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べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

薄化粧

2016年05月04日 09時38分59秒 | 哀愁

もう少し待っていてください
さようならを口にするのは
うすく化粧をする
ほんのわずかな間だけ

なにかの拍子にいつかまた
ふと思い出してくれたとき
眉目好(みめよ)いわたしでいたいから

もう少し待っていてください
別れの言葉を口にするのは
ふるえる指で紅をひく
ほんのわずかな間だけ

あなたの中でわたしの影が
いつもおだやかな微笑みを
浮かべていられるように

鏡に映った景色は
いつにもまして静かです
だからもう少しの間だけ
なにも云わないでいてください



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べそかきアルルカンの“徒然読書日記”
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École de Paris ~巴里の異邦人~

2016年02月21日 11時43分23秒 | 哀愁

人生は
描いて飲んで騒いで語る
ただそれだけで充分さ
寒い夜に肌寄せあえる
相手などいればなおのこと

人生はつかの間の夢
巴里の灯もまた夢まぼろし
描いて飲んで流されて
あとはほろ酔い気分で土の下
冷たくなって眠るだけ
そこに戯れの
詩のひとつでも献じてもらえれば
もうなにもいうことはない

人生はつかの間の夢
巴里の灯もまた夢まぼろし
描いて飲んで騒いで語り
心すべきは
余すことなく演じきること





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とまどい

2015年07月19日 13時15分52秒 | 哀愁

わたしの心を傷つけるのは
冷ややかなまなざしよりも優しさです

わたしの気持ちを迷わせるのは
じょうずな嘘より誠実さです

わたしを悲しくさせるのは
あなたがいなくなってしまうことより
あなたの存在を知ってしまったことです

わたしを苦しめ打ちのめすのは
なによりあなたの微笑みなのです




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おだやかな情景

2015年05月31日 15時15分40秒 | 哀愁

庭先の木洩れ陽の中で
読みかけの本のページがひとりでにめくれ
ふと居眠りからさめたあなたは
そこに風があったことを知るでしょう

まだ夢からさめきらないような心持ちで
丘の頂につづく坂道にそって
たよりなげな視線をさまよわせるあなたは
うたた寝の間にすっかり冷めてしまった紅茶を
きっとひと息に飲み干すのです

すると
あなたの足もとに寝そべっていた老犬が
いかにも大儀そうに起きあがり
大きな伸びをひとつするでしょう

朝露に濡れた葡萄の粒のような瞳で
じっとあなたを見あげる愛犬の頭に
あなたは優しく手をさしのべ
まるで恋人にでも語りかけるように
その名を口にするのです

そして
窓辺にたたずんでふと
そんなごくありふれた日常のひとこまを
ゆくりなくも目にとめてしまったならば
わたしは
まぶたがひとりでに熱くなっていくのを
感じないではいられなくなってしまうでしょう

やすらぎは
悲しみをともなうものだと
知っているから

やさしさは
いつか痛みにかわると
わかっているから






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かごの中の小鳥は

2015年05月03日 11時37分03秒 | 哀愁

鳥かごの中の空は
色のない空

鳥かごの中のとまり木は
いつわりの梢

鳥かごの中を吹き抜ける風は
香りのない風

だれもが
死から逃れることができないように
かごの中の小鳥は
生きることからも
逃れられないでいるのです

鳥かごの中の歌は
哀しみの音色




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美しい余白

2014年10月19日 18時50分25秒 | 哀愁

冷たい霧雨が
木の葉を秋色に染めていたあの日

深い静寂の中で分かち合った
やすらかな沈黙

永遠とも思えた
つかの間のとき

忘れたはずの
美しい余白




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やるせな坂

2014年06月30日 20時22分15秒 | 哀愁

ゆかしく
肩をならべて歩いた小路
ふたりの間を隔てていたのは
指さきがふれるかふれないくらいの
ほどよい距離
あるやなしやのやさしい隔たり
永遠に縮まらないうるわしい透き間

そのくらいがちょうどよかった
それくらいでちょうどよかった

なのに
あいまいに移りゆく季節に戸惑うように
少しずつ離れていった指さきの距離
言葉少なに歩いた
あのつづら折りのなだらかな坂は
いつまでもずっと
続くものだと思っていたのに



