もう随分前のことなんだけど、ホントに思いがけず、もののはずみで俺はカズの素顔を見てしまったことがある。え? 今の顔は整形か変装かって? イヤ、いくらなんでもそんなことはない。そんなことじゃなく。見ようと思ったわけではない、ていうか、素顔が別にあるなんて思ってなくて、ある時もののはずみで知ってしまったのだ。
でも、そのときカズはなんて言っていいかとっさに思いつけないでいる俺に、
「誰にも言うなよ! 絶対言うな!」
と、結構キツイ口調で言ったのだ。それがあまりに真剣だったので俺も突っ込めなかった。
「わ…わかった。絶対言わない。でも、その…えっと…。」
「聞くな。お前も何も言うな。何も……言いたくない…。」
そう言って顔を背けたアイツはホントに辛そうだった。だから俺は
「わかったよ。今後絶対俺からは話題にしない。でも、言えるようになったら話せよ? 俺、いくらでもつきあうからさ。」
と言うしかなかった。でも、カズはそれにも頷かなかった…。
それからカズはまだそのことを言ってくれないでいる。俺は本音言うと突っ込みたいんだけど、こればっかりは口に出来ないでいる。それがアイツの、多分大きくて深い傷を更に深くえぐるような気がするからだ。じっと待つのもダチの勤めか。ここだけはアクティブフェーズはもちろんパッシヴフェーズも使えない。
それはともかく。
清司君もこれでだいぶ変わるだろう。基本的な性格は変わりようもないだとうけど、もう少し他人に対して警戒心を緩め、心を開けるようになるだろうな。
そうなることを期待してあげよう。
翌朝早く三上君は東京へ帰っていった。朝イチの東海道線に乗りたいというので、かなり早くに起きなければならず、こっちは少々辟易したが、当人は呑気に自分は車内で寝るからなどと言っている。そうじゃなくて、つきあいで起こされる俺に気兼ねはないのかと言いたいんだが。…天然というか、もしかしてKYなのかこいつ…。…………ありうるな…。まあ、駅まで車出してやろうと言ったのに、ぶらぶら町を眺めながら歩きたいのでと断ったのはさすがにちょっとは気を使ったのか……いや、本当に歩きたかっただけの気がするぞ。
まあ…いいけどな…。
清司はちょっと眠そうではあったけど、だいぶ人相が良くなった。ひとりじゃなかったという思いは何より心の支えになったようだ。
目覚ましコーヒーを飲みながら、ぽつりぽつりと話し始めた。
「兄さんの話によると、僕の父さんは僕らが生まれる少し前に事業に失敗して負債を抱えたため、双子で生まれることがわかっていた僕らの一人を乳児施設に預けることを考えたそうです。それで施設と話をしていた時、ちょうど不妊症なので養子を迎えたいという夫婦が現れて、その夫婦との間で話がまとまって、結果兄さんが養子になったそうなんです。僕は、実の親の所に残って…。両親は…あまりよく覚えてないけど、優しかったのは確かです。父さんは僕が6歳の時、母さんも10歳の時に亡くなりました。どちらも過労や心労からの病気で…。借金もあったから、うちは貧しかった。貧しいけれど、仲は良かった。みんなで支えあって暮らしてました。おねえ…姉さんはぼくより13歳も年上だったので、母さんが亡くなってからは親代わりに僕を育ててくれました…。僕はそんな姉さんにそれ以上苦労をかけたくなかったので、高校へ行くことは諦めて就職しようとしたんですけど…中卒ではなかなか仕事もなくて、ほとんどフリーター状態でした。でも、姉さんと二人でなんとかそれなりに暮らせてはいたんです。」
清司は今までずっと黙っていた自分の過去を、ようやく話せるようになったようだ。それだけ気持ちが落ち着いたのだろう。なによりその思いを共有できる人間が現れたのだから心強い。なんにせよ、良かったな。
