税収見通し46兆円は水増しだったのか?
新政権が今年度の補正予算を見直し、来年度の予算案を厳しくチェックしようとしているのは、別に予算の削減が目的ではない。
税金の使いみちを「コンクリートから人」へ変えようとしているだけである。
国家予算を急に減らしたら、さらなる大不況に陥るのは目に見えている。
そこで、いま問題になっているのは、来年度の税収が当初見通しの46兆円から大きく落ち込み、40兆円を下回る可能性が出てきたことだ。
この不足分をどう穴埋めするかというと、常識的には増税とか国債発行ということになるが、ここへきて「赤字国債増発やむなし」という意見が政府内で強まっているらしい。
昨日、時事通信から「赤字国債発行へ」という報道が流れると、即、反応したのが橋下徹知事。
記者団があれこれ国政についてのコメントを求め、全国ネットのテレビ番組で放映されるお決まりのパターンだ。
「増税はないといいながら赤字国債を発行するのは大衆迎合だ。大うそつきだ」。
橋下知事はこういう物言いを、世間を味方につける自らの成功法則と信じて疑わない。いつまでも同じ法則が通用するわけがないのだが、インパクトあるコメントへのマスコミの期待を意識するあまり、自縄自縛に陥りかけている感もある。
いっぽう、別のテレビ番組では、いつも冷静な前鳥取県知事、片山善博が、豊かな知見と絶妙なバランス感覚を披露する。
「税収見通しがどうしてこんなに外れたのか、原因を究明しておく必要がありますね」
なぜ原因究明の必要があるのか。「予算をたくさんつけるため、財務当局が税収見通しにふくらし粉を入れることがよくあるんです。それが原因だということであれば、国債発行にも理解が得られると思います」
つまり、片山は国債増発を容認する立場だ。麻生政権時代に財務省が税収見込みを水増しして補正を組んだしわ寄せが、鳩山政権の予算編成に及んでいる可能性があるという。
それが確認できれば、事情を国民に説明して、国債増発への理解を求めるべきだという考えのようだ。
民主党のブレーン、榊原英資も「財源は短期的には国債発行で充分賄える」と、“鳩山不況”回避のための積極的国債活用を進言している。
たしかに、鳩山首相は総選挙前に、今年度、補正を含めて44兆円に膨らんだ国債の新規発行額を、来年度は減額すると発言していた。橋下知事はこの鳩山発言をとらえて批判しているのだろう。
今年度の一般会計当初予算約80兆円のうち、約40%の30数兆円が国債発行で賄われている。それに15兆円近い補正予算が加わって44兆円になった。
もし税収が40兆円だとした場合、今年度と同じ規模の当初予算を組むには40数兆円の国債発行が必要となる計算だ。
今年度補正予算の一部凍結で3兆円近い財源をまわすとしても、39兆円とか40兆円近い国債で賄わざるを得ない。
小泉政権時代は新規国債発行額を年30兆円以下に抑えるという緊縮財政であったが、それでも30兆円近い国債を毎年発行して、国債残高を増やし続けていた。国債なしに国家予算は考えられないのが現状だ。
財政健全化という観点からは、国債増発はたしかに好ましいことではない。しかし、社会保障や成長産業への投資などにカネがまわらないような緊縮予算では、不景気はますます深刻化する。
それに、いまや800兆円の国の借金をもって国家財政の危機だと考える人は少なくなってきている。財務省の増税キャンペーンに「財政危機」が使われていたことが知られるようになったからである。
ざっくりとした数字だが、800兆円は国債と地方債を合わせた借金だ。財務省はこれを根拠に、与謝野馨らを政策通に仕立て上げて、増税の必要性を代弁させ続けてきたのである。
もし、この膨大な借金が、外国からドル建てや、ユーロ建てで調達したものなら、日本は正真正銘、巨額債務国として危機に瀕しているだろう。
そうではなく、1500兆円にのぼる日本人の貯蓄のなかから、金融機関や企業が運用したり、個人が買ったりしている円建ての債券なのだから、いまのところ「国家破産」などと極端に心配する必要はない。
かつて、大蔵省財務官として「ミスター円」の異名をとった榊原は文芸春秋10月号にこう書いている。
「国の借金800兆円という議論は所詮、税収増をはかろうとする財務省主計局の中長期的スタンスに過ぎません」
国全体では、榊原が言うように差し引き700兆円の黒字を誇る「世界最大の債権国」という見方もできる。
とはいえ、いつまでも借金を増やし続けていいわけはなく、あくまで国債依存は短期に限るということを前提にしておかねばならないだろう。
特別会計を含め200兆円以上にのぼる国家予算を、これまでのように官製の天下り団体、企業や、特定業界に偏重することなく、環境、農業、健康、安全といったこれからの成長分野に振り向けていけば、自ずから、安定した成熟社会への移行と財政再建への道筋が見えてくるのではないだろうか。
