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環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

世界のGDP、日本のGDP

2007-02-18 18:59:27 | 経済


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★GDPとは

GDP(Gross Domestic Product、国内総生産)とは、ある国で、一定期間(通常は3ヶ月ごと)に新たに生み出されたモノやサービスの付加価値の総額(金額で表示)と定義され、「国の経済規模」を示す重要な統計です。1993年からGNP(Gross National Product、国民総生産)に代わって、GDPがもちいられるようになりました。GDPの年間の伸び率を「経済成長率(%)」いいます。

日本のGDPには外国の企業が日本でつくりだしたモノやサービスは含まれますが、たとえば、日本の家電メーカーや自動車メーカーが外国の工場でつくった電気製品や自動車は含まれません。

「名目GDP」とは、付加価値の金額を単純に合計したもので、名目GDPから物価変動の影響を除いたものを「実質GDP」と呼びます。

★「05年のGDP」の国際比較

2007年1月13日の毎日新聞は12日に、内閣府が公表した「05年のGDP」の国際比較をつぎのように伝えています。



1人当たりの名目GDPのトップは96年以来1位を維持しているルクセンブルグで、EUの大国ドイツ、フランスの名前はありません。

ルクセンブルグは、2001年の国際自然保護連合(IUCN)の「国家の持続可能性ランキング」では、37位となっていました。このランキングの1位はスウェーデンです。国際自然保護連合の調査結果は大変厳しいものです。調査した180カ国中、37カ国(ルクセンブルグ)までが「人間社会の健全性(HWI)」(Human Wellbeing Index)と「エコシステムの健全性(EWI)」(Ecosystem Wellbeing Index)のバランスを辛うじて保っている状態にあるというものです。

★日本の「06年のGDP」

2007年2月16日の朝日新聞は「内閣府が15日発表した国内総生産(GDP)は、年率換算4.8%増と高い伸びを示し、市場も株高、円高に動いた。ただ、エコノミストの間では、急回復を支えた個人消費の伸びを一時的とする見方が強い。高成長は景気の本格回復を反映したモノなのか、単なる週間風速なのか」と報じ、つぎの表を掲げています。

この記事には、秋草直之(富士通会長)、新浪剛史(ローソン社長)、石塚邦雄(三越社長)、木内登英(野村證券シニアエコノミスト)、前川明(UBS証券)、山本康雄(みずほ総合研究所シニアエコノミスト)、山口信夫(日本商工会議所会頭)、上田準二(ファミリーマート社長)および牧野準一(大和総研シニアエコノミスト)の諸氏が、企業人あるいはエコノミストとしてそれぞれの立場でコメントを述べています。

これらの方々が「資源・エネルギー・環境問題」にまったく触れていないのは、これまでのいきさつから考えて当然と言えば当然ですが、この考え方は20世紀の発想の域を出ない考え方で、21世紀前半社会を展望するには不適切ではないでしょうか。21世紀社会の方向性を誤るのではないかと懸念されます。

GDPという指標が高いことが本当にその国の国民の豊かさを反映しているかどうかははなはだ疑問です。たとえば、日本の沿岸で世界最大級の石油タンカーが事故を起こし、沿岸に人類史上最大の海難被害を出したとします。この事故のクリーンアップ作戦で大量の作業員と大量の資材が投入されますが、このような事故とその対策に要した莫大な費用はGDPの増大に寄与すると言われています。

ここに「グリーンGDPあるいは環境GDP」という考えが出てくるのです。昨今、日本では、過労死をはじめいろいろな社会が次々と発生しています。このような現象が現実の問題となってきますと、少しぐらいGDPが下がっても「過労死がない社会」、「安心と安全な社会」、「持続可能な社会」のほうがよいという価値観が生まれてくるのは当然だと思います。
 

 経済、エネルギー、環境の関係

2007-02-17 07:45:21 | 経済


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同時進行しているブログ「市民連続講座:環境問題」で、昨日、「経済成長(GDP)と一次エネルギーの供給(消費も同様)の間には70年代のオイル・ショックの時期を除き、強い相関関係がある」という話をしました。

