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感想:『のだめカンタービレ #23』

2009年11月28日 20時10分37秒 | のだめカンタービレ
のだめカンタービレ #23 (講談社コミックスキス)のだめカンタービレ #23 (講談社コミックスキス)
価格:¥ 440(税込)
発売日:2009-11-27


完結。12月からは「Kiss」誌上で「のだめカンタービレ」オペラ編がスタートするようだが、本編はこれで終わり。

コミックからほぼ手を引いていた中で唯一新刊が発売されるとすぐに購入していたシリーズだった。読み始めたのは10巻を越えた頃からだったろうか。ヘンテコな、でも、ヘンテコだからこそ熱いキャンパスライフの楽しさ。「のだめ」というキャラクターのパワーが作品全体をかき乱し、読者の心までかき乱した。クラシック音楽やギャグに彩られてはいるが、まさに青春マンガだった。

Sオケでのベートーベン交響曲第3番<英雄>、のだめと千秋二人でのラフマニノフピアノ協奏曲第2番、R☆Sオケでのブラームス交響曲第1番。著者の音楽の描き方もぐんぐんと洗練され、オーケストラの演奏風景は凄まじい迫力を伴った。そして、のだめのコンクール挑戦と挫折。
物語はキャンパスライフから飛び出し、新たな境地へとたどり着く。才能の世界を舞台とした喜びと苦悩。日本での脳天気な雰囲気から一変し、暗いばかりではないが研ぎ澄まされた空気が漂うパリ編がスタートした。

二人の関係も変化する。
二人とも大人と呼び切れない未熟さを併せ持つ。才能の世界とは、努力が評価の対象とならず、それでも常に評価が付き纏う世界だ。青春群像劇のような展開は、それまでの『のだめカンタービレ』の作風とは異なるが、より音楽を正面から描き、登場人物たちの想いを丁寧に描写した。日本の時のような爽快感はないが、それに代わるものがあった。
そうした群像劇の後の二人の変化は、ついにこの23巻で終結する。たとえすれ違う時があっても、音楽という共通語で分かり合える。もちろん、それは音楽というものの素晴らしさでもあるが、一方で、ひとつのことに真剣に向き合った果てに得られたものでもある。

これまでほとんど登場しなかったヤドヴィが活躍したり、ラストに大きな盛り上がりがなかったりと、予想外の本編最終巻でもあった。特に、のだめと千秋がピアノ協奏曲での共演が描かれなかったことは意外にも感じた。その意味で、物足りなさが残った感はある。それでも、この物語が一応の終幕にたどり着いたことに、そして、何よりそれぞれのキャラクターにとって何かの終わりではなく続きのある物語であるというフィナーレに素直に納得した。

完結を迎えて著者に感謝の意を伝えたいと思える作品だった。読書メーターのコメントに書いた言葉をもう一度記す。音楽の素晴らしさと、愛と笑いに満ち溢れたハッピーな物語をありがとう!


感想:『のだめカンタービレ 22巻』

2009年08月16日 19時11分58秒 | のだめカンタービレ
のだめカンタービレ #22 (講談社コミックスキス)のだめカンタービレ #22 (講談社コミックスキス)
価格:¥ 440(税込)
発売日:2009-08-10


著者の出産もあって約1年ぶりの新刊。メインとなるのは、シュトレーゼマン指揮によるのだめのコンサートデビュー。
改めて、コミックによる音楽を描く強みを見せ付けられた。
のだめは一躍世界的有名人となり、一気に千秋との立場が逆転したような状況に。しかし、同時にのだめは目標を失い、これから進む道を決めかねてエジプトをうろつく。

