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和歌山・太地町の「追い込み漁」非難・・水族館のイルカの入手も禁止に

2015-11-11 | その他先住民族



「捕獲イルカとの交配 重要・・追い込み漁禁止に対応」
                           読売新聞2015・06・22

  
                   ・・・・・

日本動物園水族館協会が、世界動物園水族館協会の警告に従い、和歌山県太地町で行われている追い込み漁で捕獲したイルカの入手を加盟水族館に禁じる決定をした。

東京海洋大教授・加藤秀弘氏にインタヴューした。


〇今回の決定と今後の展望をどう見ていますか?

●加藤

世界動物園水族館協会の警告の背景には、「追い込み漁」に反対する環境団体の圧力があったとされている。

イルカをめぐる思想的な問題に、日本の水族館が巻き込まれたということだろう。

「国際捕鯨取締条約」や「漁業法」に照らしても、「追い込み漁」に違法性はない。

漁民にとっては、伝統を守り、持続的な仕事として漁村を支えてきた誇るべきものだ。

水族館用に必要な頭数を捕獲した後、残りは海に逃がすなどの工夫もしてきた。

私は、世界動物園水族館協会が、漁を「残酷だ」とする指摘には、具体性が伴っていないと考えている。

とは言え、日本動物園水族館協会はあくまで動物園と水族館の組織だ。

世界動物園水族館協会から離脱した場合、動物園は海外から希少動物を入手したり、交換したりする際に支障が生じるおそれがある。

日本動物園水族館協会が水族館と動物園の全加盟施設を対象に行った投票で、世界動物園水族館協会への「残留」」が「離脱」を上回った。

動物園の多くが「残留」に傾いたためと見られるが、これを非難はできない。

今回の決定で、日本動物園水族館協会に加盟する国内の水族館は、イルカの人工繁殖に本格的に取り組むことになる。

ただ、イルカの繁殖技術だけでなく、様々な課題がある。

繁殖では、限られた範囲での交配を繰り返さざるを得ない。

そもそもイルカは病気にあまり強くなく、こうした交配で遺伝的な多様性が失われた結果、さらに病弱なイルカが生まれる可能性が高まるだろう。

また、動物園や水族館は、レジャーだけではなく、教育という役割も併せ持っている。

展示を通じて自然を知り、環境や生物を大切にする考えを学ぶ重要な施設だ。

水族館で生まれ育ち、海で泳いだことの無いようなイルカばかりで、来場者に躍動感や自然の尊さを実感してもらうことができるのか?という疑問は残る。

こうした課題を考えると、人工繁殖だけに頼るのは現実的ではない。

自然界で捕獲したイルカと、水族館で繁殖させたイルカを適度に交配させることが、健康なイルカの確保のためにも、展示のさらなる充実のためにも重要だ。


               ・・・・・



新聞記事を読んで、イルカ漁は縄文時代から、日本の各地で行われていたことを思い出しました。

なぜ、鯨とイルカだけが、捕獲禁止なのでしょうか?

関口雄祐氏の「イルカを食べちゃだめですか?科学者の追い込み漁体験記」という本を読んでみました。

リンクは張っておりませんが、アマゾンなどでご購入になれます。


              *****


            (引用ここから)

<クジラを食べるということ>

国際的に認められている「先住民生存捕鯨」

今の時代にイルカやクジラを獲って食べることはおかしいのだろうか?

人は、いや生き物は、何かを食べて生きていかねばならない。

その何かは、往々にして、他の生き物である。

だとすれば、クジラを食べることに批判が上がるのは、生き物だからではない。

では、野生動物だから問題になるのだろうか?