新政権が今年度の補正予算を見直し、来年度の予算案を厳しくチェックしようとしているのは、別に予算の削減が目的ではない。
税金の使いみちを「コンクリートから人」へ変えようとしているだけである。
国家予算を急に減らしたら、さらなる大不況に陥るのは目に見えている。
そこで、いま問題になっているのは、来年度の税収が当初見通しの46兆円から大きく落ち込み、40兆円を下回る可能性が出てきたことだ。
この不足分をどう穴埋めするかというと、常識的には増税とか国債発行ということになるが、ここへきて「赤字国債増発やむなし」という意見が政府内で強まっているらしい。
昨日、時事通信から「赤字国債発行へ」という報道が流れると、即、反応したのが橋下徹知事。
記者団があれこれ国政についてのコメントを求め、全国ネットのテレビ番組で放映されるお決まりのパターンだ。
「増税はないといいながら赤字国債を発行するのは大衆迎合だ。大うそつきだ」。
橋下知事はこういう物言いを、世間を味方につける自らの成功法則と信じて疑わない。いつまでも同じ法則が通用するわけがないのだが、インパクトあるコメントへのマスコミの期待を意識するあまり、自縄自縛に陥りかけている感もある。
いっぽう、別のテレビ番組では、いつも冷静な前鳥取県知事、片山善博が、豊かな知見と絶妙なバランス感覚を披露する。
「税収見通しがどうしてこんなに外れたのか、原因を究明しておく必要がありますね」
なぜ原因究明の必要があるのか。「予算をたくさんつけるため、財務当局が税収見通しにふくらし粉を入れることがよくあるんです。それが原因だということであれば、国債発行にも理解が得られると思います」
つまり、片山は国債増発を容認する立場だ。麻生政権時代に財務省が税収見込みを水増しして補正を組んだしわ寄せが、鳩山政権の予算編成に及んでいる可能性があるという。
それが確認できれば、事情を国民に説明して、国債増発への理解を求めるべきだという考えのようだ。
民主党のブレーン、榊原英資も「財源は短期的には国債発行で充分賄える」と、“鳩山不況”回避のための積極的国債活用を進言している。
たしかに、鳩山首相は総選挙前に、今年度、補正を含めて44兆円に膨らんだ国債の新規発行額を、来年度は減額すると発言していた。橋下知事はこの鳩山発言をとらえて批判しているのだろう。
今年度の一般会計当初予算約80兆円のうち、約40%の30数兆円が国債発行で賄われている。それに15兆円近い補正予算が加わって44兆円になった。
もし税収が40兆円だとした場合、今年度と同じ規模の当初予算を組むには40数兆円の国債発行が必要となる計算だ。
今年度補正予算の一部凍結で3兆円近い財源をまわすとしても、39兆円とか40兆円近い国債で賄わざるを得ない。
小泉政権時代は新規国債発行額を年30兆円以下に抑えるという緊縮財政であったが、それでも30兆円近い国債を毎年発行して、国債残高を増やし続けていた。国債なしに国家予算は考えられないのが現状だ。
財政健全化という観点からは、国債増発はたしかに好ましいことではない。しかし、社会保障や成長産業への投資などにカネがまわらないような緊縮予算では、不景気はますます深刻化する。
それに、いまや800兆円の国の借金をもって国家財政の危機だと考える人は少なくなってきている。財務省の増税キャンペーンに「財政危機」が使われていたことが知られるようになったからである。
ざっくりとした数字だが、800兆円は国債と地方債を合わせた借金だ。財務省はこれを根拠に、与謝野馨らを政策通に仕立て上げて、増税の必要性を代弁させ続けてきたのである。
もし、この膨大な借金が、外国からドル建てや、ユーロ建てで調達したものなら、日本は正真正銘、巨額債務国として危機に瀕しているだろう。
そうではなく、1500兆円にのぼる日本人の貯蓄のなかから、金融機関や企業が運用したり、個人が買ったりしている円建ての債券なのだから、いまのところ「国家破産」などと極端に心配する必要はない。
かつて、大蔵省財務官として「ミスター円」の異名をとった榊原は文芸春秋10月号にこう書いている。
「国の借金800兆円という議論は所詮、税収増をはかろうとする財務省主計局の中長期的スタンスに過ぎません」
国全体では、榊原が言うように差し引き700兆円の黒字を誇る「世界最大の債権国」という見方もできる。
とはいえ、いつまでも借金を増やし続けていいわけはなく、あくまで国債依存は短期に限るということを前提にしておかねばならないだろう。
特別会計を含め200兆円以上にのぼる国家予算を、これまでのように官製の天下り団体、企業や、特定業界に偏重することなく、環境、農業、健康、安全といったこれからの成長分野に振り向けていけば、自ずから、安定した成熟社会への移行と財政再建への道筋が見えてくるのではないだろうか。
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