ここで、経済、エネルギー、環境の関係を理解するために、基礎データの最新状況を掲載しておきましょう。


(1)一次エネルギー供給の推移

資源エネルギー庁 2006年10月17日



(2)最終エネルギー消費の推移

資源エネルギー庁 2006年10月17日



(3)発電電力量の推移




(4)CO2排出量の推移






(5)産業廃棄物排出量の推移





(6)一般廃棄物排出量の推移


日本の経済論・技術論の最大の欠陥 

2007-01-30 21:52:50 | 経済


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書店には21世紀の日本経済や科学技術を論ずる雑誌や書物が溢れています。これらの著者の多くは評論家あり、自然科学系あるいは社会科学系の大学教授あり、エコノミストあり、ジャーナリストありと多彩ではありますが、これらの著者に共通していることは21世紀の経済や科学技術の行く末を論ずる際に、工業化社会の経済の将来を左右する最も重要な要因である「資源・エネルギー問題」や「環境問題」の視点がまったくといってよいほど、欠落していることです。
このことは、今なお経済学の基本的な枠組みが、生産の基本的要素として「資本」、「労働」および「土地」、あるいは「技術」を掲げていることからも明らかです。

21世紀の経済や技術を論ずる経済学者やエコノミストの議論もこの枠組みを超えるモノではありません。大学で講じられている経営学は企業や組織を学問の対象とし、「戦略論」「組織風土論」、「知識創造論」、「リーダーシップ論」、「ゲーム論」などを展開してきましたが、いまなお、企業活動に必然的に伴う「資源・エネルギー・環境問題」に踏み込んでいません。

試しに、近くの書店に立ち寄って平積みになっている新刊書の目次を眺めてみたらよいでしょう。経済、ビジネス関係の書物や科学技術の書物で、ここで指摘したような視点を持った書物を容易に捜し出すことができるでしょうか。ぜひ、お試しになって下さい。
   
経済関係の書物でも、特に、将来の経済の方向性を議論しているもの、具体的には「21世紀」を冠した書物で、「資源・エネルギー問題や環境問題」に基礎を置いてない経済議論は絵に書いた餅のようなもので、バーチャル・リアリティ(仮想現実)の世界です。

書物だけではありません。テレビの討論番組も、著名なエコノミストや一流コンサルタントによる経済に関する高価な有料セミナーも・・・・・・

異業種交流:あの鮮烈な映像は忘れられない!

2007-01-06 13:43:14 | 経済
これまでの古い話からも容易に想像できますように、スウェーデンの考え方の中にはものごとを総合的に関連づけて考える、言い換えれば「エコロジー的な(生態学的な)考え」があります。エコロジー的な考え方に基づく問題の解決方法は好むと好まざるとにかかわらず、解決すべき問題のプロジェクトに分野の異なる有識者や研究者の参加を要求し、彼等の協力を生みます。

これに対して、日本では環境問題を考える際にエコロジー的な考えはほとんどなく、いまなお、技術を非常に重要視する考え方、つまり「工学的あるいは技術的対応」が優先しているように思います。もう少し正確に言えば、エコロジー的な考え方は単に「教科書的な知識」としては日本にも存在するが、問題解決のための手段や行動のための原理として環境関連の法体系の中に組み込まれていないので、その知識が全く機能していないといった方がよいでしょう。

このあたりが地球環境問題を含めた環境問題に対するスウェーデンと日本の大きな考え方の相違だと思いますし、特に、「環境問題」とか私たちの「健康」という問題になりますと、この考え方の相違は大いに問題とすべき点であろうと思います。 

日本の産業界では、この20数年間に「異業種交流」と称して、新製品を開発するために全く異なる業種の企業が協力するという試みが活発になってきました。今なお、私の記憶に鮮明に残っている映像があります。80年代後半に栃木県のある食品会社(?)と化学会社が共同で新製品「七色の醤油」を開発したというTVニュースがありました。

食品会社が通常の醤油を作り、化学会社が醤油をわざわざ化学的に脱色して“透明な醤油液”を作り、それに今度は七種の食用色素で着色して「七色の醤油」とするのだそうです。この開発に携わった会社の担当者は開発したばかりの新製品「七色の醤油」の市場性を、「その日の気分で、醤油を使い分ける」などと真面目に説明している映像を目にした時、私は複雑な思いに駆られました。

日本では、「新製品の開発」には異業種交流が進み、目新しい商品が次々と市場に投入され、その結果として製品の製造工程やその製品が廃棄物となった時点で「環境への負荷」を増大させているのとは対称的に、「環境問題」やその他の国民に共通の様々な重要な社会問題の解決に“もう一つの異業種交流”、すなわち、「社会の構成員である政治家、行政、学者、企業、一般国民などの交流」による合意の形成とその合意に基づく協力が進まないこと、あるいは「省庁間」、「省庁内部」の合意と協力さえ進まないところにわが国の問題があるのです。