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かけ算

2014年02月11日 12時35分24秒 | 哀愁
マイナスとマイナスをかけ算すると
プラスになるってほんとうでしょうか
ぼくにはその理屈がわからない
かつて
きちんと教わったことがあるような気もするのですが
とてもほんとうのこととは思えないまま
いまもここにこうしているのです
マイナスとマイナスをかけ算すると
ほんとうにプラスになるのでしょうか
辛いことと苦しいことを掛け合わせると
はたして楽しくなれるのでしょうか
悲しみと痛みを掛け合わせると
それは喜びに変わるのでしょうか
どこかのうちひしがれた幸薄い女と
運に見放されてすっかりしょぼくれてしまった男が
ある日偶然出逢って結ばれたなら
ふたりは幸せになれるのでしょうか
もちろん
そうなる可能性はなきにしもあらずです
恵まれた男女がいっしょになっても
必ずしもうまくいくとは限らないのと同じように
だから人生はおもしろい
先のことがわからないから生きていけるんだ
なんてことをいう人もいるけれど
でもいまは
そういうお話ではないのです
ましてや可能性のことを
云々しているわけではありません
マイナスとマイナスをかけ算すると
プラスになるって理屈が
ぼくには理解できないってことなのです
寂しさにたえかねて涙ぐんでいるあなたと
孤独であることになれてしまったぼくが
乾いた心で冷えた躰をかさねあわせたとしても
そこに温もりが生まれるとは思えないのです
プラスでもマイナスでもなく
ゼロではだめなのですか
ゼロではいけないのでしょうか
ぼくにはかけ算のことがわからないから
どうにも考えが及ばないのです


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記憶の澱

2013年07月06日 20時29分57秒 | 哀愁

とおい遠い遥かむかし 
世界がまだ曖昧模糊としていたころ
小さな小さな
ほんの小さな命がひとつ
海の片隅の暗がりで
ふいにぽつんと生まれました

それはたぶん
確かなことに違いありません
そうです
命は海で生まれ
海からやってきたのです

潮騒を耳にするとなぜかしら
懐かしさがこみあげてくるのは
そのあかしです

心の在りようによっては
目から小さな海が溢れだすのは
そのせいなのです

けれど
海の底知れなさと果てしなさを想うとき
いま在ることの心もとなさに
わたしはただただ
途方に暮れてしまうのです

はるか遥か遠いむかし
世界がまだ有耶無耶だったころ
海の底のうす暗がりで
わたしはぽつねんとしておりました
ふと気づいたときにはすでに
わたしはそこにいたのです

ひろい広い
ただただ広い
海の片隅で生まれたわたしは
はじめて孤独を知りました

そのあまりの心細さとなすすべのなさが
ながい年月の間に胸のどこかしらで
いつのまにやら澱となってしまったのでしょう
だからわたしはいまもこうして
ゆらりゆうらり
あてなくたゆとうているのです



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哀悦

2013年06月07日 17時27分22秒 | 哀愁

やわらかな蕾がほころび蜜が香る
儚げな吐息が甘やかに波うち
もつれあうふたつの影が沈んでゆく
揺らめく夜の底へと
ゆるやかに ときに激しく
きわどい螺旋を描きながら

たしかなものなど何もないと気づいていた
失うものなど何もなかった
やがてふたたび訪れたもの憂い静寂の中で
あなたの額にはりついた濡れ髪をかきわけ
薄くとじたまぶたに唇づけてみたら
哀しい海の味がした




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どうかぼくに

2013年04月07日 13時43分14秒 | 哀愁

どうかぼくに語りかけないでください
どうかぼくに触れないでください
どうかぼくにかまわないでください
ぼくはなにも知りたくないのです
ぼくはなにもわかりたくないのです
ぼくはもう
思いわずらうことすら
億劫なのですから


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とくにさしたるわけもなく

2012年08月26日 13時19分27秒 | 哀愁

海が
なぜかしらそ知らぬふりをして
悲しいほどに凪いでいるから
こんな日は
いまは遠く過ぎ去った日々を
つい想いだしてしまうのです

風が
なんとなく秘めごとでもあるかのように
密やかにそっと語りかけてくるから
こんな日は
ほんのささやかな安らぎを
つい求めてしまいそうになるのです

空が
なにかしら訳でもありそうに
ひっそり深く澄んでいるから
こんな日は
心もとなく気まぐれに
つい涙など零してみたくなるのです

少しばかり
陽ざしがやわらいだような気がします
季節が移り変わろうとしているのでしょうか
久しく口にしなかった優しい名を
ため息まじりにつぶやいてみました



★photo:Gosia Janik★ ↓↓↓ ポチッっとね
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