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西村幹也氏の「もっとしりたい国モンゴル」のご紹介を続けさせていただきます。
リンクは張っておりませんが、アマゾンなどでご購入になれます。
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(引用ここから)
儀礼の準備には、それなりに時間がかかる。
まずは太鼓をストーブなどであぶって、よく乾かさねばならない。
シャーマンの太鼓は、シャーマンが「オンゴット」の許へと向かう時の乗り物になるという。
ソビヤン婆さんの太鼓には、メス鹿の絵が描かれていた。
トナカイに乗って移動する「ツァータン」ならでは、というところであろう。
太鼓を叩くバチは、ムチと呼ばれる。
太鼓の音は、乗り物の駆ける様子を表わしているという。
したがってよく乾いていい音がすればするほど、シャーマンの乗り物が調子よく走っているということになるのだ。
皮でできた衣装には、たくさんの金属片が縫いつけられている。
刀の形や、人型、鈴のように音が鳴るようになっているものなどで、これらは「オンゴット」をかたどったものであると同時に、悪い「オンゴット」からシャーマンが身を守るために必要なのだと言う。
肩からは、たくさんの細い布がぶら下げられている。
布一本一本がそれぞれ家族たちの「オンゴット」とされ、シャーマンを助けることになる。
儀礼の度に、新しい布を縫いつけていく。
たくさん縫い付けられていれば、それだけ多くの回数の儀礼をこなしてきたことになる。
当然、シャーマンの力の象徴にもなる。
帽子は、黒ライチョウの羽やイヌワシの羽、フクロウの羽などで作られ、額の部分の布には顔が刺繍される。
靴には鳥の足のような刺繍が施され、シャーマンが衣装を一式身にまとうと、鳥のようになるのだ。
どうも、鳥になったり、鹿に乗ったりと話が今一つまとまらないが、とにかくどこかへシャーマンは出向くことには間違いない。
儀礼中はソビヤン婆さんはトバ語を使う。
彼らはトバ人であり、祖先たちと会話をするのなら当然トバ語だ。
正直、勉強不足な私には何を言っているのか分からないのだが、参列者に聞くに、「迎えに来た「オンゴット」と共にどこどこの土地にやってきたところだ」とか、参列者の誰かが胸に思ってる依頼に対して「オンゴット」が何を言っているのかを伝えたりする」のだそうだ。
そして参列者全員が順番に、一人一人呼び出されて、婆さんの前に座らされる。
婆さんが投げたバチを、服の裾で受け取らされる。
婆さんは三度バチを放り投げ、次の受け手を呼び出す。
バチの落ち具合で占いをするのだ。
また、狩猟活動を活発に行う「ツァータン」たちにとっても、シャーマンは重要な存在のようだった。
「ツァータン」たちはトナカイの飼育を行う地域を日常生活の場として「タイガ」と呼ぶのに対して、狩場の場を「ヘール」と呼ぶ。
これはモンゴル語で「草原、平原」を意味するが、“誰のものでもない場所”を暗示し、人間の力が全く及ばない危険な場所を示す。
「ツァータン」は「ヘール」に向かう際、いつも婆さんの所にやってきていた。
人間の世界と「オンゴット」の世界を自由に行き来する婆さんは、いわば二つの世界の出入り口的な存在となっているようで、通常の生活空間から狩場へと行く時に彼女に会ってから行くのは、非常に興味深い現象であった。
といっても、婆さんはお茶を飲ませ、いついつ、誰がどこらへんに行った、という話をべらべらするだけで、特にお祓いや儀式的なことは何もしない。
しかし、すべての狩場の状況に関する情報センターの役割を果たしているようではあった。
婆さんは朝一番に起きるや、誰がいてもいなくても、聞いていてもいなくても、ずっと話し続け、語り続け、歌を歌っている。
そんな人であった。
「歌を録音したいって?
歌なんて忘れちゃったよ、歌えないよ、シシシ。。」と笑って茶を入れながら歌いだす。
そんな人だった。
「タイガ」や「ヘール」のすべてを知っているかのような婆さんは、推定106才で「オンゴット」になってしまった。
きっとどこかの土地を守り、若いシャーマンがやって来た時に、「シシシ。。歌なんて知らないよ」などと言うのかもしれない。
(引用ここまで)
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>「ツァータン」たちはトナカイの飼育を行う地域を日常生活の場として「タイガ」と呼ぶのに対して、狩場の場を「ヘール」と呼ぶ。
>これはモンゴル語で「草原、平原」を意味するが、“誰のものでもない場所”を暗示し、人間の力が全く及ばない危険な場所を示す。
そうなのだろうなぁ、と思います。
狩場は、〝日常の場所ではない、そして、人間の力が全く及ばない危険な場所”なのだろうと思います。
野生動物との接触は、非日常的な世界なのだろうと思います。
そしてそこに、人間の原点があるのだろうと感じます。
>婆さんは朝一番に起きるや、誰がいてもいなくても、聞いていてもいなくても、ずっと話し続け、語り続け、歌を歌っている。
>そんな人であった。
>「歌を録音したいって?
歌なんて忘れちゃったよ、歌えないよ、シシシ。。」と笑って茶を入れながら歌いだす。
なんだか親しみがわきます。
こういう人、いいなあ、と思います。
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