のだめカンタービレ #23 (講談社コミックスキス) 価格:¥ 440(税込) 発売日:2009-11-27 |
完結。12月からは「Kiss」誌上で「のだめカンタービレ」オペラ編がスタートするようだが、本編はこれで終わり。
コミックからほぼ手を引いていた中で唯一新刊が発売されるとすぐに購入していたシリーズだった。読み始めたのは10巻を越えた頃からだったろうか。ヘンテコな、でも、ヘンテコだからこそ熱いキャンパスライフの楽しさ。「のだめ」というキャラクターのパワーが作品全体をかき乱し、読者の心までかき乱した。クラシック音楽やギャグに彩られてはいるが、まさに青春マンガだった。
Sオケでのベートーベン交響曲第3番<英雄>、のだめと千秋二人でのラフマニノフピアノ協奏曲第2番、R☆Sオケでのブラームス交響曲第1番。著者の音楽の描き方もぐんぐんと洗練され、オーケストラの演奏風景は凄まじい迫力を伴った。そして、のだめのコンクール挑戦と挫折。
物語はキャンパスライフから飛び出し、新たな境地へとたどり着く。才能の世界を舞台とした喜びと苦悩。日本での脳天気な雰囲気から一変し、暗いばかりではないが研ぎ澄まされた空気が漂うパリ編がスタートした。
二人の関係も変化する。
二人とも大人と呼び切れない未熟さを併せ持つ。才能の世界とは、努力が評価の対象とならず、それでも常に評価が付き纏う世界だ。青春群像劇のような展開は、それまでの『のだめカンタービレ』の作風とは異なるが、より音楽を正面から描き、登場人物たちの想いを丁寧に描写した。日本の時のような爽快感はないが、それに代わるものがあった。
そうした群像劇の後の二人の変化は、ついにこの23巻で終結する。たとえすれ違う時があっても、音楽という共通語で分かり合える。もちろん、それは音楽というものの素晴らしさでもあるが、一方で、ひとつのことに真剣に向き合った果てに得られたものでもある。
これまでほとんど登場しなかったヤドヴィが活躍したり、ラストに大きな盛り上がりがなかったりと、予想外の本編最終巻でもあった。特に、のだめと千秋がピアノ協奏曲での共演が描かれなかったことは意外にも感じた。その意味で、物足りなさが残った感はある。それでも、この物語が一応の終幕にたどり着いたことに、そして、何よりそれぞれのキャラクターにとって何かの終わりではなく続きのある物語であるというフィナーレに素直に納得した。
完結を迎えて著者に感謝の意を伝えたいと思える作品だった。読書メーターのコメントに書いた言葉をもう一度記す。音楽の素晴らしさと、愛と笑いに満ち溢れたハッピーな物語をありがとう!