、皆さんも楽しく接してくださいました。

今現場で働く友人のエグイ話をあれこれ聞くと、
うちはかなり幸せな方やってんなとつくづく思います。


とにかく、人はそうやって・・・「還って行く」のかもしれませんね。
生まれる前にいた世界に。
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KAIGO.介護 りたーんず 巻の百七十五 再考するなら今でしょ

2014年06月24日 04時45分51秒 | 介護な日々
介護カテ 久しぶりの記事投稿です。

今年の春、父が亡くなって早や5年がたちました。
この秋には母の4回目の命日が来ます。

亡くなった直後からずっと、あまりいろんなことは考えずに来ました。
思い出すことはちょくちょくありますし、
あんなんやったなあ、とか
こんなんしてたなあ、とか
もっとこうできへんかったやろか、とか・・・
ちっとも思わなかったわけではないけれど
でも、あんまり考えては見ませんでした。

なんかねえ・・・・受け入れられないとか、そういうワケじゃないんですが
深く掘り下げて考え直して見つめ直して、という気にはならなかったんですねえ。
なれなかった、じゃないですよ、ならなかったんです。

でも、最近同年代の友人たちがぼちぼち介護世代に入りだしはりまして・・・

私は当時としては両親が年が行ってから生まれた子だったので、
世間一般のヒトビトよりも若いうちに両親の介護に直面しました。
だから、一般的に私の同年輩のヒトビトはそろそろこれから
両親の介護に突入する年代なのです。

それで、友人たちとイッパイやってると自然話はそっちの方へ行きます。
別にセンパイ面する気は毛頭なくて、だから
「ふんふん、そうかあ、そうやんなあ~、ああ、うちもせやったわ~」
・・・などとほぼ拝聴しておるばかりなのですが

だからこそ、今改めて思い返すこともあるのかな、と。

あん時はあない思うてあないしたけど、さて、改めて考えるとどなんやろ、とか。

つーか、単純に、あんなことあったなあ~、ああやったなあ~、みたいな。改めて。
振り返るにはそろそろ潮時なのかもしれません。





これが最初のカットでしたね。

時系列に沿ってではなく、いろんなトコからランダムに、あれこれ
今にして思うことなど、つづってみたく思います。



うん、こげなこともあったわいなあwww


そや、初めの頃・・・てか、結構中頃まで投稿時母は生きていたんやねえ・・・。

・・・・と、ふと思った。
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