IWCは、加盟国における捕鯨を管理し、商業捕鯨は一時停止状態であるが、例外的に「先住民生存捕鯨」が、世界の数か所で認められている。

これは「地域に密着した伝統で、生存に直接必要な捕鯨」とされるもので、IWC的思考としては珍しく、人の生活に視点を置いた措置で、評価できる。

例えばベーリング海~チュクチ海~ボーフォート海海域の北極クジラについて、2008年から2012年までの間に280頭(1年平均で56頭)捕獲できる(1年間での銛打ちは67回を超えないこと)とする「先住民族生存捕鯨」捕獲枠が、全体合意で設定された。

この海域における北極クジラの生息数は8000~10000頭と考えられている。

この、年平均56頭の捕獲は、最低資源量8000頭の0・7パーセントに当たり、北極クジラの自然増加率は約3%と考えられているので、資源の利用として問題ないとされる。

「先住民生存捕鯨」は、他にも、グリーンランドとカリブ海の一部の国で認められている。

これらは先住民の生活保護のために例外的に認められたとされるが、先住民生存捕鯨だからといって、なにもかも伝統的な方式を保っているわけではない。

船も、用具も、処理も、流通も、現在様式にまったく関わることなく行うことはできない。

「先住民族生存捕鯨」の必要要素に、鯨肉を商業流通させていないことが挙げられる。

太地では、鯨肉はもらうもので、基本的に買わない、非商業的分配が主流である。

これは「追い込み漁」の捕獲物でも、沿岸小型捕鯨の捕獲物でも同様で、地域的な特性と考えてよい。

「捕鯨モラトリアム」以降、太地を日本中で鯨肉の供給量が減り、その結果、太地でも、鯨肉の供給量、流通量は下がっている。

「太地でさえ、捕鯨文化は風前の灯だ」などとささやかれることもある。

実際に一人あたりの消費量は、減っているだろう。

しかし、非商業的な分配に重きが置かれ、そしてその仕組みが今なお残っていることは、そのまま文化の根の深さを物語るものだ。

通常の商業捕鯨とも、「先住民生存捕鯨」とも異なる捕鯨の存在は、それ自体が、日本の捕鯨文化の多様性を表している。

特に太地に関しては、沿岸小型捕鯨のみが、地域の捕鯨文化を表しているわけではなく、イルカ追い込み漁などと相まって形成されている。

本来、「先住民生存捕鯨」は、地域を考える仕組みであり、沿岸小型捕鯨という捕鯨の一タイプについて評価するべきではなかったのだ。

文化とは、固定されたものではなく、変化していくものだ。

現在の追い込み漁が40年ほどの歴史しかないとか、沿岸小型捕鯨が捕鯨砲という近代的な装備で捕鯨を用いるとか、そういった特徴は、時代の変化に合わせた文化の変化であり、一連の捕鯨文化からは決して逸脱
したものではない。


<捕鯨は日本の文化か>

「先住民生存捕鯨」のみならず、イルカ漁を含めた捕鯨は、すべてその必要性、すなわち食べるための手段として始まったはずである。

現在もこれに関わる漁師たちにとっては、生計を立てるための手段であることに変わりはない。

イルカがいるからイルカ漁ができて、鯨がいるから捕鯨が発達する。

鯨に対する関わりの強さ、つまり捕鯨文化あるいは鯨食文化になじんでいるかどうかは日本の国内にも大きな地域差がある。

日本人同士でも、この認識が薄いがために混乱を招く。

捕鯨に強く関わってきた地域があり、別の地域では年に数回の捕鯨の食文化があり、あるいはまったくクジラに関わることの無かった地域がある。

これが文化の多様性だ。

各個人の背負う文化が異なる以上、「日本の文化」を総意として表そうとすることが無理なのだ。

例えば日本には、「昆虫食」の文化を持つ地域がある。

同様に、「豚足」を食する地域がある。

それらと同列に、捕鯨をする地域があるという姿勢でよいのではないだろうか?