が、そこで清司はハッとしたように顔を上げて申し訳なさそうに言った。
「すみません…井上さんは僕のこんな話、興味ないんでしたね。つい…。つまんないこと喋っちゃって…。」
「あ…まあ、俺には関係ない話ではあるけどな。でも言ったでしょ? お前が話したいのなら聞いてやるって。ちゃんと真面目に聞いてるよ。」
「すみません。なかなか話せる相手がいなかったし…前に話して怒られたりしたことがあったもので…ホントは聞いて欲しかったりもしたんだけど…。それで言いたいのに言いたくないっていう矛盾したような感じになっちゃってて…。」
「怒られたって、ナニ?」
「そんな不幸自慢する奴ってよくいるよな…とか、もっと不幸な奴もいるんだから、同情して貰おうなんてするな…とか…。」
「そりゃひどいな。でも、それこそいるよな、そういうこと言う奴…。まあ、少なくとも俺は言わんよ。」
「ええ。あなたはいい人です。」
「…褒められるほどでもないけどね。それで? お姉ちゃんも…。」
「事故…でした。無免許運転で…もちろん自動車保険もはいってない人で…。」
「…ひどいな…。」
「2年前です。…両親は…病気だったから、今言えるうちにって、たくさん言いたいことも言ってくれてたけど――僕はあまり覚えてないけど、姉さんがいろいろ教えてくれました…。でも、その姉さんは事故で突然だったから…何も言い残すことさえ出来ずに……。」
清司はさすがにそこで言葉を詰まらせて涙ぐんだ。無理もない。親のかわりに自分のことは二の次で一生懸命面倒を見てくれてたんだろう。母でもあり父でもある大きな存在のその人を失った心の傷はあまりに大きい。
「だから僕は…生まれ育ったところだけど、いい思い出もあるけれど、それだけにそれ以上に居続けるのが辛くなって…どこでもいいからと直江津を離れたんです。それからはあちこちでいろいろでした。稼ぎもあまりなくて持ってたお金もほとんどなくなって…それで最後に甲府の…あそこで…。」
「ま、後はこないだ聞いたとおり、か。」
「はい…。」
「そっか。ホントに大変だったな。」
「あなたのお陰で、やっと僕も落ち着けました…。ホントにありがとうございます。」
「よせよ、何回も。いいよ。情けは人のためならずって言ったでしょ? 気にすんなよ。俺よりも、実のお兄ちゃんがいてよかったじゃん。それもあんな…ちょっと…なんなんだかって感じもあるが、キホンいい奴だよ、アレは体育会系のノリだな…うらおもてのないタイプと見た。そういうお兄ちゃんが見つかって。また来るってか?」
「はい、今度東京へも来いって…むこうの両親にあわせたいって。それに、妹がいるそうなんです。」
「へえ? 不妊症じゃなかった? その親御さんは。」
「ええ…でも、兄さんを養子にして5年後に、思いもよらなかった、医者にも奇跡的だっていわれたらしいですけど、子どもが出来たそうなんです。それが妹の…実玖ちゃんていったかな、中学生だそうです。実玖ちゃんも兄さんが養子なのは知ってるそうです。で、そのご両親…さんも、実の子が出来たのは凄く嬉しかったけど、それで養子の兄さんを疎んじることがあってはならないと、まったく分け隔てなく実の兄妹のように育ててくれたって…。」
「そりゃあ返す返す立派な親御さんだな。なかなかできることじゃない。」
「ええ。実のわが子でさえ殺してしまうような人もいるって言うのにね…。」
「そう…だな。」
その清司のセリフに俺は胸を突かれる思いでいる。近頃極端に増えている虐待死…。これほど心を暗くさせる事件はない。殺すところまで行かずとも、実の親に虐待された子のトラウマは、他人同士の傷つけあいの比ではないだろう。
