現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

倉本 采「一〇月のお話 小さな木箱」パックル森のゆかいな仲間所収

2017-04-23 09:27:29 | 作品論
 今回のお話では、ファンタジーの不思議な世界というよりは、ポーとコロンタの友情のお話です。
 フェアリーリング(妖精たちが踊り明かした跡とも魔女たちの集会所とも言われている草むらにできた不思議なわっか)の中に落ちていたオルゴールをめぐって、仲良しならではのちょっとしたいざこざが描かれています。
 パックル森には、旅人のシロハラ(ツグミ科の渡り鳥です)がやってきたり、ポーたちの仲間以外の妖精たちや魔女たちが住んでいるようで、読者の想像力を刺激します。

パックル森のゆかいな仲間 ポーとコロンタ (子どものしあわせ童話セレクション3)
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倉本 采「九月のお話 月夜の音楽会」パックル森のゆかいな仲間所収

2017-04-22 18:28:10 | 作品論
 今回は、秋らしく月夜に開かれる音楽会です。
 へたくそなヴァイオリニストのこおろぎを励まそうと、ポーとコロンタを中心にした妖精仲間、フルフル、ウーリー、ゾンキー(例によって素直には参加しませんが)が、音楽隊を結成して、こおろぎのオーケストラやガマガエルの歌い手と一緒に、満月の夜に楽しいパレードと音楽会が開かれました。
 作者は音楽家でもあるので、音楽界の様子が楽しそうに描かれています。

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美女と野獣

2017-04-22 14:37:11 | 映画
 18世紀に書かれたフランスの異類婚姻譚の代表作ですが、1946年に作られたコクトーの映画で一躍有名になりました。
 しかし、現代の人にとっては、1991年に作られたディズニーアニメの方が知られているでしょう。
 今回の映画は、そのディズニーアニメを原作とした実写版なので、オリジナルの原作の持つ神秘性やコクトー映画の芸術性とは無縁なエンターテインメント作品になっています。
 アニメもそうだったのですが、ミュージカル仕立てになっているので、アニメ時代からのおなじみの曲に新曲も加えて、音楽的には十分に魅力的です。
 また、「シング」の記事にも書きましたが、最近のミュージカル映画は吹き替え陣が歌手やミュージカル俳優を中心に充実しているので、吹き替え版でもオリジナルの魅力を損なうことなく楽しめます。
 かつては、こうしたファンタジー作品はアニメではないと実現しにくかったのですが、人間の演技にCGを加味することで、よりリアルなファンタジー世界を作ることができます(もちろんディズニー映画のように十分にお金をかけられることが条件ですが)。
 それにしても、ハリー・ポッター・シリーズのハーマイオニー役だったエマ・ワトソンが大人の女性として出てくると、時間の流れの速さを感じさせられます。
 なお、いかにも最近のディズニー映画らしく、中世のフランスのはずの作品世界に黒人俳優がたくさん出演しているのは、ダイバーシティとしては正しい在り方なのでしょうが、やはり違和感はやや感じます(本来はヒスパニックやアジア系の俳優も使うべきなのでしょうか)。

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倉本 采「八月のお話」パックル森のゆかいな仲間所収

2017-04-21 08:25:27 | 作品論
 今回は、ポーとコロンタが、こわがりのフルフルが恐れている、ひっそり小道の不思議な光の正体を突き止めるお話です。
 その過程で、ホッホーじいさんとともに、自信をなくしたモモンガのモンモが、また空を飛べるように励まします。
 パックル森には、いろいろと面白そうな場所があるので、全体を示した地図が本の最初にあったら、幼い読者がもっと楽しめるようになるかもしれません。

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櫻井ひろこ「母のいない日」あける28号所収

2017-04-19 16:36:25 | 作品論
 家族の中心にいつもいると思っていたおかあさん。
 それが、突然入院します。
 それも乳ガン。
 いくら早期発見だと言われても、主人公は心配です。
 母の不在。
 それは、子どもたちにとっては最大の試練のひとつでしょう。
 いつもと違う一人だけの夕食の様子が、よく描けています。
 作者には、この作品世界をさらにおし進めて、まとまった作品に仕上げてもらいたいと思います。

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倉本 采「七月のお話 かみなりさまときのこのスープ」パックル森のゆかいな仲間所収

2017-04-19 10:05:57 | 作品論
 今回も、ポーとコロンタを中心に、妖精たちの友情のお話です。
 特に、お星さまにみんなのためにやさしい願い事をするポーと、ちょっとひねくれ者のゾンキーがよく描かれています。
 今回のおいしそうな食べ物は金色のきのこのスープで、不思議なものは空から落ちてきたかみなりさまのおじいさんです。

