goo blog サービス終了のお知らせ 

べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

ふと気まぐれに降り立った場所で

2020年08月01日 20時58分10秒 | 哀愁


ふと気まぐれに降り立ったそこは
ぽつんとプラットホームがあるだけの
なにもない場所

草木が生い繁る深い緑のなかで
それはさながら
忘れ去られた遺跡のようです

匂いたつ草いきれ
どこまでも平行線を描いて続くふた筋の軌跡
ときおりやさしい風が通り過ぎていくばかり

次の列車がいつ来るとも知れず
けれど途方に暮れることもなく
ただぼんやりと
ひとり時の流れに身をまかせておりました

ゆくりなく見あげれば
そこに空がありました
それはまるで
遠い夏休みのような空でした




★photo:★David Hamilton ↓↓↓ ポチッっとね
にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ

べそかきアルルカンの“徒然読書日記” 
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin

べそかきアルルカンの〝スケッチブックを小脇に抱え〟
http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a

べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ” 
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

雨つぶ

2020年06月27日 18時36分00秒 | 哀愁


雨つぶがはねる
できたばかりの水たまりの上で

雨つぶがはねる
うす黄緑の葉っぱの上で

雨つぶがはねる
青く艶やかな瓦屋根の上で

雨つぶがはねる
うちすてられた自転車のサドルの上で

雨つぶがはねる
お気にいりの蝙蝠傘の上で

雨つぶがはねる
そっとさしだした手のひらの上で

雨つぶはうれしそうに跳びはねて
ほんのつかの間
ささやかな命を生きている



★picture:Barbara Olsen★ ↓↓↓ ポチッっとね
にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ


べそかきアルルカンの“徒然読書日記” 
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin

べそかきアルルカンの〝スケッチブックを小脇に抱え〟
http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a

べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
 http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2


だからわたしは鳥になれない

2019年12月08日 12時04分35秒 | 哀愁



この空は
わたしには広すぎる
降りそそぐ光は
わたしには眩しすぎる
そして流れる風は
わたしに優しすぎる
だから
わたしは鳥になれない

小鳥たちが
いともたやすくやりとげることを
わたしはなにひとつできやしない
この空は
わたしには広すぎて
降りそそぐ光は眩しすぎて
風はわたしに優しすぎる
だからわたしは
愛をうまく歌えない




★photo:David Hamilton★ ↓↓↓ ポチッっとね
にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ


べそかきアルルカンの“徒然読書日記” 
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin

べそかきアルルカンの〝スケッチブックを小脇に抱え〟
http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a

べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
 http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2




あめ色のとき

2019年10月14日 14時01分25秒 | 哀愁



夕暮れと呼ぶには
まだはやすぎる時刻
ふと迷い込んだ路地には
ほんのりとおしろい花が香り
あたりの空気があめ色に染まる
はじめてなのになんとなく
懐かしさをおぼえる裏通り
過ぎ来し方が
曖昧にとけだしてゆく
陽が沈むまでまだ少し
時は残されているというのに





★picture:Jules Pascin★ ↓↓↓ ポチッっとね
にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ


べそかきアルルカンの“徒然読書日記” 
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin

べそかきアルルカンの〝スケッチブックを小脇に抱え〟
http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a

べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
 http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2


海のかけらの見える場所

2019年09月01日 17時47分43秒 | 哀愁


ひとすじの
白く長い坂道をのぼって
たどり着いた峠の向こうを眺めると
先細りの
下り坂の行き着くところに
気だるく光る
海のかけらがありました

陽射しにはまだ
夏の名残が潜んでいて
けれど
あたりの静けさは
なんとも心もとなくて

この坂をおりてゆけば潮風に
涙の味が香るでしょうか




★photo:mandy-lynne ★ ↓↓↓ ポチッっとね
にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ

べそかきアルルカンの“徒然読書日記” 
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin

べそかきアルルカンの〝スケッチブックを小脇に抱え〟
http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a

べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ” 
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

やわらかなひととき

2019年03月17日 10時30分47秒 | 哀愁


幼い姉弟が絵を描いている
色とりどりのクレヨンを使って

幼いふたりはときおり
なにかを囁きあっては
ふわふわと笑いあっている

若い母親と若い父親が
その様子をながめている

若いふたりも
ときどきなにか囁きあっては
ふわりと笑みを浮かべている

世界はとても美しい
この優しいときが
いつまでも続きますようにと
だれもが願う

けれど望みはかなわない
世界は悲しみに満ちていて
残酷なところでもあるのですから




★photo:Florence Menu ★ ↓↓↓ ポチッっとね
にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ


べそかきアルルカンの“徒然読書日記” 
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin

べそかきアルルカンの〝スケッチブックを小脇に抱え〟
http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a

べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
 http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

傷み

2018年12月15日 14時09分15秒 | 哀愁



忘れてしまうだなんて
そんなことはできません

立ちどまってはいけないだなんて
それは無理なことです

ふり返ってはだめだなんて
わたしはそんなに強くはありません

明日を夢みて歩めだなんて
そんなふうにおっしゃらないで下さい

いまとなってはこの傷みが
少しは心地良くもあるのですから





★photo:Laura Makabresku★ ↓↓↓ ポチッっとね
にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ


べそかきアルルカンの“徒然読書日記” 
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin

べそかきアルルカンの〝スケッチブックを小脇に抱え〟
http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a

べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
 http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