それから考えたら、三上君の養父母は偉いものだ。そして、清司の…二人の実の両親もきっといい人たちだったのに違いない。早くに亡くなったのは不幸だけれど、大切にされた記憶が心の、そして細胞のどこかにあれば、ヒトは案外強く生きていけるものだと俺は思っている。だから清司も紆余曲折はあったにしろ、思ったよりも強い芯を持っているんじゃないだろうか。
清司は明るい声で続けた。
「なんかまだ実感はあるようなないようなですけど、でも僕はまだひとりじゃなかったし、血のつながりはないけれど、親族ってよんでもいいような人が一気に増えて、ちょっと変な気分です。」
「でも、悪くないってか。」
「はい!」
「良かったな。俺も安心した。こんどぜひ遊びに行ってやるんだな。妹ちゃんをつれて遊びに来てもらってもいいしな。」
「いいんですか? 僕のところへ来て貰うってことはつまりここへ泊めるってことで、井上さんにいろいろ面倒かけちゃうのに…。」
「なあに、構わんさ。てか、面倒はお前がみりゃいいでしょ。俺は自分のことだけ勝手にやるよ。」
意地悪く笑ってそういってやると、清司は頭をかいて
「そうですよね…。すみません、つい何でも頼っちゃって。」
「頼られるうちがハナかな。」
「兄さんが言ってました。もし僕がここでもひどく苦労してて辛いようなら、自分ちは無理でも、ウチの近くに連れてって暮らしたら良いと思ってたけど、その必要はなさそうだって。井上さんのこと、すごく信用できるし頼りになりそうだからって。」
「ハハハ…そいつは随分買い被られたもんだ。」
「僕もそう思ってますよ! 頼りにしてます! だからこれからもぜひよろしくお願いします!」
そう言って清司は深く頭を下げた。
「ヤバイね、こりゃ…。ま…なんとかね…。」
そういわれりゃ気分が悪いわけはないけれど…。
それにしても、俺も俺だ。なんでここまで人の面倒見てんだろうな。まあ、それが俺の、マスターへの恩返しでもあるわけだが。そう、情けは人のためならず。親切にされたらまたその親切を別の次の誰かにしてあげなさいと、そういうことだ。
つか、俺って結構お人よし? クソッ、これもテツの言ったとおりかよ!
CHAPTER 4 END
でも、そのときカズはなんて言っていいかとっさに思いつけないでいる俺に、
「誰にも言うなよ! 絶対言うな!」
と、結構キツイ口調で言ったのだ。それがあまりに真剣だったので俺も突っ込めなかった。
「わ…わかった。絶対言わない。でも、その…えっと…。」
「聞くな。お前も何も言うな。何も……言いたくない…。」
そう言って顔を背けたアイツはホントに辛そうだった。だから俺は
「わかったよ。今後絶対俺からは話題にしない。でも、言えるようになったら話せよ? 俺、いくらでもつきあうからさ。」
と言うしかなかった。でも、カズはそれにも頷かなかった…。
それからカズはまだそのことを言ってくれないでいる。俺は本音言うと突っ込みたいんだけど、こればっかりは口に出来ないでいる。それがアイツの、多分大きくて深い傷を更に深くえぐるような気がするからだ。じっと待つのもダチの勤めか。ここだけはアクティブフェーズはもちろんパッシヴフェーズも使えない。
それはともかく。
清司君もこれでだいぶ変わるだろう。基本的な性格は変わりようもないだとうけど、もう少し他人に対して警戒心を緩め、心を開けるようになるだろうな。
そうなることを期待してあげよう。
翌朝早く三上君は東京へ帰っていった。朝イチの東海道線に乗りたいというので、かなり早くに起きなければならず、こっちは少々辟易したが、当人は呑気に自分は車内で寝るからなどと言っている。そうじゃなくて、つきあいで起こされる俺に気兼ねはないのかと言いたいんだが。…天然というか、もしかしてKYなのかこいつ…。…………ありうるな…。まあ、駅まで車出してやろうと言ったのに、ぶらぶら町を眺めながら歩きたいのでと断ったのはさすがにちょっとは気を使ったのか……いや、本当に歩きたかっただけの気がするぞ。
