始まりに向かって

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「ホピの太陽」・・どこから来て、どこへ行く?

2014-07-24 | ホピ族


北沢方邦氏の「ホピの太陽」を、久しぶりに読み返してみました。
1976年に書かれたものです。

リンクは張っておりませんが、アマゾンなどでご購入になれます。


           *****

          (引用ここから)


ホピの伝説によると、マヤやアステカは、人類誕生の日に「父なる天」と「母なる大地」から教えられた教えにそむき、巨大な都市を築き、権力に酔い、邪悪な宗教を創始して亡びることとなった「ホピの悪い兄弟」であるという。

ホピは創造主たちの教えを忠実に守り、彼らとたもとを分かって、北への道を辿った少数派であり、マヤやアステカが亡びた後にも創造主たちの「予言」の成就を見届けるために生き続けることを運命づけられた部族であるという。

マヤやアステカとホピが種族的・文化的に親戚関係にあることは、ホピの言語がアステカ語族の一種であるショショニー語であることや、その人種的特徴(幼児の蒙古斑など)からも、また祭祀や儀礼のある種の共通性などからも証明されている。

しかしマヤやアステカの好戦性や残虐性は、およそホピの平和性とは対照的である。


ホピの神話によれば、戦争や暴力行為は常に「父なる天」の教えに背くものであり、過去の「第一・第二・第三の世界」の滅亡は、必ずそれが原因で起こったこととなる。

すなわち「第一の世界」は、すべての生命が誕生し、人間も動植物も分け隔てなく暮らしていた理想の世界であったが、おしゃべりなモチニ鳥が、人間と動物との差別や、言葉や皮膚の色の違いによる人間相互の差別を人々に吹き込み、悪知恵をもつカトナ蛇が、お互いに他人を疑うことを教え、そうして人間たちが争い始めたが故に、「父なる天」によって、火の雨と火山の爆発などの中で滅ぼされてしまったのである。

「父なる天」の教えを守っていた「選ばれた少数の人々」だけが、「母なる大地」の導きで蟻の民のキバに逃れて、「第二の世界」に生き延びる。

しかし蟻の民にならって食物の集め方や貯蔵法、家やキバの作り方などといった人間固有の文化を創り出した「第二の世界」も、村々や部族が対立し、部族間戦争を始めたがゆえに滅ぼされ、全世界は「父なる天」によって氷結されてしまうのだ。

ここでも「父なる天」の教えを守る少数の人々は、温かな蟻の民のキバに逃れて、「第三の世界 」に生き残ることとなる。

しかし「第三の世界」は、文明が生まれ数多くの巨大な石造りの都市が建設されるが、また人々の悪い知恵が極度に発達した時代でもある。

諸都市の間で戦争が起こり、武装した人々は「空飛ぶ円板」に乗って都市を攻撃して回る。

「父なる天」は再び大洪水によって「第3の世界」を滅ぼす。

「父なる天」の教えを守る少数の人々だけが、大きな中空の「葦の舟」に乗って脱出し、「第4の世界」、すなわち現在の世界へと到達する。


火山の噴火、大氷河時代、旧約聖書のノアの方舟の記述とも一致する大洪水と、ホピの神話は、地球の年代記をかなり正確に反映しているように思われる。

「第4の世界」が同時にアメリカ大陸を指しているのは確かであるらしく、すでにその一部を紹介した各種族固有の移住説伝説はこの「第4の世界」の中で展開されるのである。

しかし神話によると「第4の世界」への到達は、大洪水後、海に浮かぶいくつかの島々を経てなされたことになっていて、アメリカ大陸への人類の移住はベーリング海峡伝いに行われた、とする考古学的な通説と矛盾している。

その上、ホピの人々はベーリング海峡をアメリカ大陸の「裏口」と呼んでいて、ホピはアパッチやナバホのように「裏口」からやって来たのではなく、「表口」からこの大陸にやって来た最初の人類であると固く信じ、伝承してきている。

スペイン軍の侵入によるアステカ滅亡の時、マヤ・アステカの文明の歴史が亡びることを恐れた無名の祭司の手で、侵略者スペインの文字であるローマ字で書き記されたマヤの神話と歴史の書「ポポル・ヴフ」にも、マヤの先祖たちは水没した大陸(ホピの言う「第3の世界」から島伝いにアメリカ大陸にやって来た、と記され、ホピの神話を裏付けている。

ポリネシア人は南米から移住したインディオであるとするヘイエルダールの仮設とは逆に、彼らの先祖たちは、太平洋の島伝いにやって来た、という想像も成り立たなくもない。

そこに、失われたムー大陸の伝説(ポリネシアの島々は水没したムー大陸の山々であった、とする)が加われば、この創造図は完璧となろう。


いずれにしてもホピがこれらの廃墟も含み、北米南部から中南米一帯にかけて繁栄した古代中世文明・・その規模と質の高さにおいてアジアや中近東、あるいはヨーロッパの古代諸文明のみが匹敵しうる・・の担い手たちの子孫であることは、疑うことのできない事実である。

人口わずか7000人のこの一部族の所有する膨大な神話と伝説、多くの民族学者たちに悲鳴を上げさせた、その複雑にして高度に抽象的、哲学的な祭祀や儀礼の諸体系、医療や薬草についての博大な知識などは、何よりもそのことを証明しているであろう。


私たちはホピの最も西の端に位置するモエンコピの村に向かった。

私たちが車を止めた村の東のはずれはまた、中世代の恐竜ティラノザウルスの足跡が保存されている場所でもある。

平らな火山岩の上に、恐らくそれがまだ熱をもって柔らかい間に踏まれたものであろう、直径50~60センチの3つ跡の足跡が点々と東の方向に連なり、消えている。

鳴動し噴火する火山、溶岩流、沸騰する蒸気、火山性ガス、逃げまどう巨大な爬虫類・・「第1の世界」の滅亡はこんな状況であったのであろうか?

足跡を保護する金網のたな越しに、私たちはしばし神話的古代に想像をはせていた。


           (引用ここまで)


             *****


この話は何度もご紹介していますが、その度に不思議な気持ちになります。

なにか、大きな謎があり、幾度訪れても迷子になってしまう土地のような、懐かしいような、わけの分からない迷宮に入ったきり出られなくなったような気持ちになります。


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