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現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

アンディ・ウィアー「火星の人」

2021-07-23 18:10:01 | 参考文献

 映画「オデッセイ」(その記事を参照してください)の原作です。
 ただし、映画のような後日談も含めたヒューマン・ドラマ(実は映画もこの点はかなり弱いのですが)やアクション・シーンを期待して読むと、おそらくがっかりすると思われます。
 けっこう長い作品の大半を、火星に取り残された宇宙飛行士がいかにサバイバルしたか、NASAの科学者たちがハードワークしていかに彼を救出するプランを作り出したか、そのプランにそって彼の救出のために再び火星に向かう同僚の宇宙飛行士たちがいかに彼を救出したか、といったことが、科学的に(私はこれらを評価する知識を持ち合わせていないので、実際にどのくらい正しいのかわかりませんが)説明している文章が占めています。
 個人的にはこういったディテールにこだわった作品は好きなのですが、少しやりすぎの感はあります。
 おそらくこの作品の読者の大半は男性(それも理系の)なのでしょうが、児童文学の世界でもこうした科学的なリアリティにこだわった作品を男の子たちは大好きです。
 ただし、現在の女性読者に偏った児童文学業界では、図鑑や伝記を除いては、このような作品を出版するのは難しいでしょう。

火星の人
クリエーター情報なし
早川書房
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オデッセイ

2021-07-23 18:08:54 | 映画

 宇宙時代のロビンソン・クルーソーといった趣の作品です。
 火星に取り残された宇宙飛行士が科学的知識を使ってサバイバルしていく様子は面白いし、もちろんCGもすごいのですが、最近のほとんどの大作映画と同様にヒューマンドラマがすごく弱いです。
 火星に取り残されても、ほとんど孤独や絶望感を感じないメンタリティは、アメリカ人らしいといえばそうなのかもしれませんが、あまりにも楽観的で日本人には理解しがたいところもあります。
 また、娯楽映画なのであまりめくじらは立てたくないのですが、あまりにもご都合主義な部分(立派な避難所でディスコミュージックは好きなだけ流せるのに地球との交信設備はまったくない、宇宙飛行士がたまたま植物学者だったので火星でジャガイモを植えることができる、まったく政治的な動きが描かれていないのに中国が救出に協力する、最終的な救出方法は若い黒人が個人的に考え出す)には、苦笑を禁じえません。
 女性にも(宇宙船の船長は女性です)、ヨーロッパ人にも、黒人にも、アジア人にも配慮するのは、世界的にビジネスを展開しなければならないハリウッドの宿命なのでしょうが、あまりにも八方美人的ではないでしょうか。

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