映画「オデッセイ」(その記事を参照してください)の原作です。
ただし、映画のような後日談も含めたヒューマン・ドラマ(実は映画もこの点はかなり弱いのですが)やアクション・シーンを期待して読むと、おそらくがっかりすると思われます。
けっこう長い作品の大半を、火星に取り残された宇宙飛行士がいかにサバイバルしたか、NASAの科学者たちがハードワークしていかに彼を救出するプランを作り出したか、そのプランにそって彼の救出のために再び火星に向かう同僚の宇宙飛行士たちがいかに彼を救出したか、といったことが、科学的に(私はこれらを評価する知識を持ち合わせていないので、実際にどのくらい正しいのかわかりませんが)説明している文章が占めています。
個人的にはこういったディテールにこだわった作品は好きなのですが、少しやりすぎの感はあります。
おそらくこの作品の読者の大半は男性(それも理系の)なのでしょうが、児童文学の世界でもこうした科学的なリアリティにこだわった作品を男の子たちは大好きです。
ただし、現在の女性読者に偏った児童文学業界では、図鑑や伝記を除いては、このような作品を出版するのは難しいでしょう。
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火星の人 |
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