まあ…いいけどな…。
清司はちょっと眠そうではあったけど、だいぶ人相が良くなった。ひとりじゃなかったという思いは何より心の支えになったようだ。
目覚ましコーヒーを飲みながら、ぽつりぽつりと話し始めた。
「兄さんの話によると、僕の父さんは僕らが生まれる少し前に事業に失敗して負債を抱えたため、双子で生まれることがわかっていた僕らの一人を乳児施設に預けることを考えたそうです。それで施設と話をしていた時、ちょうど不妊症なので養子を迎えたいという夫婦が現れて、その夫婦との間で話がまとまって、結果兄さんが養子になったそうなんです。僕は、実の親の所に残って…。両親は…あまりよく覚えてないけど、優しかったのは確かです。父さんは僕が6歳の時、母さんも10歳の時に亡くなりました。どちらも過労や心労からの病気で…。借金もあったから、うちは貧しかった。貧しいけれど、仲は良かった。みんなで支えあって暮らしてました。おねえ…姉さんはぼくより13歳も年上だったので、母さんが亡くなってからは親代わりに僕を育ててくれました…。僕はそんな姉さんにそれ以上苦労をかけたくなかったので、高校へ行くことは諦めて就職しようとしたんですけど…中卒ではなかなか仕事もなくて、ほとんどフリーター状態でした。でも、姉さんと二人でなんとかそれなりに暮らせてはいたんです。」
清司は今までずっと黙っていた自分の過去を、ようやく話せるようになったようだ。それだけ気持ちが落ち着いたのだろう。なによりその思いを共有できる人間が現れたのだから心強い。なんにせよ、良かったな。
が、そこで清司はハッとしたように顔を上げて申し訳なさそうに言った。
「すみません…井上さんは僕のこんな話、興味ないんでしたね。つい…。つまんないこと喋っちゃって…。」
「あ…まあ、俺には関係ない話ではあるけどな。でも言ったでしょ? お前が話したいのなら聞いてやるって。ちゃんと真面目に聞いてるよ。」
「すみません。なかなか話せる相手がいなかったし…前に話して怒られたりしたことがあったもので…ホントは聞いて欲しかったりもしたんだけど…。それで言いたいのに言いたくないっていう矛盾したような感じになっちゃってて…。」
「怒られたって、ナニ?」
「そんな不幸自慢する奴ってよくいるよな…とか、もっと不幸な奴もいるんだから、同情して貰おうなんてするな…とか…。」
「そりゃひどいな。でも、それこそいるよな、そういうこと言う奴…。まあ、少なくとも俺は言わんよ。」
「ええ。あなたはいい人です。」
「…褒められるほどでもないけどね。それで? お姉ちゃんも…。」
「事故…でした。無免許運転で…もちろん自動車保険もはいってない人で…。」
「…ひどいな…。」
「2年前です。…両親は…病気だったから、今言えるうちにって、たくさん言いたいことも言ってくれてたけど――僕はあまり覚えてないけど、姉さんがいろいろ教えてくれました…。でも、その姉さんは事故で突然だったから…何も言い残すことさえ出来ずに……。」
清司はさすがにそこで言葉を詰まらせて涙ぐんだ。無理もない。親のかわりに自分のことは二の次で一生懸命面倒を見てくれてたんだろう。母でもあり父でもある大きな存在のその人を失った心の傷はあまりに大きい。
「だから僕は…生まれ育ったところだけど、いい思い出もあるけれど、それだけにそれ以上に居続けるのが辛くなって…どこでもいいからと直江津を離れたんです。それからはあちこちでいろいろでした。稼ぎもあまりなくて持ってたお金もほとんどなくなって…それで最後に甲府の…あそこで…。」
「ま、後はこないだ聞いたとおり、か。」
「はい…。」
「そっか。ホントに大変だったな。」