巻末には「クライマックス」の次巻23巻が11月発売予定と記載されている。ノイタミナ枠で来年1月より『のだめカンタービレ フィナーレ』の放送が決まり、映画も「最終楽章」と銘打ち12月に前編、来春に後編が公開される予定。エンディングは目の前。
掲載誌「Kiss」は最新号がNo.16。コミックス1巻あたり6話が基本。22巻後の分は3話がNo.12、15、16に掲載された。「Kiss」は月2回刊行。休載も多いので計算はできないが、秋か冬にはエンディングを迎えそうだ。コミックスでは23巻で終わるか24巻で終わるか微妙なところ。終わって欲しくない思いもあるが、それ以上にしっかりした大団円を読んでみたいという気持ちが強い。

22巻では一度ものだめと千秋が会わず、それどころか会話さえ交わさなかった。二人の再会がどのように描かれるか期待しつつ次巻を待とう。

追記:「Yahoo!ニュース」によると、10月10日発売の「Kiss」20号で完結するという。本文で触れたように、No.12、15、16に続いて17、19、20で最終回となる。1巻6話が基本なので23巻が最終巻となる見込みだ。11月10日前後の発売と予想される。


『のだめカンタービレ』21巻

2008年08月20日 02時40分43秒 | のだめカンタービレ
のだめカンタービレ #21 (21) (講談社コミックスキス)のだめカンタービレ #21 (21) (講談社コミックスキス)
価格:¥ 420(税込)
発売日:2008-08-11


青春ものとしての『のだめカンタービレ』の強みは、シュトレーゼマンという大人の存在がいることだろう。年齢的なものではなく、精神的な意味での「大人」。若者を導く存在としての「大人」だ。
千秋ものだめもシュトレーゼマンがいたから今の姿があるわけだし、そしてまた再び彼の存在が大きな展開を生みつつある。しかし、彼のような存在が強く作品全体に影響しすぎると若者たちの悩みや葛藤が軽くなってしまう。その距離感が見事だ。

距離感というと、千秋とのだめの距離感も常に揺れ動いている。『のだめカンタービレ』は日本編はギャグの要素が強く、笑いがメインだった。パリ編に入り、青春マンガ的な要素が濃くなり、その分笑いの要素は減ってしまった。それをパワーダウンと言うのはここまで来ると明らかに間違っていたと分かる。
作者もスタート時は予想していなかったであろうほどに、のだめというキャラクターは成長し、それを描くことが作品の目的へと変わっていったのだ。のだめは天才だ。しかし、音楽の世界は天才の巣窟のようなものであり、才能だけで簡単に成功できる場ではない。

才能の煌きから読者にもその開花を期待させ、それを阻むリアルな現実を描く。ターニャやユンロンを執拗に描いたことは、作品の勢いを減じることになったが、それでもあえて描いたことで今ののだめをリアルな位置に留まらせている。才能は磨き続けなければチャンスをつかめない。だが、チャンスをつかめないと才能を磨き続けることは難しい。

のだめとシュトレーゼマンの共演が、のだめと千秋に何をもたらすのか。ここまでの緊張感を大団円に落とし込むには相当な力がいるだけに、今後の展開に大いに興味がそそられる巻となった。


『のだめカンタービレ』19巻

2007年11月21日 19時13分53秒 | のだめカンタービレ
のだめカンタービレ #19 (19) (講談社コミックスキス)のだめカンタービレ #19 (19) (講談社コミックスキス)
価格:¥ 410(税込)
発売日:2007-11-13


このところ青春群像劇っぽくなっている『のだめカンタービレ』。特にこの19巻はのだめ&千秋に大きな変化が見られず、描かれているのは、ターニャ、ユンロン、清良らの面々。現実の厳しさや挫折といった側面がクローズアップされた巻とも言えよう。全体のバランスとして押さえておきたい部分であり、読み応えはあったが、物足りなさも残ってしまうのは致し方ないところだろう。前巻もルイやフランクが描かれたが、一方で主役二人にも大きなイベントがあった。二人の今後やのだめのピアニストとしての将来がどうなるか興味が引かれるだけに、そちらの動きがどうしても気になるだけに、もう少し進展して欲しかったのが惜しまれる。