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原子力基本法改正 「安全保障」追記の真意は

2012年07月04日 17時21分12秒 | Weblog
原子力基本法改正 「安全保障」追記の真意は ・・・(東京新聞)

(東京新聞「こちら特報部」)より

 「わが国の安全保障に資する」。原子力開発の基本原則を定めた原子力基本法に

奇妙な文言があえて付け加えられた。

原子力利用を平和目的に限定した「原子力の憲法」。

それが、なぜ、いとも簡単に書き換えられたのか。

「日本の核武装に道を開くのでは」という懸念が広がる中、本当の狙いを探った。 

(小坂井文彦、小栗康之)



 「原子力基本法には平和利用が明確に規定されている。懸念は当たらない」。

細野豪志原発事故担当相は二十六日の閣議後会見で、基本法の改正が、

核武装や軍事転用につながるのではという批判を懸命に打ち消した。


 しかし、こうした懸念は内外に広がっている。

知識人らでつくる「世界平和アピール七人委員会」事務局長で、

慶応大名誉教授の小沼通二(みちじ)氏は「安全保障の文言は解釈があいまい。

解釈できないような内容を基本法に載せることは将来、混乱を招く」と批判。

韓国のメディアは「核武装の布石と読める」と報道した。


 細野担当相は「政府として積極的に入れようということではなかった」とも話した。

原子力政策の歴史に詳しい山崎正勝・東京工業大名誉教授(科学史)は

「意図がよく分からない。細野担当相の説明通りなら、よく考えずに、

うっかり加えたということになる」と首をかしげる。


 原子力基本法とは何か。

一九五五年十二月、その前に調印された日米原子力協定を国会で

承認する受け皿として制定された。


 「協定と基本法は、日本への原発導入を目的としたものではなかった」

と山崎氏は指摘する。当時、米国にも商業用の原発はまだなかった。

冷戦下、米国は、旧ソ連を中心とする東側陣営に対抗するため、

原子力という最先端技術を通じて西側陣営を結束させようとしていた。

平和利用をうたう協定を通じ、各国の反核意識を抑えることが米国の狙いだったという。

 
日本でも、水爆実験で被ばくした五四年三月の第五福竜丸事件をきっかけに、

原水爆禁止運動が盛り上がっていた。

基本法には「原子力の研究、開発及び利用は平和の目的に限る」と盛り込まれた。

基になったのは、日本学術会議が提唱した「公開、民主、自主」の原子力三原則。

「基本法は『持たず、つくらず、持ち込ませず』という歴代内閣の

非核三原則の法的根拠になった」(山崎氏)という。


 軍事転用については、米国も当初から認めていなかった。

日米原子力協定では、米国が日本に研究用の濃縮ウランを貸与し、

使用後にプルトニウムを含む核廃棄物を米国に返還する決まりだった。

しかし、日本はその後、商業用の原発を導入。

核拡散防止条約(NPT)に加盟し、プルトニウムやウラン濃縮技術を

核兵器に利用しないことを世界に約束。

使用済み核燃料を再処理する核燃料サイクルを進めてきた。

 福井県敦賀市の高速増殖原型炉もんじゅや青森県六ケ所村の使用済み

核燃料再処理工場(再処理工場)は、そのための施設だ。

 「わが国の安全保障に資する」の文言は、民主、自民、公明の三党による

原子力規制委員会設置法案の修正協議の過程で盛り込まれた。

自民党の要求を民主党が受け入れた。

 問題は「安全保障」の意味だ。

政府側は「安全保障」について、

「核物質の軍事転用を防ぐセーフガード(保障措置)や、核不拡散、

(核テロを防止する)核セキュリティーの意味」と説明する

それなら、わざわざ、軍事的な意味が強い「安全保障」という表現を

使用しないで、そのまま、「核不拡散、核テロ対策」と表現すれば済む。

 もう一つ疑問がある。

政府の主張する核不拡散、核テロ対策などの意味は基本法第二条の

「安全の確保を旨として」で十分に言い表されている。

あえて「安全保障」という表現を付け加える必然性はないことだ。

 小沼氏は「原子力の安全を確保するという意味であるなら、

安全保障の表現はなじまないし、おかしい。

どう解釈していいか分からないようにしている」と指摘する。

ここに拡大解釈の余地が残されているとみる。

 今回の改正でも「原子力利用は平和の目的に限る」との大原則はそのまま残っている。

自民党が将来的な軍事利用の可能性を追求したいのならば、

第二条一項の「目的」に「安全保障」と明記することを主張すればよいのに、

そうはしていない。

 なぜか。

真の狙いは、「潜在的核能力」のアピールであるとの見方もできる。

「いつでも核兵器を製造できる」という姿勢を保つことで、

「抑止力」になるという考え方だ。


◆「基本法自体 全面見直せ」

 自民党の谷垣禎一総裁は最近、「核兵器を開発しなくても、

核エネルギーを利用する技術は確立しなければならないという考えが

(過去に)なかったとは言えない」と発言。

その上で「日本が原発の技術を保持していかないと、核兵器保有国だけが

原子力エネルギー技術を持つことになる。

安全保障などの面で、そういうことになっていいのか」と述べるなど、

潜在的核能力に肯定的な見方を示している。

 核燃料サイクルでは、使用済み核燃料からプルトニウムを生成することができる。

既に日本では、海外に依頼して再処理した分を含め、大量のプルトニウムを保有している。

プルトニウムは核兵器の原料にすることができる。


「潜在的核能力」を誇示するためには、原発と核燃料サイクルの維持が前提となる。


 ところが、核燃料サイクルは風前のともしびだ。

再処理工場は度重なる不具合でいまだに完成していない。

もんじゅの稼働にいたってはいつになるか分からない。

国の原子力委員会の小委員会の議論でも再処理より地中に埋める直接処理の方が

コストが安いという試算が出ている。

 あえて「安全保障」の文言を入れたのは、逆風の中、原発と核燃料サイクルを

維持する根拠とするためではないかという見方も成り立つ。

 社民党の服部良一衆院議員も、その点を指摘し、

「外国の使用済み核燃料を日本が引き取り再処理することで、

核燃料サイクルを維持する根拠ができるという話もある」と言う。

「仮にそのような意図が潜り込まれ、都合よく解釈される余地が

残されているのであれば、大きな問題だ」と批判を強める。


 政府は、今のところ「脱原発依存」の方針に変更はないと説明している。

しかし、この「安全保障」の文言が、将来的な「原発維持」への根拠となる可能性は残る。小沼氏は言う。「基本法自体が原発を推進するものであり、(脱原発に向け)この際、全面的に見直すべきだ」

<デスクメモ> 原発担当相が「自民党の修正で入った」と、

しれっと言うのだから、情けない。

消費税増税法案の修正協議にかまけて、

自民党の言うがまま何でも受け入れたのだろう。

ウラでは、また原子力ムラがうごめいたのか。

これも民主党の限界の一つだ。

ごまかされないよう、目をこらして見る必要がある。 (国)

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