「あなたのお陰で、やっと僕も落ち着けました…。ホントにありがとうございます。」
「よせよ、何回も。いいよ。情けは人のためならずって言ったでしょ? 気にすんなよ。俺よりも、実のお兄ちゃんがいてよかったじゃん。それもあんな…ちょっと…なんなんだかって感じもあるが、キホンいい奴だよ、アレは体育会系のノリだな…うらおもてのないタイプと見た。そういうお兄ちゃんが見つかって。また来るってか?」
「はい、今度東京へも来いって…むこうの両親にあわせたいって。それに、妹がいるそうなんです。」
「へえ? 不妊症じゃなかった? その親御さんは。」
「ええ…でも、兄さんを養子にして5年後に、思いもよらなかった、医者にも奇跡的だっていわれたらしいですけど、子どもが出来たそうなんです。それが妹の…実玖ちゃんていったかな、中学生だそうです。実玖ちゃんも兄さんが養子なのは知ってるそうです。で、そのご両親…さんも、実の子が出来たのは凄く嬉しかったけど、それで養子の兄さんを疎んじることがあってはならないと、まったく分け隔てなく実の兄妹のように育ててくれたって…。」
「そりゃあ返す返す立派な親御さんだな。なかなかできることじゃない。」
「ええ。実のわが子でさえ殺してしまうような人もいるって言うのにね…。」
「そう…だな。」
その清司のセリフに俺は胸を突かれる思いでいる。近頃極端に増えている虐待死…。これほど心を暗くさせる事件はない。殺すところまで行かずとも、実の親に虐待された子のトラウマは、他人同士の傷つけあいの比ではないだろう。
それから考えたら、三上君の養父母は偉いものだ。そして、清司の…二人の実の両親もきっといい人たちだったのに違いない。早くに亡くなったのは不幸だけれど、大切にされた記憶が心の、そして細胞のどこかにあれば、ヒトは案外強く生きていけるものだと俺は思っている。だから清司も紆余曲折はあったにしろ、思ったよりも強い芯を持っているんじゃないだろうか。
清司は明るい声で続けた。
「なんかまだ実感はあるようなないようなですけど、でも僕はまだひとりじゃなかったし、血のつながりはないけれど、親族ってよんでもいいような人が一気に増えて、ちょっと変な気分です。」
「でも、悪くないってか。」
「はい!」
「良かったな。俺も安心した。こんどぜひ遊びに行ってやるんだな。妹ちゃんをつれて遊びに来てもらってもいいしな。」
「いいんですか? 僕のところへ来て貰うってことはつまりここへ泊めるってことで、井上さんにいろいろ面倒かけちゃうのに…。」
「なあに、構わんさ。てか、面倒はお前がみりゃいいでしょ。俺は自分のことだけ勝手にやるよ。」
意地悪く笑ってそういってやると、清司は頭をかいて
「そうですよね…。すみません、つい何でも頼っちゃって。」
「頼られるうちがハナかな。」
「兄さんが言ってました。もし僕がここでもひどく苦労してて辛いようなら、自分ちは無理でも、ウチの近くに連れてって暮らしたら良いと思ってたけど、その必要はなさそうだって。井上さんのこと、すごく信用できるし頼りになりそうだからって。」
「ハハハ…そいつは随分買い被られたもんだ。」
「僕もそう思ってますよ! 頼りにしてます! だからこれからもぜひよろしくお願いします!」
そう言って清司は深く頭を下げた。
「ヤバイね、こりゃ…。ま…なんとかね…。」
そういわれりゃ気分が悪いわけはないけれど…。
それにしても、俺も俺だ。なんでここまで人の面倒見てんだろうな。まあ、それが俺の、マスターへの恩返しでもあるわけだが。そう、情けは人のためならず。親切にされたらまたその親切を別の次の誰かにしてあげなさいと、そういうことだ。
つか、俺って結構お人よし? クソッ、これもテツの言ったとおりかよ!
CHAPTER 4 END