引き続き「まつろわぬ日本の神々」から斎藤英喜氏の「豊受大神・伊勢外宮へ遷座した未来の「天帝」という文章をご紹介したいと思います。
なかなかスリリングな説が展開されています。
リンクは張っておりませんが、アマゾンなどでご購入になれます。
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(引用ここから)
要約すると、昔、丹後国丹波郡のひじ山の山頂に「真名井」と呼ばれる泉があった。
そこへ8人の天女が水浴するために舞い降りた。
そこに和奈佐という名の老夫婦が現れ、一人の天女の羽衣を隠した。
天に帰れなくなった天女を養女にして十年以上一緒に生活した。
その間天女は自分の口で穀物をかみ砕いて唾液を混ぜて、文字通り〝かも(噛むが語源)した”、万病に効く酒を作って、老夫婦を富ませた。
しかし後に家を追われ、竹野郡の船木の里の、奈具の村に留まった。
これが竹野郡の奈具社の「豊宇賀能命」である。
「トヨケ儀式帳」によれば、このトユケの神が天照大神が伊勢の五十鈴川に鎮座してから482年後の、雄略天皇22年(478)、丹波国ひじ真名井原から伊勢の山田が原に迎えられたのである。
すなわち、雄略天皇の夢の中に天照大神が立たれて、「われは高天原にいた時、求めていた宮処にしずまることができた。
しかし一所にいるのはまことに苦しい。
大御食を安らかに召し上がることができない。丹波国ひじの真名井から豊受大神を迎えてほしい」と告げたという。
これが伊勢神宮の外宮(豊受大神宮)の始まりである。
すなわち豊受大神は、丹波のひじの真名井に舞い降りた天女の一人だったのである。
比較神話学によれば、こうした天女はいずれも〝星の精”であったらしい。
トユケ一人を地上に置いて天上へ帰ってしまった他の7人の天女たちは、当然、「北斗七星」を想起させる。
そうだとすると、トユケは何に相当するのか?
ところで、「北斗七星」の第6星の外側に、実は「補星」と呼ばれる小さな星がついている。
和名を「そえ星」というが、これを加えると8星になる。
「北斗七星はこの星を入れると8個で、陰陽道ではこの星を重視し、「金輪星」といって信仰の対象にしている」(吉野裕子著「隠された神々」)という。
この金輪星=そえ星は、8人の天女の一番下の妹のトユケだったのである。
しかしこの説に従うと、トユケが「北斗七星」に付随する存在になってしまう。
伊勢神道のようにトユケを最高神として捉えることはできなくなってしまう。
ところがこの「そえ星」は、単なる助星ではないのである。
周知のように、地球の回転軸(地軸)は公転面にたいして約66・54度傾いているが、それが逆の方向に揺れた時、この助星は未来の北極星になるらしい。
未来の天帝=「太一」の座に、トユケが座るのである。
つまりトユケの大神は、釈迦の涅槃の56億7000万年後に兜率天からこの世に降臨するという、〝未来仏”としての〝弥勒菩薩的存在”だったのである。
今日の宗教を見ていると、自らはまったく意識していないけれど、紫微宮の、未来の天帝に座すトユケの降臨を願って祭っている教団が何か所か、あるような気がする。
(引用ここまで)
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