夜更けにぼんやり想うこと

2018年04月15日 13時40分51秒 | 哀愁

眠れぬ夜に
欲しくなるもの

暗闇をやわらかく照らす
ランプの灯り

意味のない言葉を連ねた
静謐な詩集

飾り気のない
素朴な旋律

ちょうど良い具合に温めた
甘やかなミルク

うるわしい 想い出
偽りのない 嘘





★photo:Florence Menu★ ↓↓↓ ポチッっとね
にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ


べそかきアルルカンの“徒然読書日記” 
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin

べそかきアルルカンの〝スケッチブックを小脇に抱え〟
http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a

べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
 http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

見知らぬ町

2018年03月11日 09時41分47秒 | 哀愁


雨あがり
見知らぬ町を歩く

どこにでもありそうな
ごくありふれた町を
ゆくあてもなく
ただ歩きつづける

見知らぬ町で
見知らぬ人とすれ違う

足もとの
水たまりの中を
白い雲が流れてゆく
根なし草のように

見知らぬ町を歩く
帰る場所がない



★photo:Charles Marville★ ↓↓↓ ポチッっとね
にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ


べそかきアルルカンの“徒然読書日記” 
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin
べそかきアルルカンの〝スケッチブックを小脇に抱え〟
http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a

べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
 http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

冬の浜辺で

2018年01月03日 11時53分12秒 | 哀愁


きょうの海は静かです
人影はなく 
波もすこぶる穏やかです

なんとはなしに
水平線を眺めておりました
時のたつのも忘れて

と カモメが一羽
空がまぶし過ぎるとひと声鳴いて
高く飛び去ってゆきました

風向きが変わったのでしょうか
微かにどこか遠くから
ジェルソミーナの喇叭が聴こえてきました

目を閉じて耳を澄ましてみますが
けれど聴こえてくるのは
いまはもう波の音だけ





★photo:Eve Turek★ ↓↓↓ ポチッっとね
にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ


べそかきアルルカンの“徒然読書日記” 
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin
べそかきアルルカンの〝スケッチブックを小脇に抱え〟
http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a
べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
 http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

背中の景色がゆらゆら揺れて

2017年10月07日 15時07分45秒 | 哀愁

あゝ そうか なるほど
まったく 
こういうことだったのですね
胸にぽっかり穴があいたようなとは
ずいぶん使い古された言葉だけれど
これがそういうことなんだと
いまならわかるような気がします
胸の穴をのぞきこむと
背中の景色がゆらゆら揺れて
なんだかゆがんで見えるから




★photo:Tanneke Peetoom★ ↓↓↓ ポチッっとね
にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ

べそかきアルルカンの“徒然読書日記” 
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin

べそかきアルルカンの〝スケッチブックを小脇に抱え〟
http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a

べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ” 
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

夏の終わりの朝の始まり

2017年09月09日 16時13分19秒 | 哀愁

いつもより
ずいぶん早く目がさめたので
気まぐれに散歩に出てみました
まだ夢からさめきらない街の空気は
ひんやりとほの暗く透明で
まるで見知らぬ場所にいるみたいです
静かな裏通りをしばらくゆくと
どこからか
焼きたてのパンの香りが漂ってきました
やわらかな幸せの匂いだと
少しばかりもの憂い心持がしました
街灯の向こうの闇の中から
踏切の音が響いてきます
近くに踏み切りなんてあったでしょうか
家からさほど離れていないというのに
思いのほか
知らないこともあるものです
夜明け前の踏切の音色は
なんだか湿っぽく
うら悲しく耳の奥に染み込んできます
ふと視線を落とすと
足もとに蝉の亡骸がひとつ
夜が無慈悲に
明けてゆこうとしています



★photo:Alan Blaustein★ ↓↓↓ ポチッっとね
にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ

べそかきアルルカンの“徒然読書日記” 
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin

べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ” 
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

空の青さがなんだかとても

2017年03月04日 10時14分29秒 | 哀愁

草を枕に寝っ転がると
そこに空がありました

空を眺めるのは
ずいぶん久しぶりのことです

幼かった頃はもっと
空を見つめていたような気がします

けれどいまそこにあるのは
あの頃の空ではありません

空は空のまま
なにも変わらないはずなのに

まぶたを閉じると
草と陽ざしの匂いが微かにしました




★photo:Marce ITB★ ↓↓↓ ポチッっとね
にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ

べそかきアルルカンの“徒然読書日記” 
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin

べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ” 
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

海とオカリナ

2017年02月04日 22時26分01秒 | 哀愁

目をとじてひとり
たそがれの海の調べを
聴いていました

さようならの
ほんとうの意味さえ
知らなかったあのころ

たいせつにしていたオカリナは
いまはもう
どこかへいってしまいました



★photo:Marco Milillo★ ↓↓↓ ポチッっとね
にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ

べそかきアルルカンの“徒然読書日記” 
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin

べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ” 
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

夢の跡を風が吹き抜けてゆく

2016年12月31日 10時09分02秒 | 哀愁

なにかの拍子にこの世に生まれ
ふとしたことで出逢いがあって
少しずつ互いを知りあって
親しくなって同じ時を過ごし
やがてまたいつか
ふとこの世からいなくなる
それは悠久の時の流れの中で
瞬きをする間にも遠くおよばない
ほんの一瞬の出来事
そこに意味などありません
あるのは儚い想いだけ
やがて夢の跡を風が吹き抜け
それすら消し去ってしまいます
はじめまして さようなら
はじめまして さようなら




★photo:H.Armstrong★ ↓↓↓ ポチッっとね
にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・ポエムへ

べそかきアルルカンの“徒然読書日記” 
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin

べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2