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現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

板垣巴留「BEASTARS1」

2020-06-16 08:46:26 | コミックス
 肉食獣と草食獣が共棲している世界で、彼らの全寮制の高校を舞台にした青春コミックスです。
 肉食獣と草食獣が、それぞれの個性を生かしながら共棲する世界という設定は、ヒットアニメの「ズーラシア」(その記事を参照してください)と同じですが、舞台を全寮制の高校にしたところがこの作品の成功の要因の一つです。
 全寮制の学校という設定は、いじめや競争や友情や恋愛(同性愛も含めて)などを通してドラマを生みやすく、多くの児童文学(例えば、エーリッヒ・ケストナーの「飛ぶ教室」など)やコミックス(例えば、萩尾望都の「トーマの心臓」など)の傑作の舞台になっています。
 しかも、この作品では、男女共学の全寮制高校という設定なので、特に恋愛関係を描きやすくストーリーを支える重要な要素になっています。
 動物ファンタジーとしての擬人化度はかなり高く、動物自体はそれぞれかなりリアルに描かれていますが、人間の服を着て直立歩行しているので、時折見せる野獣としての本能は除いては、知性も含めてほぼ人間の高校生と変わりません。
 そういった意味では、動物ファンタジーの古典であるケネス・グレアムの「楽しい川辺」の正統な後継者と言えます。
 肉食獣と草食獣の共棲が、サイズの違いも含めてすごく工夫されて描かれていますが、それを超えて作品の魅力になっているのは、登場人物のキャラクター設定でしょう。
 特に、主人公のハイイロオオカミのレゴシは、圧倒的な戦闘能力と秘められた凶暴性を持っているのに、それに対してコンプレックスを抱いていて、知的で内向的な性格に設定されているのが秀逸です。
 また、ヒロイン役のドワーフうさぎのハルは、すごく可愛くおとなしそうに見える、男の子だったらみんなかばってやりたくなるような容姿なのに、実はかなりビッチなところがあって、そのギャップが魅力になっています。 
 この二人の関係が肉食獣と草食獣の禁断の恋愛であるために、男女の想いと、捕食する方とされる方の感情も混ざり合って、独特の官能世界を生み出しているところもこの作品の魅力です。


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