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倉本 采「六月のお話 雨あがりの朝」パックル森のゆかいな仲間所収

2017-04-18 09:45:33 | 作品論
 今度のお話には食べ物が出てきます。
 それも、子どもたちの大好きな大きなチーズハンバーガーです。
 児童文学での食べ物のシーンはとても大切で、私自身も、子どものころに読んだケネス・グレアムの「楽しい川辺」でカワネズミとモグラがボート遊びに出かけるシーンのお弁当の中身や、バンデレーエフの「金どけい」に出てくる肉汁たっぷりのの肉まんやカターエフの「連隊の子」に出てくるたっぷり砂糖を入れたアツアツの紅茶とシチューなどは、今でもはっきりと覚えています。
 お約束の冒険は、いかだによる川下りでハラハラできます。
 また、年寄りの妖精のホッホーじいさんや野ネズミの家族も登場して、作品世界に時間的や空間的な広がりを与えています。
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原 結子「トカゲじゃない、カナヘビだ。」あける28号所収

2017-04-18 08:55:19 | 同人誌
 作者が、同人誌の合評会に断続的に発表している長編の冒頭です。
 身体の弱い主人公の女の子としゃべることができるカナヘビを中心に、日常とファンタジーの世界が交錯する作品です。
 文章や描写が優れていて、上質な作品世界を生み出しています。
 しゃべれるカナヘビが、「不思議の国のアリス」の白ウサギのように、主人公と読者を不思議な世界にいざなってほしいと願っています。

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倉本 采「五月のお話 ペンキぬり」パックル森のゆかいな仲間所収

2017-04-16 09:32:56 | 作品論
 今回は、ポーの家のドアに、コロンタと二人で、ペンキを塗る話です。
 ゾンキー、ウーリー、フルフルといった妖精の友だちも登場して、例によってすったもんだの大騒動になります。
 どちらかといい子ぞろいのメンバーの中で、問題児のゾンキーが変化をつけています。
 ゾンキーが作った虹に五人が飛び乗っていくラストが印象的です。

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倉本 采「四月のお話 やくそく」パックル森のゆかいな仲間所収

2017-04-15 09:42:46 | 作品論
 「子どものしあわせ」という雑誌に、2016年4月号から2017年3月号まで連載された毎回読み切りの童話を一冊にまとめた本の巻頭作です。
 それに先立って、「お話のはじめに」という文章で、作品世界について解説があり、幼い読者には親切な作りになっています。
 作品の舞台は、妖精たちがすむパックル森で、そこの四季に合わせて一年間の妖精たちの様子が描かれています。
 巻頭のこのお話では、主役のポーとコロンタを初めとした登場人物(妖精)と彼らの関係が手際よく紹介されています。
 親しい友だちとの楽しい遊び(シャボン玉、タンポポの綿毛で何かを作るなど)は、幼い子どもたちにとっては一番大切なものですが、このお話はメルヘン世界なので日常ではできない特別な出来事(綿毛の飛行船、シャボン玉の風船や飛行船など)が体験できます。
 こうした登場人物が幼児の化身であることは、幼年童話の王道(寺村輝夫の「ぼくは王様」や神沢利子の「くまの子ウーフ」(その記事を参照してください)など)で、読者を作品世界に自然にいざなう有効な手法です。
 また、この本では、丘光世の影絵風のイラストがふんだんについていて、幼い読者が作品世界に入っていくのを手助けしています。

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MASHマッシュ

2017-04-14 11:55:06 | 映画
 1970年に公開された、反戦というよりは厭戦映画です。
 腕は抜群ですが常に軍紀を乱す外科医ホークアイを中心にした、型破りな軍医たちが繰り広げるハチャメチャなブラックコメディです。
 国家、軍隊、宗教などの権威を、徹底的にこきおろしていて痛快です。
 朝鮮戦争における野戦部隊を舞台にしていますが、発表時期であきらかなように、当時アメリカが泥沼に落ち込んでいたベトナム戦争を風刺しています。
 世界中の若者たちに支持されて、カンヌ映画祭のパルム・ドールとアカデミー脚色賞などを受賞しています。
 今見ると、ジェンダー観や人種観、LGBTへの配慮などにおいて、かなり古くなっている点はありますが、その本質である人間性を無視する戦争というものへの批判精神は、今でも有効です。
 場所が朝鮮なので、当時の日本の流行歌(「東京シューシャインボーイ」など)が東京からの米軍放送で流れたり、小倉へ行ったと称するシーンもあるのですが、当時のアメリカ人の典型的な日本観(ゲイシャ、赤線など)で描かれています。
 主題歌の「自殺は怖くない」は、当時のフォークソングの流れをくんでいて、今聞いてもなかなかいい曲です。

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