       
          (引用ここまで)

           
            *****


「兵庫県立公庫博物館スタッフブログ・縄文時代のイルカ漁の名人」


 wikipedia「豚足」より

豚足(とんそく)とは、食用とされる豚肉の部位で、通常は足関節より下の部分を指す。
中国、台湾、朝鮮半島、東南アジアなどではポピュラーな食材であり、日本では沖縄県や鹿児島県奄美地方(旧琉球国文化圏)でよく食べられている。


 wikipedia「昆虫食」より

昆虫食(こんちゅうしょく)とは、ハチの幼虫、イナゴなど、昆虫を食べることである。食材としては幼虫や蛹(さなぎ)が比較的多く用いられるが、成虫や卵も対象とされる。アジア29国、南北アメリカ23国で食べられ、アフリカの36国では少なくとも527の昆虫が食べられており、世界で食用にされる昆虫の種類を細かく集計すると1,400種にものぼるといわれる




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4 コメント

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大宇宙のささやき より引用 (ココロ)
2015-11-24 19:16:43
バシャール:彼らは、みなさんが言うような「動物」ではありません。
外見は違いますが、あなた達と同じタイプの魂です。
「輪廻転生」という話からすると、たくさんのイルカたちが、もと人間であって、たくさんの人間達が、もとイルカであったりします。

バシャール:イルカというのは非常にテレパシーをよく使っています。そして何千年もの間、他の惑星達とコンタクトしています。
また、皆さんがお産をするときには、非常にそばにいてくれて助けてくれています。
彼らの愛情とエネルギーをもう少し頼ってあげてください。

このお話によるとイルカやクジラは動物というカテゴリーでなく人間と同類なんだそうです。
だから魅了され、引きつけられる人々が多いのではないでしょうか?

イルカやクジラ以外にもありあまるほど食べるものは日本にはあります。
なぜ、わざわざこの日本で、この時代に、伝統だといいそれを続けるのでしょうか?

日本人のほとんどは、きっとこの事に反対ではないかと思います。
もし水族館や海でイルカやクジラに出会ったり、心待ちにしている子供たちが
この「伝統」を目の当たりにしたら、きっととても心を痛めるに違いないのだと思います。

でも、イルカやクジラは人間の仕打ちを愛で許してくれているそうですよ。
それから人間たちに、そんなに悩んでばかりいないでもっと一緒にあそぼうよ!といってくれているそうです。
返信する
コメントありがとうございます。 (veera)
2015-11-25 20:14:24
ココロさま

コメントをどうもありがとうございます。
わたしも、個人的には、イルカを味噌煮にして食べたいとかは、思っていません。
ただ、サバの味噌煮は良くて、イルカの味噌煮はなぜいけないのか?引用した文章にもある「先住民生存捕鯨」の擁護がしたくて、記事を書きました。

当然、このようなご意見をいただくと思っておりました。
わたしも反対者でないことは、重ねて申し上げます。
「ブログ内関連記事」として、イルカと深く愛をかわしたジャック・マイヨールの紹介記事もリンクを張っています。
今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げますね。
返信する
Unknown (安眠)
2016-04-07 16:15:45
私は捕鯨に賛成です。
日本政府は、日本国民を守るのが第一の努めです。
それは、現在だけでなく未来の国民をもです。
今、食べ物に困っていないからといって、未来永劫困らない保証はありません。現在は輸入に頼っているだけで、この狭い国土では全国民を養えるだけの食料は確保できないじゃないですか。
つい、70年前、戦時中の日本は、外国からの輸入を絶たれ飢餓に苦しんだばかりです。
政府には、外国の圧力で捕鯨技術を失ってしまうより、未来の国民の命を守るために捕鯨を続けて欲しいです。
絶滅危惧種以外の捕鯨反対は理論的ではありません。
それに、「混獲」という名目で日本よりたくさんイルカやクジラを捕っている国(アメリカや韓国)こそ、きちんと捕鯨の実態を世界に知らせるべきです。
返信する
コメントありがとうございます。 (veera)
2016-04-11 03:28:51
安眠さま

コメント、どうもありがとうございます。
わたしも捕鯨に反対することが感情的に思えてなりません。
国民の食料の、国内自給率を高めることはとても大切だと思います。

オーストラリアの牛肉はごちそうで良き食べ物で、くじらを食するのは忌まわしき野蛮な伝統である、という考えはどうもなじみません。
古来、日本に生息していた民族は狩猟採集民であったことを思い出し、そのことに誇りをもってもよいと思っております。
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