1985年に、当時、非常に人気のあったコンピューター科学者(当時は東京大学の助教授)が、SFが描いた未来世界が、どのように実現されるかを解説した本です。
この本が書かれてから30年以上がたち、著者の予測自体も当たりハズレがあって、今読み直してみると、多くの示唆を含んでいます。
この章では、ジョン・ブラナーが1975年に書いた「衝撃波を乗り切れ」を題材にして、未来予測が日常的になった世界を解説しています。
以下に興味深い項目をあげます。
アルビン・トフラー「第三の波」:1980年に出版された近未来を描いた本でベストセラーになりましたが、すぐにブームは去って1985年の時点では全く見向きもされなくなっていたようです。
家庭百科事典サービス:電話線を使ったデーターベース・サービスか、光ディスクによるサービスなので、価格的にも利便性でも紙の百科事典にたちうちできていませんでした。もちろん、その後に発明されたインターネットによる分散処理によって、現在ではウィキペディアなどが無料で利用できるので、こうしたビジネス自体存在しなくなっています(しいて言えば、電子辞書にその名残があります)。
バグ:この時点でも、大規模ソフトウェアではバグを100%なくすことは不可能だったのですが、現在ではさらにバグが引き起こす社会問題が大規模化しているのはご存じの通りです。
ワーム:自身を複製して他のシステムに拡散するマルウェア(悪意を持ったソフトウェア)で宿主となるソフトウェアを必要とするウィルスとは別の定義なのですが、今は引っくるめてウィルスと呼ばれることが多いので、懐かしいタームになっています。
デルファイ法、クロス・インパクト・マトリクス法、シナリオによる予測、システム・ダイナミックス:いずれも未来予測の手法で、私は事業部のビジネス・プランを立てるために使ったことがありますが、今はほとんど使われていないでしょう。
スーパー・ハッカー:このころはまだ否定的な意味で使われることが多かったと思いますが、現在では非常に重要で価値のある存在と見なされています。
新しい倫理基準:ここではコンピューターを扱う人間に対して求められていますが、AIが一般化した現在では、コンピューター自身にも求められています。