161102 シャープ黒字転換を考える
SankeiBiz(サンケイビズ)は11月1日付で、「シャープ、リストラ効果で中間、通期とも営業黒字に転換へ」としつつ、「最終損益は大赤字が続く」と、微妙な表現となっています。
企業の生死も資本主義の世界では日常的なことです。江戸時代では武士は身分制のトップでしたが、武士という身分を支える藩という組織もその盛衰・消滅は何度も繰り返され、廃藩置県に至っています。そうなれば武士も永遠ではないわけですね。同様に、親方日本丸で、終身雇用、その後は年金生活といった80年代ころまでは誰もが信じていたわが国の企業(大企業でしょうか)とその社員は、どのような著名大企業であっても、いまでは危うい状況といってよいのではないかと思います。
シャープを取り上げたのは、割合利用してきた商品が多く、その技術力というか先進性というか、イノベーション旺盛な企業として90年代、2000年代ずっと期待?していた企業の一つでしたが、あっという間に沈没寸前までになったことを少し考えてみたいと思ったからです。
SankeiBizでは、「9月中間連結決算は、最終損益が454億円の赤字となった。」「営業利益は前年の赤字から7900万円とわずかながら黒字転換した。」とし、「通期(2017年3月期)予想」を「営業利益は前期の赤字1619億円から、257億円の黒字転換を見込む。実現すれば3年ぶりの通期営業黒字となる。」と少なくとも営業損益の大幅改善をシャープが発表しています。その理由として、「北米でのテレビ事業など不採算事業からの撤退に加えて、昨年の3千人規模のリストラなどが寄与した。」と鴻海(ホンハイ)精密工業との合併、統合効果を、自画自賛的に取り上げています。
まだまだ先行きが見通せませんが、少なくともシャープの従来の経営組織が、グローバルな経営環境の変化に対応できないまま、企業組織の改革を抜本的にできないでいたために、タイタニック状態になったことからわずかな脱出への光明が見いだせたかもしれません。
企業というものは鮮やかに驚くほどの急成長をすると同時に、事業分野をいたずらに拡大すると、不採算部門を肥大化させ、その実体を見逃すことも少なくないこと、それを隠蔽することでますます泥沼にはいりこんでしまうことも過去いくつもの企業でみてきました。あの優良企業といわれた東芝の大胆な粉飾決算、原発の危険性に真摯に対応しなかった東京電力、巨大損失を不正な財テクで先送りする粉飾決算を続けたオリンパスなど、枚挙に暇がないですね。
企業が生き残るためには、その清浄化を心がける必要があるというのは、あまりに精神論にすぎないかもしれません。でも基本だと思っています。
ちょっと異なりますが、昨夜のBSニュース 日経プラス10で、これまたちらっと見ただけで、正確ではないのですが、三菱電機が電機業界で業績が一番いいとのことで、その原因として経営環境の変化に応じて多くの事業分野から撤退し、競争に勝ちうる事業分野に特化したことで、他の有力電気総合メーカーを押しのけてトップに立ったといった解説であったように思います。清浄化という意味は、企業においては、まず各事業の会計処理を的確に把握し、適正に処理されているかを確認することが肝要ではないかとおもうのです。その上で、将来に向けて投資効果が確保できるかを各事業それぞれ判断し、削減・撤退・強化など選択と集中を進めることが経営者に求められるのではないかと、当たり前のような結論を考えています(なにか安倍首相の発言と似通ったりして・・・内容のない話し)。
ただ、人というものが検査結果の数値だけではその健康状態も適確に把握できるわけではないのと同じように、企業というものも、会計資料のデータがいかに正確であっても(これが最低限確保される必要はありますが)、その実体を把握することは、大きくなればなるほど、その市場が見えないグローバルな社会になるほど、ほんとはカオスのような状態かもしれないと思ったりもします。色即是空 空即是色