やまゆり園のことはまだ続けますが、「みいちゃんの挽歌・・知的障がい者施設の中で何があったのか」という本を読んでみました。
リンクは張っておりませんが、アマゾンなどでご購入になれます。
著者は、殺された自閉症の「みいちゃん」のお母さまで、ペンネームは「瑞木志穂」となっており、その文字の中に、娘さんの本名=「瑞穂」(みずほ)という文字が埋め込まれています。
なぜこんな事件が起きたのか?
その後、解明されたのか?
悲しいことに、なにもわからないのです。
こんな理不尽なことがあるでしょうか?
暗澹たる気持ちで読み終えました。
ここでは、「前書き」と「目次」と「後書き」だけを載せます。
重い問題です。
まずは「前書き」をご紹介します。
*****
(引用ここから)
1992年3月14日、私の娘・瑞穂は千葉県内にある知的障がい者施設S園で、行方不明になりました。
瑞穂は3才10か月頃に、大学病院で自閉的傾向児と診断されました。
中肉中背だった瑞穂は、一般の人のような普通の会話はできなかったものの、人から話しかけられたことはほとんど理解できました。
19才の時からS園で生活していて、24才になっていました。
そのころには幼い時からの試行錯誤の教育がようやく実を結び、また手先の器用さも手伝って、一般に販売できるほどの手芸作品も製作していました。
私はそうした瑞穂のこれからの成長を楽しみに、そして期待もしていました。
それなのに、、。
「園の中はすみずみまで捜しましたが、いません」
というS園側の説明で、私たちは文字通り必死の思いで園の外部を捜索しました。
ところが、行方不明になってから13日目に、瑞穂は園の中から無残な焼死体となって発見されたのです。
瑞穂のその死は、どう見てもどう考えても、不可解としか言いようがありませんでした。
そのため夫と私は、情報を集められるだけ集め、瑞穂の死から3年近く経ってから、民事事件としてS園を提訴しました。
娘の死の真相を知るには、その裁判を通して知るしか方法がなかったからです。
この本は、娘・瑞穂が行方不明になった当初から、1999年3月29日にあった一審の判決までを、事実に基づいてドキュメントとして綴ったものです。
その間、世間では福祉を目的にうたった福祉工場の社長による知的障碍者への犯罪(水戸事件)や、福島にある知的障害者施設での園長による暴力や薬漬け事件などが、マスコミで大きく報道されました。
しかし、この種の問題が表面化するのは氷山の一角で、多くの場合は世間に知られることもなく、片付けられているのが現状です。
福島県の事件報道から数か月後、東京都社会福祉協議会が知的障碍者施設での暴力事件をまとめた小冊子を、施設関係者以外の一般の人々にも配布することを新聞で知りました。
さっそく注文したのですが、長い間待たされた挙句、「どこの施設か分かってしまうので、施設関係者以外には配りません」という理由で、ついにわたしの手元には届けられませんでした。
こうして、知的障碍者施設という密室の中の出来事は、世に問われることなく葬り去られてしまうことを、私は改めて思い知らされました。
とはいうものの、知的障碍者施設の入所者にたいして、献身的に接している施設職員が数多くいることも私は知っています。
実際に、この本に登場する施設の中にも、何人かはおられました。
その一方で、声なき声で叫んでいる入所者がいることもまた、確かな事実なのです。
娘・瑞穂の死を無駄にしたくない思いから綴り始めた私のつたない文章が、そうした人々のために、いくばくかのお役にたつことを願ってやみません。
もしそうなれば、瑞穂の魂も少しは救われるのではないかと思います。
と同時に、この本を書かずにいられなかった、私自身も。。
(引用ここまで・続く)
*****
wikipedia「水戸事件」より
「水戸事件」は、1995年に茨城県水戸市で発覚した知的障害者に対する暴行・強姦事件。
裁判の過程で、行政・司法当局の知的障害者に対する無理解が明るみに出ることとなったと被害者側の支援者が主張している。
事件の概要
茨城県水戸市の段ボール加工会社の有限会社アカス紙器(有限会社水戸パッケージを経て現・有限会社クリーン水戸)は積極的に知的障害者を従業員として雇用し、従業員全員を会社の寮に住まわせていた。
アカス紙器の赤須正夫社長は、障害者雇用に熱心な名士として地元では尊敬されていた。
しかし1995年10月、アカス紙器が障害者雇用により国から交付される特定求職者雇用開発助成金を受け取っていながら、実際には知的障害者の従業員に対してほとんど賃金を支払っていないことが発覚し、翌年社長は詐欺容疑で逮捕された。
詐欺容疑で赤須正夫社長の近辺を捜査する過程、彼が長年にわたり、従業員の知的障害者に対して虐待を行っていたことが判明した。
その内容は、角材や野球のバットで殴る・両膝の裏にジュースの缶や角材を挟んで正座させ、膝の上に漬物石を乗せて長時間座らせておくといった拷問ともいうべきものであった。
知的障害者の従業員たちは満足に食事を与えられておらず、時にはタバスコをふりかけた飯や腐ったバナナなどを食べさせられることもあったという。
さらに知的障害者の女性従業員に対する強姦も頻繁に行われ、被害者は10人近くにのぼると言われている。
水戸警察署は、詐欺事件だけでなく知的障害者に対する暴行・強姦事件に関しても捜査を開始したが、被害を受けた日時や状況を正確に証言出来る被害者が少なく、「公判を維持できない」という理由で警察も水戸地方検察庁も立件に消極的であった。
結局、社長は詐欺罪および暴行2件・傷害1件で起訴され、それ以外の暴行・強姦事件はすべて不起訴となった。
(テレビドラマ作家・野島伸司氏により「聖者の行進」というテレビドラマが作られています。)
ブログ内関連記事
「チンパンジーより平和なボノボ・・殺人する猿、しない猿。。」
「利他的遺伝子・・「自分」と「自分達」は、どう違うのだろうか?」
「愛されているという感覚・・キャンディーズのスーちゃん」
「なぜ人を殺してはいけないのか?(1)・・「殺すなかれ」の声を聴く」(2)あり
「心身障がい」カテゴリー全般
言葉を持たない重度知的障害者ほど世の中の人に利用されてしまうのですね。軽度で療育手帳B2だと逆に自分の障害を逆手に取って自分の利益になることには驚くほど利用するという人を私は知っています。
障害者にも人権はもちろんありますしこのような事件が二度とおこらないように祈るばかりです。5
コメントをどうもありがとうございます。
この事件は、本当に「ひどすぎる」の一語に尽きますね。
なぜ、どうして、どうやって、、すべてが「うやむや」なままなのですね。
最近、入社早々、過労死で自殺してしまわれた若い女性の方のことが、社会では大きく取り扱われています。
彼女の場合、有名大学を出て、有名企業に就職してのことでしたので、社会も大きく取り上げ、企業側も謝罪をしました。
でも、声も無く世の中から消されてしまう人びともいるのですよね。
どんなに生きたいと願っていても。。
この事件も、ご両親が協力して、事実を追いかけて、また、本という形で世に問うという、大変な努力をして、やっと世の中に知られるようになったのだと思います。
声なき声、と言いますが、声はあるのです。
ご冥福をお祈りし、二度とこのような悲惨な事件が起きませんよう、お祈りいたします。