天平グレート・ジャーニー─遣唐使・平群広成の数奇な冒険 | |
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講談社 |
しかし……。
4隻の船のうち第1船だけが種子島に漂着、第2船は広州まで流し戻されて帰国は延期、第4船に至ってはその消息は杳として知れません。そして第3船。この船は、南方は崑崙(いまのベトナム)にまで流され、115人いた乗員は現地人の襲撃や風土病でほとんどが死亡、生き残ったのは4人だけだったと史書には記されています。そのひとりが本書の主人公、判官の平群広成なのです。
広成たちはたいへんな苦労の末に長安に戻り、さらに北方は渤海国を経て帰国します。そのとき広成はなぜか天下の名香「全浅香」を携えていたといいますが、それはなぜか?
若き遣唐使の目に世界はどう映じたのか? ふたたび日本の土を踏むまでに何があったのか? 阿倍仲麻呂、吉備真備、山上憶良、玄宗皇帝らオールスターキャストの学芸エンターテインメント。読んで損はさせません! 』
万葉学者の上野誠氏が、フィクションを、それもグレートジャーニーなどという題名の本を書かれたことに驚き、さっそく読んでみた。
史実の間隙をフィクションで埋めて、思った以上に面白い物語に仕上がっている。
遣唐使がかなり危険な航海をしていたことは知られているが、なかでも本書の主人公・平群広成の運命たるや。
遣唐使で有名なのは阿倍仲麻呂、下道真備(吉備真備)、玄妨くらい?
時の皇帝は玄宗皇帝、天皇は聖武天皇、新発見の井真成に、山上憶良、藤原仲麻呂、鑑真等を加え、同時代であったことを実感させた。
もちろん小説家ならもっと肉付けできるのだろうが、素直に読みやすく、よいと思う。
上野誠氏、今後もフィクションも書かれるかな。
ノンフィクションではもどかしい部分を描ければ面白いのではないかな。